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2011年2月 6日 (日)

再会の食卓/団圓

Photo 中国と台湾が分断された歴史に翻弄される元夫婦、そして今の夫や家族を含めた悲喜こもごもを描き出したヒューマンドラマだ。主演は『ラスト・コーション』のリサ・ルーで製作総指揮も務めている。監督は『トゥヤーの結婚』のワン・チュアンアン。どうしようもない運命に翻弄された家族それぞれの想いが胸に迫る。第60回ベルリン国際映画祭の最優秀脚本賞にあたる銀熊賞を受賞作品。
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現代の家族の絆に対するアンチテーゼ?

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予想していたよりもあっさりとした内容でした。もちろん、扱っているテーマとしては歴史に翻弄された人間の悲しい現実に迫ったものでしたけれど、余りにもストーリーの全てが整った台本通りに進んで行き過ぎなのです。始まりは一通の手紙から。差出人は国民党軍の軍人として上海を脱出する時に妻の玉娥(リサ・ルー)とはぐれてしまった元夫・劉燕生(リン・フォン)。台湾には燕生のように大陸に家族を残して来た人々が多くいて、今回はそんな人たちが40年ぶりに帰郷を許されたのでした。別に粗探しをする訳じゃないのですが、生き別れて40年なのに、燕生が玉娥の住んでいる場所を知っていることにまず違和感を感じました。

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もちろん中国は台湾を国として認めていない以上、行き来はできないにせよ、連絡ぐらいは取れたのじゃないかと。ただまあいずれにしても、玉娥の事はともかく40年ぶりに帰郷できるのは、老い先が短い燕生にとっては非常に大きなことなのは事実です。その40年前、燕生とはぐれた玉娥が子供をつれて途方にくれた日々を過ごしている時、共産党軍の兵士だった陸善民(シュー・ツァイゲン)に助けられ、2人は事実上の結婚をしていました。今は善民との間に2人の娘に孫までいます。燕生を家族総出で歓待する善民たち。驚いたのは、このあと実にあっさりと玉娥に彼女を台湾に連れて帰りたい旨を告げ、彼女もまた即断で了承してしまうのです。

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しかもそれをこれまたサラっと善民に伝え彼も了承してしまうというのが少々信じられないというか…。もちろん善民の気持ちまでもがそんなにあっさりしたものであるとは思いません。仮にも40年間も夫婦として連れ添って来たのですから。ただこの一連の流れの中で、もう少し玉娥と善民の葛藤が表現されても良かったのではないかと思うのです。簡単に言えば、もうちょっと躊躇があっても良いのじゃないの?ってこと。玉娥は言います。この40年間は善民のため子供のために生きたのだと。愛は燕生に対してあり、残された人生は自分の好きに生きたいと。気持ちは解らなくもないです。そういえば『クレアモントホテル』の主人公の老婦人・サラも玉娥と全く同じことを言っていたっけ…。

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確かに男性と違い女性は、特に玉娥の世代の女性は今ほど自由自立もなかった時代を生きてきだけにこうした想いを抱くのかもしれません。ただ、それを本人や家族の目の前で公言してしまうのは言いすぎでしょう。日本人よりもそのものズバリを口にする中国人といえども、流石にこれはないのではないかと思うのです。それともこの脚本の流れは実際の中国人や欧米人には普通なのでしょうか。それを黙って聞いている燕生にもちょっと違和感を感じます。一方の善民は家族が反対したときもその声を押し切って燕生が玉娥を連れ帰ることを承諾します。何故彼は許さないと言わないのか…。やはりそれは男として燕生の気持ちが解るからなのか。

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少なくとも自分は40年間を愛する女性と過ごし、幸せな家族を築き上げたけれど、今の燕生には何もない…。傍目にはちょっと理解がありすぎだろうと思えるほどの彼の本音が出たのは物語りも終盤に差し掛かった“食卓”でのことでした。玉娥と離婚するために色々と手続きをしたその帰り、酒が入った彼は昔話をする流れの中で本音を語ります。そこからは玉娥が台湾に行ってしまうそのことよりも、彼女が共に過ごした40年間に愛がなかったと言ったことがショックだったのが覗えました。興奮状態の善民が軽い脳梗塞で倒れるに到って、先の展開はもう読めたも同然。善民が燕生に食べさせるために、市場で1匹100元もするカニを買って来たのと同様に、燕生は善民に仏跳墻を食べさせるために市場に足を運びます。

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最後の食卓は善民と燕生の2人が本当の意味で心を通わせるシーンでした。そこで燕生は玉娥を台湾に連れ帰るのを止めると告げるのです。大いに飲み、大いに食い、大いに歌う3人。結局最後まで彼らの口からお互いの誰かを責める言葉がでなかったのが意外であり、しかし嬉しいところでした。新しい高級マンションに引っ越したあとの最後の食卓シーン。しかし子供たちは誰一人玉娥と善民の元を訪ねてきません。食卓を共にすることで絆を強める世代の彼ら3人に比べて、いかにも現代的なこの光景。中国の発展とともに、家族のあり方も変わってゆく、日本がかつて通り過ぎたのと同じ道を中国も辿っているのが印象的でした。

個人的おススメ度3.0
今日の一言:出てくる料理が美味そうなんだよなぁ…
総合評価:63点

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» 映画評「再会の食卓」 [プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]]
☆☆☆(6点/10点満点中) 2010年中国映画 監督ワン・チュアンアン ネタバレあり [続きを読む]

受信: 2012年2月21日 (火) 11時27分

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