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2011年2月23日 (水)

バレッツ

Photo_2 『レオン』のジャン・レノが送るバイオレンス・クライムアクションだ。全身に22発の弾丸を浴びつつも一命を取り留め“不死身”と呼ばれた伝説のマフィアのボス、ジャッキー・アンベールの実話を映画化した。主人公が殺された身内のための復讐と、家族を守るために立ち向かっていく姿を描いている。監督はリシャール・ベリ。共演に『プチ・ニコラ』のカド・メラッド。
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流石に渋いジャン・レノの殺し屋

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最初は『レオン』の続編かと思っていましたが、特にそういう訳ではなく、クライムアクションというカテゴライズが同じという作品でした。マルセイユのマフィアのボスで全身に22発もの弾丸を受けながらも一命を取り留めたジャッキー・アンベールの実話の映画化だそう。物語のオープニングカットはマフィアの元ボス・シャルリ(ジャン・レノ)が一人息子アナトール(マックス・ベセット・ドゥ・マルグレーブ)と共に街に出かけるシーンから。ちなみにこのちびっ子マックス君はギョーム・ドパルデューの遺作『ベルサイユの子』で息子役を演じた子です。アナトールを先に降ろし、駐車場に車を停めて降りたその時に事件は起こりました。何者かにモロに銃を乱射される訳ですが、急所に当たらなかったのは奇跡としか言いようがありません。(てか何故とどめを刺さないんだろ?)

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本作では、マフィアの世界からは足を洗い、家族と共に幸せを求めようとしたシャルリが、この事件がきっかけで、血で血を洗う世界に否応なしに引きずり込まれてゆく姿を描いています。外からみればマフィア組織内の抗争でしかないこの事件、要は現在のボス・ザッキア(カド・メラッド)がシャルリがボス時代には扱わなかった麻薬の取引に手を染めたがために、それに反対するであろう彼を始末しようとしたというのが表面的な理由。まあそれ自体は良くありがちなお話ですね。しかし“死んでも友達”と誓い合った友人同士の2人のうちの片方が片方を抹殺しようとする事件の本質的な理由はもっと他にあり、それは物語のクライマックスで明らかになります。このザッキア役のカド・メラッド、彼もまたどこかで観たと思ったら『プチ・ニコラ』の愉快なお父さん役でした。

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ニコラの前でおどけていたあの姿とは打って変わって、今回はかなりヤバいワル。というか、偏頭痛もちでキレると見境なしという感じ。襲撃がそんなザッキアの仕業であることを突き止めるも、仕返しはしないシャルリ。報復すれば戦争になる、それは家族を悲しませることになるから…。しかし信頼する部下カリムが惨殺され、彼の家族の悲嘆を目にしてはもう覚悟を決めるしかありません。ここからシャルリは、襲撃犯たちを一人、また一人と殺して行きます。っとまあ、ここまでの流れは基本的に日本の仁侠映画に通じるものがありました。耐えに耐えた健さんが、遂に逆襲に転じるという例のパターンですね。もっとも、そこまで耐えに耐えたかは疑問の余地はありますが…(苦笑)それにしても既に還暦を越えたとはいえジャン・レノの殺し屋姿は実に渋くて『レオン』を彷彿とさせます。

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ちなみに今回はリュック・ベッソンは監督ではなくプロデューサーですが、基本的に彼の映画に必ずある過激なカーアクションや銃撃戦は健在でした。守るものの為に復讐を続けるシャルリ、しかし警察は所詮マフィアの内部抗争としてしか受け取りません。そりゃそうですね。しかし、マリー刑事(マリナ・フォイス)は夫の元刑事をザッキアに殺されていることで、密かにシャルリに味方するのでした。シャルリ同様子供がいることもその理由の一つです。ただ、それらは全てセリフの上での話であって、物語内における重要性の割にはこの2人が結びつく描写が薄いのが残念なところでした。何しろ最終的には、復讐とはいえ殺人を犯しているシャルリをお咎めなしにしてしまうのですから、そこにはそれ相応の強い心の繋がりを感じさせて欲しかったところです。

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じわりじわりと追い詰めていく過程が急展開を見せるのは、ザッキアがアナトールを拉致したことが原因。この場面、息子の居場所が解らないシャルリは、マリー刑事に自分が捕まったというネタをマスコミに流させ、ザッキアが息子を始末しようと動き出すのを待つ作戦にでます。作戦としては良くあるものですが、物語の流れの上ではちょとこれは拙速に感じました。どうせなら『96時間』の如く、元マフィアのボスであるシャルリの力を誇示する形で居場所を突き止めて欲しかったなと思ったりも。結局アナトールは助け出され、いよいよシャルリとザッキアの対決の時を迎えます。要はザッキアは、自分だけ家族と共に幸せな余生を送るシャルリが羨ましかったのではないでしょうか。その嫉妬をして、彼の幸せを奪おうとしたというのが襲撃事件の本質なのだと思うのです。

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実話ベースといってもどこまでが実話でどこからが脚色なのかはよく解りません。ただ、最終的にザッキアは麻薬取引の証拠が見つかり逮捕されることに。そして襲撃犯に関わる大きな秘密も明らかになります。それはシャルリの片腕となっている弁護士マルティン(ジャン=ピエール・ダルッサン)に関してでした。もっともこれまた重大な事実の割にはあっさりとした伏線をたった一言のありきたりなセリフで回収して終わり。結局彼の存在意義が良く解らない結果を招いています。最初に書いた通り、シャルリは証拠不十分で釈放されるのだけれど、結局足を洗うのは諦めたのか…どうも最後が判然としませんでした。結論を言えば、ジャン・レノが殺し屋として復讐を進めてゆく過程は面白いけれど、それ以外はそう観るべき所もない作品だったなと思います。

個人的おススメ度3.0
今日の一言:やっぱり『ゴッド・ファーザー』は名作だね
総合評価:66点

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