グリーン・ホーネット／The Green Hornet

ブルース・リーが出演していた往年のＴＶドラマを劇場長編にリメイク。昼は新聞社の社長、夜はグリーン・ホーネットとして犯罪者と戦う正義の味方の活躍を描いたヒーローアクションだ。主演は『スーパーバッド 童貞ウォーズ』のセス・ローゲン。共演にジェイ・チョウ、キャメロン・ディアス、クリストフ・ヴァルツが出演。監督は『エターナル・サンシャイン』のミシェル・ゴンドリー。
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何て魅力の無いヒーローなんだろう…

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あのブルース・リーが出演していた６０年代のＴＶドラマのリメイクということで期待していたけれど、正直言って期待はずれでした。主人公のブリット・リード（セス・ローゲン）は鉢に刺されて死んでしまった父親の後を継いだ青年社長。ある日父のお抱え運転手だったカトー（ジェイ・チョウ）が父の指示で数々のハイテクマシンを製作していたことを知り、それを使って正義のヒーローとして街の犯罪者を一掃しようと決めるのでした。でまあ、ブリットがグリーン・ホーネットに、カトーが相棒で助手になる訳ですが、そこにたどり着くまでがとにかく長い。こう言ってはなんだけれど、大した知名度もない俳優が、うだうだしてないで、ちゃっちゃとグリーン・ホーネットを出してくれと。ヒーローモノはヒーローが登場してなんぼなわけで、前フリは極力少なくするべきだと思います。

それにしてもこのセス・ローゲンとジェイ・チョウという一番大事な２人の華の無さ加減は半端ではありません。例えその時点で知らなかったとしても、例えば『キック・アス』のクロエ・モリッツは一瞬にして観ている人を虜にする魅力がありましたが、この２人には決定的にそれがない。役の上でもブリットはギャーギャー喚く口調がやたらと耳障りでうんざりするわ、カトーもアクションシーン以外は全く観るべき所がないですし。というより、本作で唯一観るべきはカトーのアクションシーンしか無いといってもいいぐらいです。しかし別に彼のアクションが特筆するほど素晴らしかったという訳ではないのですが。要は元祖カトー役ブルース・リーのジークンドーが現代に甦り、久々に観た１インチパンチにノスタルジーを感じたとでも言うべきでしょうか。

アクションシーンは当然今風にワイヤーを使い、さらに編集でデジタルエフェクトを使いまくっているのに、そういったものが一切ないブルース・リーの生身のアクションの方がはるかに迫力があったのは何故でしょう。ちなみにデジタルエフェクトと言えば、本作は３Ｄも売りにしていますが、見事なほどに今世に多く観られるどうでもいい３Ｄでした。試しにしばらく３Ｄメガネを外して観ていたのですが、少なくともその２，３分のトークシーンではキャストは普通に２Ｄ。もっとも字幕だけはしっかり３Ｄでしたが。（苦笑）という訳で見事なほどに魅力の無い主人公を補っていたのが脇役の２人、ブリットの秘書レノア役のキャメロン・ディアスとグリーン・ホーネットの敵チュドノフスキー役のクリストフ・ヴァルツでした。特にヴァルツはいい！

気に入らなければ例えそれが身内でもすました顔で殺してしまう、しかもグリーン・ホーネットの向こうを張って、相手を殺す時の決め台詞まで用意してしまうというそのキャラクターは、メイクをしていないジョーカーのような感じでもあり、ランダ大佐のようでもあり。ところがこの魅力的なキャラクターをストーリー展開上いま一つ活かせていないのだからガッカリ。どうせアメリカンヒーロー物語なのだから、単純に彼をラスボスに据えてしまえば良いものを、実は黒幕がいたってな話にしてしまうじゃないですか。でまたこの黒幕がありきたり過ぎて全く魅力を感じないのです。原作がそうだと言うなら仕方が無いのかも知れないけれど実にもったいないとしか言いようがありません。そうそう、もったいないと言えばもう一人。キャメロン・ディアスももったいない使い方でした。

そもそもキャスティングの段階で、明らかにパワー不足の主人公２人を補うべくヒロインに彼女を据えたのは明白。ということは積極的に彼女をストーリーに絡んでくるのかと思いきや別にそうでもない。こんな扱いなら別に彼女じゃなくてもいいじゃないってな位の軽～い役です。もちろん彼女はそんな中ベストを尽くしていましたし、そもそもコメディタッチな女性役は彼女の得意とするところ。しかし彼女がベストを尽くすということは必然的に彼女の持っている存在感が否応なしに増してしまう訳で、３人でいるときはもはや場の中心は完全にキャメロンに持っていかれている感じです。やはり役者としての格が違いますね。物語のプロットがもう古過ぎるという部分も含めて、どうせリメイクするなら新たなグリーン・ホーネットを作り出したほうが良かったのではないでしょうか。

個人的おススメ度2.5
今日の一言：ヒーロー的にはザ・スピリットと並ぶな…
総合評価：57点

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『グリーン・ホーネット』予告編