わが心の歌舞伎座
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もっと歌舞伎座に観に行っとけばと後悔! |
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2010年4月30日で休館が決まった歌舞伎座。普段はめったに見ることが出来ないその裏側と、そこで育ってきた当代一流の歌舞伎俳優たちが歌舞伎座への想い出を語るドキュメンタリーです。167分というドキュメンタリーとしては珍しい長尺で途中にインターミッションが入るほどでしたが、めったに観られない映像や話の数々は時間を感じさせません。まあ、題材が題材だけに流石にご年配の方が殆どでしたが…。私はもう20年以上前に一度だけ歌舞伎座に言ったことがありますが、今となっては演目もさっぱり覚えておらず、良く解らなかったという記憶しか残っていません。大人になってからもせいぜい昨年観たシネマ歌舞伎『大江戸りびんぐでっど』が接点というところでしょうか。


しかし、本作で何より驚いたのは、そんな歌舞伎ど素人の私ですら顔と名前が結びつく錚々たる俳優が続々と登場してくることです。市川團十郎、尾上菊五郎、片岡仁左衛門、坂田藤十郎、中村勘三郎、中村吉右衛門、中村富十郎、坂東玉三郎、松本幸四郎、市川猿之助、中村梅玉……。申し訳ないのですが登場人物のうちで初めて知ったのが中村芝翫、中村雀右衛門だけ。ちなみに自慢じゃないですがそれぞれの得意演目なんてまるで知りません。歌舞伎俳優と聞くととかく閉鎖的な気もしますが(最近はそうじゃない若手も多いですけど。)、私たちが考えている以上に、私たちの目に触れるところで活躍しているのだなと痛感。知らず知らずのうちに日々の生活の中で普通に認知されているんですね。


役者さんたちは歌舞伎座の通用口から入る時は、竹釘を自分の名前の上に刺し、そこにある神棚に手を合わせ、そして自分の支度部屋に向かいます。彼ら歌舞伎俳優は生まれた時から歌舞伎のために全てを捧げている方々ですが、日常=歌舞伎だということは、つまり歌舞伎=日常だということ。 もはやそこは支度部屋というより、自宅の部屋の延長のようですらあります。例えば片岡仁左衛門の部屋の柱には、お子さんの身長を測った横線が刻まれたりしていました。ご本人は「本当は禁止なんでしょうけど…」なんて笑っていましたけど、このことからもいわゆる単なる控え室ではないことが解ります。中村勘三郎は子供の頃から可愛がってもらった歌舞伎座の受付の女性を、さよなら公演に招いたときの話をしてくれました。


子供の頃から勘三郎を観て来て、今尚応援し続け、役者もそれに答えようと精進する。それは連綿と続いてきた伝統と歴史の小さな一ページを聞かせてもらったようでもあります。こうした役者の話の合間には、彼らが得意とする演目や、過去に演じた演目の映像が挿入されるのですが、これが歌舞伎ど素人にとっては実に親切な解説もついていて解りやすく、名優たちの熱演はダイジェストなのに魅入ってしまいます。特に歌舞伎三大名作『仮名手本忠臣蔵』、『菅原伝授手習鑑』、『義経千本桜』は猛烈に観たくなりました。さて、こうした役者の話や映像以外に裏の部分の紹介がまた驚きの連続です。例えば、公演前に歌舞伎座のロビーで稽古が行われているとは意外。てっきり専用の稽古場でやったりするのかと思っていましたから。

他にも舞台のそでの観客から見えない部分でも演技をしている人がいるだとか実に新鮮で興味深い事実を知ることができます。僅か10分の幕間で立て込みを作る大道具さんたちの手際のよさ、背景は同じ演目でも毎回描き直し、時に俳優の希望で色合いの変更も入ったり。カツラを作る人、着物を縫う人…そんな方々や様子を観ていると以前観た『パリ・オペラ座のすべて』を思い出しました。洋の東西は違えども、長い歴史と伝統をもった劇場で働く人たち。日本の伝統芸能はこうした方々によって支えられてきたのだという現実を目の当たりにした思いです。歌舞伎座が休館したその日、今年1月3日に亡くなられた中村富十郎さんがお子さんの手をとり劇場を後にされる姿が印象的でした。
個人的おススメ度4.0
今日の一言:歌舞伎を知らなくい人程観るといいです
総合評価:81点
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『わが心の歌舞伎座』予告編
出演者 |
市川團十郎 |
尾上菊五郎 |
片岡仁左衛門 |
坂田藤十郎 |
中村勘三郎 |
中村吉右衛門 |
中村芝翫 |
中村富十郎 |
中村梅玉 |
坂東玉三郎 |
松本幸四郎 |
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