神々と男たち/Des hommes et des dieux
1996年にアルジェリアで起きた武装イスラム集団によるフランス人修道士誘拐・殺害事件を映画化。命の危険に恐怖し、逃げ出したい気持ちとの間で揺れる修道士たちの心の葛藤を描いた作品だ。主演は『華麗なるアリバイ』 のランベール・ウィルソン、監督は俳優でもあるグザヴィエ・ボーヴォワ。第63回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞した。>>公式サイト
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1996年にアルジェリアで起こったイスラム過激派によるフランス人修道士誘拐・殺害事件を映画化した作品です。実際にそうだったのだろうと思わせるリアリティにプラスして、グザヴィエ・ボーヴォワ監督の演出とエチエンヌ・コマールの脚本、さらにこの2人の脚色が実に上手く出来ていました。アルジェリアといえば元々はフランスの植民地。従ってそこにフランス人修道士がいること自体に不思議はないですが、イスラム教徒の村人たちと良好な関係を築いているのには驚かされました。何しろ物語中盤以降、修道士たちが帰国するかもしれないと村人に言うと、逆に彼らの方が慰留するほど。観ているとクリスチャン(ランベール・ウィルソン)たちはコーランの勉強もしているようでした。
実際、話の最後に付ける「アーメン」の後に「インシャ・アッラー(字幕ではインシャラー)」と言っていましたし。宗教学的に言えばイスラム教でも聖書は神の言葉を記した書物だとしていますが、それは理屈の上での話しであって現実的ではないです。それを考えるとこの村はイスラム教とキリスト教の共存がとても上手く行っているモデルでした。作品は村人たちとの交流を淡々と描き出して行きます。特に医者でもあるリュック(マイケル・ロンズデール)は1日に150人もの患者を診察することも。自給自足の生活の様子の合間に挿入されるのは聖歌を朗誦し、黙想し祈りを捧げる7人の修道士たちの姿でした。彼らの歌声の素晴らしさといったら!あまりの美声に思わず聞き入ってしまいます。
ところが、アルジェリアで内戦が勃発したことで全ての状況が変わってくるのでした。イスラム過激派たちは罪の無い市民を虐殺し、ついにクリスマスの夜に修道院にやって来ます。仲間の手当てをするためにリュックを連れ去ろうとする過激派たち。しかしコーランの一説を引用しでそれを拒絶するクリスチャン。意外にも大人しく引き上げようとする彼らにその日がクリスマスであると告げると、特別な日を邪魔した謝罪までして立ち去るのでした。もしかして過激派とすら心を通わせることが出来るのか?と少し期待を抱いてしまったほどですが、ことはそんなに甘くありません。この後、7人の修道士たちの葛藤が始まるのでした。即ちさこの地を去るべきか否か…。
「生きるために修道士になったのだ。」「暴力に屈してはいけない。」とかく修道士ともなれば、神に仕える身として理想的なことだけを語りがちだと思っていましたが、7人の修道士たちはとても人間らしく迷います。誰だって死にたくはありません、しかし自分たちを頼る村人たち、そして何より神に仕える身としての生き方、両方の狭間で揺れる心の描き方が実に上手く、苦しい胸のうちがヒシヒシと伝わってきます。もちろん7人それぞれがまた異なった考え方(たとえ結論が同じでも)を持っていることがとてもリアル。しかも、フランス本国からは帰国命令が出ているのですから、言ってみれば帰国する大義名分だってあるわけです。そしていよいよ7人で採決を取ることに。
悩みぬいた挙句に出した結論は全員が「残る」でした。結果がどうあれ自らの決断を下したその日、町で手に入れたささやかなご馳走とワインを嗜む彼ら。「白鳥の湖」に乗せた彼らの“最後の晩餐”シーンは本作の1番のクライマックスです。そこにあるのは圧倒的な画力。彼らの意志の力、人間らしさ、信仰心、そういったものがまるで浴びせかけるように観る者を惹き付けて止みません。一人ずつの表情をアップで順次映し出し、彼らの表情を余すことなく描き出す。感極まって涙を浮かべる彼ら。私は彼らはこの時点で自らの死は覚悟していたと思うのです。しかしこの時点で彼らはその恐怖を乗り越えていた、いや、彼らの中の信仰は結局死すらも超越したのだと。
本作はアカデミー賞外国語映画賞のフランス代表作にも選ばれ、第63回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞した作品でもあります。クライマックスに到るまではかなり淡々と村人との交流と修道士の生活が交互に描かれるだけなので、時として退屈に感じるかもしれません。しかしそれら全ての光景が集約・蓄積されたクライマックスの胸を締め付けるような感動を是非感じ取って欲しいです。
個人的おススメ度4.0 今日の一言:グランプリ<パルムドールって解りにくい 総合評価:78点
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受信: 2011年3月18日 (金) 00時19分
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舞台は1996年代のアルジェリアの小さな村。
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ランベール・ウィルソン、マイケル・ロンズデール、
オリヴィエ・ラブルダン、フィリップ・ロダンバッシュ出演
グザヴィエ・ボーヴォワ監督、
101分 、2011年3月5日公開
2010,フランス,マジックアワー、IMJエンタテインメント
(原作:原題:DES HOMMES ET DES DIEUX/OF GODS AND MEN )
→ ★映画のブログ★
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受信: 2011年4月16日 (土) 02時52分
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【DES HOMMES ET DES DIEUX/OF GODS AND MEN】2011/03/05公開 フランス PG12 120分監督:グザヴィエ・ボーヴォワ出演:ランベール・ウィルソン、マイケル・ロンズデール、オリヴィエ・ラブルダン、フィリップ・ロダンバッシュ、ジャック・エルラン、ロイック・ピション...... [続きを読む]
受信: 2011年10月20日 (木) 11時14分
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2010年のカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した人間ドラマです。 1996年にアルジェリアで起きた事件をどのように描いているのか気になっていました。 静謐と美しい音楽に彩られた作品は、あまりにも哀しい展開をみせていきました。 ... [続きを読む]
受信: 2011年10月20日 (木) 21時08分
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アルジェリアで実際に起きた原理主義者によるフランス人修道士誘拐・殺害事件を題材にした作品。
内戦のさなか、質素に穏やかな共同生活を送っていた修道士と地元民たち。ところがイスラム過激派によるテロが激化し、フランス政府からは帰国命令が。帰るべきか、留まるべきか。修道士の間でも意見が分かれ…。
地味なつくりの作風ですが、気づくと静かに引き込まれていました。また、BGMらしいBGMはないものの、度々ある修道士たちの歌う賛美歌がとても美しかった。
クリスマスの夜に修道院にやって来たテロリストた... [続きを読む]
受信: 2011年11月12日 (土) 09時11分
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受信: 2012年3月 7日 (水) 00時32分
» 神々と男たち [だって興味があったから 【映画と本と、日常日記】]
さよならを言わなければならない時に──ともに生きる
2010年 フランス 日本公開日2011/03/05
神々と男たち [DVD]/ランベール・ウィルソン,マイケル・ロンズデール,オリヴィエ・ラブルダン
監督 グザヴィエ・ボーヴォワ
脚本 エチエンヌ・コマール
出演 ... [続きを読む]
受信: 2012年4月29日 (日) 00時10分
» 神々と男たち [RE940の自作DVDラベル]
2010年 フランス 123分
監督:グザヴィエ・ボーヴォワ
出演:ランベール・ウィルソン
マイケル・ロンズデール
オリヴィエ・ラブルダン
フィリップ・ロダンバッシュ
ジャック・エルラン
1996年、激しい内戦が続くアルジェリアで布教活動を行なっていたフランス人のカトリック修道士7名が、現地のイスラム武装集団によって誘拐され、殺害されるという事件が発生。死と隣り合わせの切迫した状況が続くなかで、なおも人間としての尊厳と誇りを失わず、その地に留まることを選んだ彼らの姿...... [続きを読む]
受信: 2012年5月16日 (水) 20時44分
コメント
昨年鑑賞した時の感動がもう忘れられなくてね。
これを「退屈だ」って感じちゃう人は、たぶん映画に対しての入り方が違うんだと思うから、それは置いといて(苦笑)
これは、「お願い」して観ていただく作品じゃなくて、作品そのものが観客を惹きつけるって思いたい。 そのくらいの崇高さがありました。
ただ、昨今のこの状況、映画界全体に大打撃となりそうで、しかもこういう良質の映画ほど影響受けそうで、かなり憂慮しています。
本当は私はもう1回観に行きたいけど・・・。 どうかなあ。
投稿: rose_chocolat | 2011年3月18日 (金) 00時29分
◆rose_chocolatさん
えへへ、実は私は最初観てとても感動したので、2日連続で観に行っちゃいました。(笑)まー、実は他にも銀座で観たい映画があったからってのもあるんだけどね^^;
この作品と同じカンヌで最高賞のパルムドールは『ブンミおじさんの森』だけど、実は私はあっちは全然ダメ。ひたすら眠いだけでレビューはパスすることにしました。
白鳥の湖にのせたクライマックスは息をするのも苦しいほどでした。彼らのちょっと涙を称えた笑顔は忘れられないです。
投稿: KLY | 2011年3月18日 (金) 01時23分
クリスチャンってヨーロッパの良心的な人の代表代表なんでしょうね。
こういうときだからもっとキリスト教的なドグマを尽き抜けた普遍的なぐっと来るメッセージを期待しすぎてちょっとだけ拍子抜けって、それは単なる甘ったれですな・・・。
投稿: ナイナイチー | 2011年3月19日 (土) 19時42分
◆ナイナイチーさん
別に甘ったれということもないと思いますよ。(笑)
ただ完全実話がベースで生き残りもいるだけに、脚色のレベルは難しかったんじゃないかなって思います。それを考えると個々人の人間にフォーカスする方に力を入れる選択は成功だったかなと感じました。
投稿: KLY | 2011年3月19日 (土) 20時22分
地味ながら力のある秀作でしたねえ。
修道士達の聖歌と白鳥の湖の使い方にうなりました。
テーマ的に、あえて政治性を排除したのが成功の鍵だった様に思います。
投稿: ノラネコ | 2011年3月19日 (土) 23時59分
◆ノラネコさん
現実の重みを上手く脚色したなぁと感じます。あの白鳥の湖の使い方とあの絵、物凄い力強さでした。
政治性もですが、宗教的にもステレオタイプに陥っていないのが良かったかなと思います。
投稿: KLY | 2011年3月20日 (日) 00時26分
こんばんは。先に事件の悲惨な結末を知ってしまい、いささか胸が悪くなったのですが、映画本編を見たら、彼らの高潔な姿勢に心洗われた気がしました
自国の事件で関心があったということもあるでしょうけど、こういう映画が大ヒットするフランスの観客のレベルってすごいですねえ
投稿: SGA屋伍一 | 2011年3月30日 (水) 19時41分
◆SGA屋伍一さん
あまり言いたくないけれど、日本の観客のレベルはかなり低いですもんね。色んな理由はあるけど、やっぱり料金が高すぎたってのはあるのかな。
家族で映画行こう!ってなっても4人で1800円じゃそれだけで7200円、食事や買い物したら軽く2万コースだもん。だからどうしても皆で楽しめる無難な作品ばかりみにいっちゃう。
この作品なら、彼らのあの白鳥の湖にのせた表情を見るだけでこの映画を観る価値があると思うし。
投稿: KLY | 2011年3月30日 (水) 21時39分
KLYさん、こんばんは。
>グランプリ<パルムドールって解りにくい
ホント、そうですよね。
まっ、カンヌの場合、審査委員長の一押しの好みで決まるようなものだから
正統性は乏しいのかもしれないけどね・・・。
この年の受賞作に関しては『神々と男たち』に最高賞を与えてほしかったです。
投稿: BC | 2011年4月13日 (水) 23時08分
◆BCさん
ちょっと調べたんですが、長い歴史の中でゴチャゴチャやってるうちに今の形になってるんですね。ま、あんまりクッキリハッキリさせない辺りが、アメリカンなアカデミー賞へのアンチテーゼなんでしょうか。^^;
私も全く同感でこの作品に最高賞を与えて欲しかったです。
投稿: KLY | 2011年4月13日 (水) 23時50分
フランス映画らしい退屈に感じてしまいそうなシーンはあれど、修道士をなまじ聖人として描かず一人の人間として悩み苦しむ姿を丁寧に描いているのがいいですよね。
しかし「白鳥の湖」があんなにも悲しい曲だったとは・・・。
投稿: にゃむばなな | 2011年4月16日 (土) 22時14分
◆にゃむばななさん
前半はややもすると単調ですよね。行ってみれば淡々と日々の生活が描かれていて、多分実際あんな感じで面白くも何ともない毎日なんでだろうなぁ。
そう、修道士といえども人間。その苦しみは私たちだって普通に理解できるもの。だからこそあの「白鳥の湖」のシーンが心に迫るのでしょうね。
投稿: KLY | 2011年4月16日 (土) 22時46分
KLYさん
今晩は☆彡
本当に凄かったですね。
暴力に屈することは出来ないと
修道士たちは覚悟を決めていた。
すなわちこれが殉教なのですね。
生命の危険を知りつつ使命に就く。
この矛盾に情熱があるとは、
凄いことだと思いました。
投稿: mezzotint | 2011年5月31日 (火) 23時50分
◆mezzotintさん
綺麗に言うと殉教なのだけれど、きっと本人たちはそんな立派なもんじゃなく、やっぱり普通の人間として怖かっただろことは当然だと思うのです。
でも仰るとおり、彼らの人生の使命感の尊さに、その覚悟に胸打たれました。
投稿: KLY | 2011年6月 1日 (水) 00時04分
こんにちは♪
素晴らしい作品でしたね。
白鳥の湖が流れるシーンはとにかく惹きつけられてこちらも涙しました...
今でも修道士たちの表情が忘れられません。
と言っておきながらこの後アレ観ちゃった私、ミスりました^^;
投稿: yukarin | 2011年10月20日 (木) 11時33分
◆yukarinさん
こんにちは☆
私的にはこっちのがはるかにパルムドール。素晴らしい作品でした。修道士たちの静かな覚悟、人間あんな表情出来るもんなんですね、死の危険を前にして…
投稿: KLY | 2011年10月21日 (金) 00時39分
こんにちは♪
恥ずかしながら「ブンミおじさんの森」は鑑賞したものの、消化不良で意味不明な部分も多くて「?」だったのですが、こちらは素晴らしい作品でしたね
白鳥の湖の音楽が、それまで賛美歌しかBGMがなかったぶん非常に感情的に聞こえてくるんですよね
あの晩餐のシーンのひとりひとりの表情が本当に素晴らしかったです
投稿: maki | 2011年11月12日 (土) 09時10分
◆makiさん
こんにちは♪
私も一応『ブンミおじさんの森』は観たのですが、正直退屈で寝ちゃったんでレビューはスルーしてますw
どう考えてもこちらの方が私にとってはパルムドールですよ。
あのシーンは心に焼きつく名シーンですね。
投稿: KLY | 2011年11月12日 (土) 23時53分
だが、個人的にはあの修道士の中にセガールやステイサムがいなかった事が悔やまれてならない。
・・・いや、いい映画でした。
投稿: ふじき78 | 2012年3月 7日 (水) 00時33分
◆ふじき78さん
この時のパルムドールが『ブンミおじさんの森』なんですよね。私はどう考えてもこっちがいいな…
投稿: KLY | 2012年3月 7日 (水) 00時51分