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2011年1月29日 (土)

フード・インク

Photo 第82回アカデミー賞ドキュメンタリー長編賞にノミネートされた問題作。アメリカの食品が作り出される過程を映し出し、文字通りフード・インク=食料生産工場の実態を明らかにしていく。スーパーに並ぶ殆どすべての製品にコーンが使われているなど、極限まで効率化された結果が生み出すひずみには驚かざるを得ない。監督はロバート・ケナー。
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これは結構ショッキングな内容です。まったく『フード・インク』とは良くつけたもので、まさに食料工場。如何に安く、如何に効率的に、如何に大量にと突き詰めていった先にあったのは人がモノを食べるということの根源を見失わせるかのような光景でした。大規模農場に集められて飼育される牛・豚・鶏たち。動くこともママならないほどのギュウギュウづめのまま、単純に体だけ大きくされ、殺され、オートメーションで流れていく姿はもはや食料というより工業製品です。よくクジラを殺すなというけれど牛ならいいのか?なんて言葉を聞きますが、この光景を見れば牛を殺して何がおかしいのだという考え方が実に自然に思えてしまいました。

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人は他の生物の命を食しているのだという、命の継承なんて思想は、この工場の前では単なるセンチメンタリズムでしかありません。アメリカの多くの養鶏農家はカーギル社やタイソン社と言った大手メーカーと契約し、借金で高価な養鶏舎を建ててそれを返済するためにメーカーの言いなりになって働いています。消費者に人気のある胸肉を多く獲るために、半分の時間で2倍以上の大きさに育てることが出来るようになったせいで、鶏舎は筋肉の重さに骨が耐えられず2,3歩しか歩けない鶏で溢れるのでした。しかしそもそもすし詰め状態で歩く必要すらない。そして鶏に限らず密集していると病気が発生したら全てに感染してしまうため、餌に抗生物質を混ぜる。

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私たちが驚くまでもなく、「こんなのは養鶏じゃない」吐き捨てるようにいう女主人…。しかし借金でがんじがらめにされ、逆らって契約されなくなると廃業するしかない立場の農家は、ある意味養鶏をするためのマシーンでしかないのです。更に驚いたのは、アメリカの農地の30%がコーン畑だということ。即ち安価に大量に作れるコーンは私たちの身の回りにある様々なものに使われていて、それは必ずしも食品だけに限りません。当然ながらコーンはその安さ故に牛・豚・鶏の餌にも使用されているのです。本来は草を食べる牛が無理矢理コーンを食べさせられ、しかも糞尿垂れ流しのなかで立ち尽くしている姿は、命をモノ扱いしかしていないことの証左でもあります。

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日本でも以前流行った病原性大腸菌O-157は、こうした牛たちの胃の中の大腸菌が突然変異して出来てきました。本来なら命の糧とするために食べる肉、しかし汚染された肉で作られたハンバーガーを食べて命を奪われた少年の母親は、無くなって6年が経つ今でも議員にある法律の成立を働きかけます。汚染された食品を販売した会社に農務省が操業停止処分を課す事が出来る通称ケヴィン法。しかし、母親の想いとはうらはらに業界団体の抵抗で中々成立できません。結局個人は犠牲になるしかないのでしょうか…。それでなくても不衛生で不健康な牛から機械的に生産されていく肉片を更にアンモニアで殺菌消毒して出来上がったハンバーガーのパテ。

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この映像を見てしまったら、アメリカに行ってもちょっとハンバーガーは食べられないです。おまけにテレビ番組でそのひき肉を批判したレポーターがコロラド州の風評被害法違反で告訴される始末。いつからアメリカは言論の自由を、批判精神を失ってしまったのか…。もっともそんなアメリカだからこそBSEの時にも平然と日本の全頭検査の条件を蹴っ飛ばして輸入再開に圧力をかけてきた訳ですが。さあて、そんな中でも頑としてわが道を行く生産者もいて、自然な環境で育てた鶏や豚を販売する農家や、オーガニック食品を販売する農家も出てきます。世界最大の小売店メーカー・ウォルマートですら、そこに目をつけてくる…。

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もちろん彼らは健康に良いものを販売したいわけじゃありません。“それを売ると儲かる”から販売したいのです。つまり、結局は我々消費者一人一人が自分たちの食べるものに自分で目を光らせる、自分の健康を自分で守るように心がけることが、引いては大企業すら動かす結果になるということになるということ。本作で描かれていることを「だってそれはアメリカでのことだろ」と思うなかれ。先ほどのBSE問題の時もそうですが、日本は食品の多くを海外からの輸入に頼っている以上、対岸の火事ではありえないのですから。それどころか、日本向け輸出の際に日本国内で禁止されているけれど、輸出する側では禁止されていない薬物を使用していたなどと言う話はいまや日常茶飯事です。

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今、民主党政権が参加を推し進めようとしているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が決まれば、規制緩和によって今よりも一層輸入食品が増えて来るのは自明の理。例えば国内ですら遺伝子組み換え食品の表示義務を課していないものを、輸入用にするとは到底考えにくい訳です。是非この作品を観てください。もちろん本作は告発映画である以上、一面的な見方が強いことは否めません。しかし、まず知ること、知識がなければ戦えないのですから。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:ちょっと単調な部分もあるんだけどね
総合評価:78点

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