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2011年2月20日 (日)

戦火の中へ/포화속으로

Photo 1950年の朝鮮戦争当時の実話を映画化。韓国軍学徒兵71人が北朝鮮正規軍を前に必死で立ち向かう姿を描いた戦争ドラマだ。『私の頭の中の消しゴム』『サヨナライツカ』のイ・ジェハン監督が監督を務めている。主演は大人気アイドルBIGBANGのT.O.P。共演に『悲しみよりもっと悲しい物語』のクォン・サンウ。戦闘シーンの圧倒的な迫力と臨場感に圧倒される。
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何という強烈な迫力と臨場感だ…

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イ・ジェハン監督はこれが3本目の作品なんですね。個人的にはクォン・サンウ目当てというか、彼しか知らなかったりします。ファンの方には申し訳ないけれど人気グループ“BIGBANG”のT.O.Pといわれてもその……。チェ・スンヒョンというのは本名と言うことでいいのかな?どっちで呼んだらよいのか今ひとつ解っていませんが、記事の中ではチェ・スンヒョンと表記させてもらうことにします。本作は朝鮮戦争での実話だそうで、原題「71 Into the Fire」の71はこの物語に登場する学徒兵が71人だったから。首都ソウルが陥落し、最後の要衝・洛東江を守るために発ってしまった韓国正規軍に代わり、浦項に残された71人の学徒兵が、北朝鮮軍766部隊を迎え撃つまでを描いています。それにしても冒頭いきなりの戦闘シーンから、その余りの迫力と臨場感に呆然としてしまうほど。

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イメージとしてはハイスピード撮影こそしていないものの、『ハート・ロッカー』を観た時に感じたリアリティを感じました。飛び散る土、飛び交う銃弾、紙一重で撃たれる人間…、そんな大混乱の市街地を、銃弾補給のために走るのが主人公オ・ジャンボム(チェ・スンヒョン)です。学生服と学帽にライフルを抱えた姿はまさに日本の学徒兵と同じいでたち。泥だらけの顔から覗くそのギラつく目の力が強烈なインパクトでした。とはいえ出征の準備をする母の姿を想いながら、母宛の手紙を綴る彼は世が世なら普通の学生だったはず。ちなみに本作はこの手紙をベースに作られています。最初の戦闘で生き残った学徒兵はジャンボムを含めて僅か3人。そこに68人の学徒新兵が合流し、その中にク・ガプチョ(クォン・サンウ)らも含まれていました。彼は犯罪者で鑑別所に送られるところを志願してきただけあって、元々不良。

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学徒兵の中隊長を命じられたジャンボムなど最初から見下しているのですが、とにもかくにも浦項の守備はこの71名に託されることになります。当初はクォン・サンウの学徒兵というのは流石にちょっと違和感が残りました。何せ今年35歳ですしね…。しかし、そこは日本での知名度も抜群の実力派だけあって、後へ行けば行くほどその演技力に魅了されていつしか年齢の事など忘れてしまったのですけども、さて、見下しているから中隊内の主導権を奪おうとするのかというと、実はそうでもなかったり。要は彼らは元々縛られるのが嫌いで好き勝手したいだけということ。新に加わった学徒兵たちは、程度の差こそあれそんな彼らに近い心構えの者もいます。この辺が、1度でも死線を潜り抜け、目の前で自分を庇って死んでいった軍人を観ているジャンボムたち3人との大きな差で、北朝鮮軍766部隊の斥候との交戦が発生するまでは、そのギャップを重点的に描いています。

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しかし、最初の交戦から2度目の交戦で16人が死亡してしまう中で、学徒兵の中にこれは遊びではなく本当に戦争なのだということが浸透していくのでした。それは即ち国を守るとはどういうことなのかを悟るということ。学徒兵はもちろん日本でもいましたが、彼らとの最大の違いは、その愛国心が上から強制(或いは矯正)されたものなのか、それとも自発的に自分の胸の内から湧き上がって来たものなのかということではないでしょうか。もちろん全ての人がそうだとは言いませんが。上官に掛け合い、更にアメリカ軍にまで掛け合ってまで学徒兵たちの元へ何とか応援に行こうとするカン大尉の存在は、韓国軍の良心であると同時に、目上を敬い下を可愛がる韓国らしさにも感じられます。このあたりの描き方はベタと言えばベタなのですが、何しろ監督が『私の頭の中の消しゴム』『サヨナライツカ』のイ・ジェハンですからそれも納得。

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その情緒的な描き方は北朝鮮軍のパク少佐にまで及んでいます。何しろ、ジャンボムに対して2時間後の総攻撃の時間までに白旗を掲げれば命を助けるとまで提案するぐらいなのですから。個人的にはそこまでやってしまうと、ちょっとドラマチックにもって行こうとし過ぎに思えなくもないのですけど。もっとも愛国心に目覚めた学徒兵中隊は白旗など上げるはずもなく、先頭の火蓋は切って落とされます。それにしても、基本的に徴兵制があって銃器を実際に扱う経験をしている韓国人俳優たちの戦いの様子は、どうしても想像だけで演じる日本人とは差があるなと思わずにいられません。もっと言えば、延坪島への北朝鮮の砲撃をみても解るとおり彼らは未だ戦時下にあるだけあって、死への距離の近さが違うと感じます。冒頭と同じく凄まじい迫力と臨場感に加えて、どう考えても勝ち目のない戦いに挑む学徒兵たちの戦う姿に胸が締め付けられる想いでした。

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仲違いしていたジャンボムとガプチョも協力して必死に抵抗しますが、敵は戦車まで持ち出して彼らの潜む校舎に容赦ない砲撃を加えます。たった2人で校舎の屋上から絶望的な状況の中で銃を撃ち続ける彼らは一体何を想っていたのか…。遅ればせながら援軍に到着するも、彼らを助けられなかったカン大尉の「すまなかった…」の言葉にどうしようもないやるせなさが募ります。平和への願が込められた映画が公開されるなか、残念ながら現実的にはほど遠い状況。本作は、彼らの死を無駄にしてはいけないのだと改めて訴えかけているように感じました。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:今最も身近な戦争なんだよね
総合評価:77点

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