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2011年1月27日 (木)

ブローン・アパート/Incendiary

Photo ヨーロッパで人気となったクリス・クリーヴの小説「息子を奪ったあなたへ」を映画化。不倫相手との情事の最中にテロで夫と息子を失った母親が、自らを責めながらも再生しようともがく様を描く。主演は『脳内ニューヨーク』のミシェル・ウィリアムズ。共演に『天使と悪魔』のユアン・マクレガーが出演している。監督は『ブリジット・ジョーンズの日記』のシャロン・マグアイア。
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え?それで立ち直っちゃうの?

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『ブローン・アパート』は「BLOWN APART」と書いて“打ちのめされる”という意味。タイトル通りで登場する人物それぞれが皆“打ちのめされる”物語でした。主人公の母親(ミシェル・ウィリアムズ)は爆弾処理班の夫と愛する一人息子の3人家族。ある日、不倫相手との情事の最中に、夫と息子が観戦にいったサッカースタジアムで自爆テロが起こり一気に2人を失います。母親は、その喪失感と自責の念に苛まれながらも何とか立ち直っていくというのが本作の中心となる流れでした。物語冒頭、4歳の息子がいきなり「5,4,3,2,1」とカウントダウンする様子は、後から考えると爆弾テロのカウントカウントダウンを暗示していたかのようにも聞こえるのですが、このときは何のことは無い、母との睨めっこ対決開始の合図。

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どうやら寝る前の儀式らしく、劇中では2回ほどこんなシーンが登場しますが、一人息子を見つめる母親の目は限り無い慈愛に溢れ、いつだって彼女の方が負けて息子は安心して眠りに就くのでした。彼女が不倫をしたのは特に深い事情があった訳ではなく、爆弾処理班の夫が出動する度に、彼を失うのではないかという極度の緊張から来る気の迷いだったように思えます。不倫相手のジャスパー(ユアン・マクレガー)は新聞記者。母親は一夜限りの関係かと思いきや、事件の日にスタジアムに向かおうとする彼と再会し、またしても情事を楽しんでしまうのでした。話の本線ではないけれど、紛れもなく本作の見所の一つでもあるのが、ミシェルとユアンの激しいベッドシーン。自ら服を脱いでジャスパーを挑発したり、ソファの上で後ろから責められる彼女の姿は相当にエロティック。

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激しく抱き合いお互いに高まりあいながら正に絶頂を迎えんとしたその時、「ドドォーン!」と地鳴りのような音。もちろん爆弾が爆発した音です。これはわざとそういう演出をしたのでしょうがいささかブラック過ぎて思わず苦笑してしまいました。ついで、テレビのサッカー中継画面から流れてくるのは崩れる観客席、そして映像自体もブラックアウト…。もちろん情事どころではなく、現場へと駆けつけるジャスパーと彼女ですが、夫と息子を捜す彼女の頭上に瓦礫が落ちてきて、今度はスクリーンがブラックアウト…。気がつくと彼女は病院のベッドの上という…本当は笑うようなシチュエーションではないのだけれど、妙な所で映像的に韻を踏んでいるようで、ここでもちょっと苦笑い状態なのでした。いずれにしても、確かにこの状況では母親が打ちのめされるのも当然です。

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自爆テロ自体は犯人が死んでいる訳ですから、必然的に怒りのやり場が自分しかない訳で。ジャスパーは彼女を見舞いますが、彼女は目もあわせません。彼を観ると自動的に事件と結びついてしまうから…。ジャスパーはジャスパーで、本来ならスタジアムに行くはずが彼女との情事のおかげで命が助かった訳で、その状況を鑑みれば当然彼もショックに打ちのめされている訳です。彼は新聞記者の立場を利用して、事件に関して調べ始め、自爆テロ犯の家族の居場所を突き止め彼女に教えます。今更どうしようもなくても、家族を訪ねずには居られない彼女。しかし事実を伏せて近づいた自爆テロ犯の息子との交流の中で、少しずつ落ち着きを取り戻してゆくのでした。ところが!ここで衝撃の事実が発覚。何と夫の上司テレンス(マシュー・マクファディン)はテロが起こることを知っていたのです。

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実はこれより前、妻に追い出されたテレンスは彼女になにかれとなく親切にし、励ましていました。しかしこの事実の発覚で、その全てが下心だったのではないかと思えてしまいます。「せいぜい死傷者は50名を予想していた」だとか「レニーが巻き込まれる確率は…」だとか、人の命を何だと思っているのか。というか、人の命を確率論で図るなと。これには怒りというより人として嫌悪感を覚えます。そして例えどんな言い訳をされようとも、実際に夫と息子を失っている彼女にとっては、辛うじて保ってきた精神の均衡を崩壊させるのに十分な事実でした。日がな一日息子の幻想とともに家に閉じこもる彼女。そんな彼女が立ち直るきっかけになったのは、皮肉にも同じ母親の心。そう、自爆テロ犯の妻との再会が彼女を現実に引き戻します。

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実はここから先がどうも納得行かないというか、釈然としないというか。実はこの時ふと見ると彼女のお腹が大きくなっていることが解ります。つまり妊娠しているんです。父親は当然ジャスパーでしかありえません。2度目は事件の日ですから、最初の過ちで出来た子でしょう。「避妊しろよ…」ってのは置いておいて、不倫で出来た子供でも女性にとっては我が子は我が子ということなのでしょうか。彼女が部屋の壁を真っ白に塗りなおしているのは、白紙からのやり直しを意味しているのでしょうけども、ジャスパーを見ると事件を思い出してしまう彼女が、その彼との息子をきっかけに立ち直るというのがどうにも都合が良過ぎてスッキリと納まらないのでした。

個人的おススメ度3.0
今日の一言:アーセナル・スタジアムが崩壊とは…
総合評価:62点

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