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2011年3月26日 (土)

ダンシング・チャップリン

Photo 『Shall We ダンス?』、『それでもボクはやってない』の周防正行監督が、ローラン・プティ振付、ルイジ・ボニーノ主演のバレエの名作「ダンシング・チャップリン」を映画化。第1幕では映画のメイキング、第2幕では映画用に再構成・演出したダンスを存分に見せてくれる。出演する妻・草刈民代と監督自身は『Shall We ダンス?』以来15年ぶりの共演となった。
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素晴らしい作品でした。単にバレエのステージの舞台化であったならば好きな人には良いかも知れませんが、そうでない人には少々敷居が高く感じるもの。しかしそれを2幕構成にし、第1幕を本作のメイキング的にし、第2幕ではそれが結果としてどのようになったのかを見せてくれることで、誰でも解りやすくて尚且つバレエそのものを素直に楽しめる作品に仕上がったと思います。完成披露試写会に中睦まじく登壇してくださった周防監督ご夫妻、特に草刈民代さんはスッと背筋の伸びた立ち姿が何と美しいことか!大人の女性の色気、少女のような清楚さを併せ持つその雰囲気に会場が魅せられます。それにしても流石は一流バレリーナ、例え挨拶だけであろうとお客さんの前に立った時に発するオーラ、人を自分に注目させる立ち居振る舞いはもはや才能としか言いようがありません。

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ちなみに、この2人が名作『Shall We ダンス?』で出逢い結婚したというのは有名な話ですね。本作はあれから15年ぶりにご夫妻が共同で作り上げた記念すべき作品ですが、その15年前の運命の出逢いがなければ恐らく本作は生まれていません。元々「ダンシングチャップリン」とは、世界的なバレエ振付家ローラン・プティが1991年に手がけた作品であり、世界で唯一人、本作に登場するルイジ・ボニーノだけが踊ることが出来るといわれている作品です。そして周防監督の奥様・草刈民代さんはローラン・プティと親交も厚く、そのつてで監督自身も何度か会ったことがあるのだそう。周防監督がバレエの世界に知己が無ければ、当然このような企画自体が成立しにくかった訳です。もちろんそれ以外にも本作で彼女の果たした役割は非常に大きなものでした。

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出役としてはもちろん、監督ご自身も「踊りの事で相談する相手が常に傍にいるということはとても重要だった。」と語っており、その存在自体が重要だったのです。さて、第1幕のメイキングでは主に2つの事が映し出されていました。まずは生みの親ローラン・プティその人と、周防監督の間でプロットを固める作業。「ダンシング・チャップリン」を映画化するにあたって、そのまま全て映像化したらとんでもない長さになってしまいます。商業映画とするに当たってどの場面を切りどの場面を入れるのか、何しろ世界的巨匠の名作を再構成するのですから監督の苦労は大変なものがあったはず。しかも、「二人の警官」と「警官たち」の演目では、監督が本当に公園で撮影したいというと、プティはそれなら私は(この企画)をやらないとまで言う始末。

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結局監督はそれを押し切って実際の公園で撮影するのですが、そこには本作があくまでも映画であり、例え相手がローラン・プティであってもこと映画に関しては周防監督のほうがプロなのだという矜持があったのだと感じました。実際同じステージ上の暗い画ばかりのところに緑も鮮やかな美しい公園での演目が挟まれることで、より新鮮な気持ちでスクリーンに集中できたと思います。メイキングのもう一つの見せ場は草刈さんとルイジの稽古シーン。これは重要で、ここでの稽古の様子をしっかりと覚えておきながら第2幕を観ると、なるほど彼らはこんなことを表現したかったのだと、より作品に対する理解が深まること請け合いです。「空中のバリエーション(映画「モダンタイムズ」より)」の演目の稽古では、何度やっても上手くできない相手役の男性が降板させられたり。

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草刈さんは言います。「舞台なら良いの。でも映画はずっと残ってしまう…」と。カメラはある意味無慈悲にそこで起こっている全てを詳細に写し取てしまう訳で、それは舞台なら人々が忘れてくれる程度の体の揺らぎも、映像では決して消せないのだという意味。そしていよいよクランクインの日がやって来ます。というところで5分の幕間。元々ここは繋げて見せていたそうです。しかし草刈さんが監督に間を空けて欲しいと要望したのだそう。それは繋げて観てしまうと一つのバレエ作品として観られないから。従ってここの5分はトイレ休憩ではありません。そもそもここまで約1時間程度ですし。あくまでも頭の切り替えのための間であって、故に劇場も明かりが灯りません。鑑賞する方は是非お二人の意を汲んで、トイレで第2幕の頭が欠けることなど無いようにして下さい。

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そして始まる第2幕。これはもう唯ひたすら素晴らしいとしか言いようが無い。一流のバレリーナが踊るダンスは素晴らしい感動を与えてくれます。草刈さんのラストダンス、特に第1幕で苦労していた「空中のバリエーション」の美しさ、「街の灯」のチャップリンと盲目の娘の出会いと心の交流に心揺さぶられました。ルイジのパート「小さなトゥ・シューズ(映画「ライムライト」より)」は、チャップリンのあの有名なパンにフォークを指して踊るあのダンスをバレエで再現。これぞ正にバレエとチャップリンの融合です。一演目ごとに拍手を送りたい気分なのですが映画だけにグッと我慢していました。しかし、「街の灯」終了後にはさすがに会場に拍手が…映画の最中だというのに。貰った感動を拍手の形で自然と賞賛したい気持ちになるのです。

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本作は周防監督の代表作の一つになることは間違いないです。バレエ作品の「ダンシング・チャップリン」の良さを抽出し、その作品を作り上げる過程を通して、踊り手・作り手の想いを直に届ける。そしてその想いが相乗効果となってバレエ作品がより楽しめる。そしえそれ全部を映画という形に内包することに成功した周防監督の演出は見事でした。DVDの形で永久保存して持っていたい作品です。

  4月16日(土)公開

個人的おススメ度4.0
今日の一言:チャップリンの映画が見たくなったなぁ
総合評価:84点

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受信: 2011年4月30日 (土) 16時57分

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受信: 2011年6月 4日 (土) 17時21分

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☆何故か、周防正行監督作品は母親と観に行くのが慣例となっていた。  ただ、作品の形式が、いつもの周防作品と異なるので、一抹の不安(面白くないんじゃないか?)を抱きつつ、観始めた。  私にとっては、不安は的中した。  理由は後述するが、何度も落ちた(寝た...... [続きを読む]

受信: 2011年7月11日 (月) 22時38分

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 乱立するシネコンのコンテンツ不足解消や差別化のためだろう、近年では映画ではないものもシネコンで上映されている。いわゆる「非映画デジタルコンテンツ」、ODS(Other Digital Stuff)というものだ。  ...... [続きを読む]

受信: 2011年7月23日 (土) 15時43分

» ダンシング・チャップリン [『映画評価”お前、僕に釣られてみる?”』七海見理オフィシャルブログ Powered by Ameba]
バレリーナ草刈民代のラストダンス 「Shall We ダンス?」「それでもボクはやってない」の周防正行監督によるバレエドキュメンタリー。 フランスの巨匠振付家ローラン・プティのチャップリンを題材にした「Charlot D... [続きを読む]

受信: 2011年9月 4日 (日) 00時10分

» 「ダンシング・チャップリン」 [【映画がはねたら、都バスに乗って】]
何と言っても、上映環境が最悪だったなあ。 黒の階調が全然出ていないんだもんね。第2部で草刈民代が出てきたときなんて、四谷怪談が始まるのかと思っちゃった。 DLP上映だっていうんだけど、DVDをそのまま拡大映写しただけなんじゃないのって疑いたくなるような...... [続きを読む]

受信: 2011年9月17日 (土) 23時39分

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