お家をさがそう/Away We Go
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何のための旅だったのだろう? |
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ちょっと変わったロードムービーでした。バート(ジョン・クラシンスキー)とヴェローナ(マーヤ・ルドルフ)は結婚していないパートナー。妊娠6ヶ月になった彼女たちはバートの両親がいるコロラドに引っ越してきます。実はヴェローナの両親は彼女が大学時代に亡くなっていて、家族で子供を育てることを考えたら祖父母が近くにいたほうが良いから。ところが、ある日突然バートの両親がベルギー引っ越すと言い出したからさぁ大変。わざわざコロラドまで来たのに話が違うじゃない!っとヴェローナはおかんむりです。それじゃこれで夫婦、もといカップル仲が悪くなってしまうのかといえばそんなことは全く無い。本作を通じてこの2人はお互いの気持ちを思いやりながら常に仲の良い姿をみせてくれるのが、観ている人間に安心感を与えてくれます。


という訳で、ここからこの2人の“お家(うち)をさがす”旅が始まるのでした。彼らは自分たちの兄弟であったり、友人であったりといった人づてでそれぞれの土地に向かうのだけれど、行く先々で出会う人は何がしか問題がある人なのです。最初に向かったのはアリゾナ州フェニックス。ヴェローナの元上司・リリー(アリソン・ジャネイ)は子供たちを前にしてレズの話をしたり、子供たち自身をボロクソにけなしたりともおう無茶苦茶。ただ観てる分にはケッサクなんですけれど。で、結局バーととヴェローナは戸惑いながら今度は彼女の妹のいるツーソンへ。ここでは特に妹カップルが出てくると言う訳ではないのですが、後から考えてみると一応ラストへの伏線になっています。次に訪れるのはウィスコンシン州マディソン。バートの幼なじみLN夫妻との再会です。


このLNがまたワケのワカラナイ哲学なのか宗教なのかに被れている最悪の女性。乳母車を嫌っているのだけれど、その理由が“子供を押し出す”からというのですから、バートたちだけでなく私たちも「はぁ?」ってなもんです。ちなみにこのLNを演じていたのがマギー・ギレンホールだったりするんですね。地味な脇役ながらさすがはオスカーノミニー。見事にムカツク女性を演じてくれてます。かくしてLNと喧嘩別れした2人は、今度はカナダのモントリーオールに向かうのでした。…っとこの辺でハタと気がついたのですが、そもそも何故バートとヴェローナは自分たちの住む場所を決めるのに、幼なじみや上司の存在だけしか考慮しないのでしょう?つまりリリーの家庭がぶっ壊れていても、LNが変人でも、それはその街の住人の一人に過ぎないと思うのです。


どんな街にだっておかしな人間もいれば、素敵な人間もいるはず。もっと言えば良い面しかない人間などいるはずもなく、逆に悪い面しかない人間もいないはずです。モントリオールに住む大学時代の友人トム(クリス・メッシーナ)とマンチ(メラニー・リンスキー)がまさにその典型だったのでした。高級住宅に幸せな家庭、しかし実はマンチは数日前に流産したばかりでした。養子は可愛いけれどやっぱり自分の子供が欲しいと告白するトム。結局その様子に居たたまれなくなった2人は、バートの兄コートニーに呼ばれたこともあって一路マイアミへ。居たたまれなくなる気持ちは解ります。悪気は無いとはいえ、流産したばかりのマンチの元を妊娠6ヶ月の女性が訪ねるのはブラックジョークにしてもちときつい。でもそれとモントリオールの街の良さとは何の関係もないのに…。


結局家庭が壊れる寸前の兄の下ですっかり不安になったバートはヴェローナに捨てないでくれなんて懇願するのですが、もはやこの辺の心理的な移り変わりは共感しにくいものでした。実は旅の中では“一般的に”成功している家族とは一度も出会っていません。しかしよく考えると成功しているのかしていないのかはその家族だけが判断できることで、バートとヴェローナが、まして私たちが決めることではないはず。法律を犯したり、他人に迷惑をかけていない限り、その家族がそれで良ければ別に何ら問題ない訳でです。要はそこからこの2人が何を学んだのかと言うのが重要なのだと思うのですが、どうもその部分が良く伝わってきません。訪問先のそれぞれのカップルが見せてくれるブラックジョーク的な個性は非常に楽しいのですが。


そのせいか、結局最後に向かったヴェローナの出身地サウスカロライナの生家について、2人が晴れやかな表情を見せる意味がいまいち良く理解できませんでした。まさか扉を開けた外の風景が美しかったからだとか、久しぶりに生家に戻ってこれたからとかそんな即物的な理由ではないと思いますし。初っ端のベッドシーンで「アソコの味が変わる理由は…」だとか妙に理屈っぽいHシーンを見せてくれたり、子供の心拍数を上げるためにわざと大声でケンカしたりと、とぼけたポイントで笑わせてくれるのは確かに楽しいです。更に旅の過程でバートとヴェローナの信頼関係の強さが増していく姿は見ていて気持ちよいのですが最後の最後で「結局何だったんだろう?」という作品でした。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:まあ地味だね…
総合評価:68点
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