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2011年3月18日 (金)

神々と男たち/Des hommes et des dieux

Photo 1996年にアルジェリアで起きた武装イスラム集団によるフランス人修道士誘拐・殺害事件を映画化。命の危険に恐怖し、逃げ出したい気持ちとの間で揺れる修道士たちの心の葛藤を描いた作品だ。主演は『華麗なるアリバイ』のランベール・ウィルソン、監督は俳優でもあるグザヴィエ・ボーヴォワ。第63回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞した。
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見よ!7人の修道士たちの信念を。

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1996年にアルジェリアで起こったイスラム過激派によるフランス人修道士誘拐・殺害事件を映画化した作品です。実際にそうだったのだろうと思わせるリアリティにプラスして、グザヴィエ・ボーヴォワ監督の演出とエチエンヌ・コマールの脚本、さらにこの2人の脚色が実に上手く出来ていました。アルジェリアといえば元々はフランスの植民地。従ってそこにフランス人修道士がいること自体に不思議はないですが、イスラム教徒の村人たちと良好な関係を築いているのには驚かされました。何しろ物語中盤以降、修道士たちが帰国するかもしれないと村人に言うと、逆に彼らの方が慰留するほど。観ているとクリスチャン(ランベール・ウィルソン)たちはコーランの勉強もしているようでした。

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実際、話の最後に付ける「アーメン」の後に「インシャ・アッラー(字幕ではインシャラー)」と言っていましたし。宗教学的に言えばイスラム教でも聖書は神の言葉を記した書物だとしていますが、それは理屈の上での話しであって現実的ではないです。それを考えるとこの村はイスラム教とキリスト教の共存がとても上手く行っているモデルでした。作品は村人たちとの交流を淡々と描き出して行きます。特に医者でもあるリュック(マイケル・ロンズデール)は1日に150人もの患者を診察することも。自給自足の生活の様子の合間に挿入されるのは聖歌を朗誦し、黙想し祈りを捧げる7人の修道士たちの姿でした。彼らの歌声の素晴らしさといったら!あまりの美声に思わず聞き入ってしまいます。

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ところが、アルジェリアで内戦が勃発したことで全ての状況が変わってくるのでした。イスラム過激派たちは罪の無い市民を虐殺し、ついにクリスマスの夜に修道院にやって来ます。仲間の手当てをするためにリュックを連れ去ろうとする過激派たち。しかしコーランの一説を引用しでそれを拒絶するクリスチャン。意外にも大人しく引き上げようとする彼らにその日がクリスマスであると告げると、特別な日を邪魔した謝罪までして立ち去るのでした。もしかして過激派とすら心を通わせることが出来るのか?と少し期待を抱いてしまったほどですが、ことはそんなに甘くありません。この後、7人の修道士たちの葛藤が始まるのでした。即ちさこの地を去るべきか否か…。

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「生きるために修道士になったのだ。」「暴力に屈してはいけない。」とかく修道士ともなれば、神に仕える身として理想的なことだけを語りがちだと思っていましたが、7人の修道士たちはとても人間らしく迷います。誰だって死にたくはありません、しかし自分たちを頼る村人たち、そして何より神に仕える身としての生き方、両方の狭間で揺れる心の描き方が実に上手く、苦しい胸のうちがヒシヒシと伝わってきます。もちろん7人それぞれがまた異なった考え方(たとえ結論が同じでも)を持っていることがとてもリアル。しかも、フランス本国からは帰国命令が出ているのですから、言ってみれば帰国する大義名分だってあるわけです。そしていよいよ7人で採決を取ることに。

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悩みぬいた挙句に出した結論は全員が「残る」でした。結果がどうあれ自らの決断を下したその日、町で手に入れたささやかなご馳走とワインを嗜む彼ら。「白鳥の湖」に乗せた彼らの“最後の晩餐”シーンは本作の1番のクライマックスです。そこにあるのは圧倒的な画力。彼らの意志の力、人間らしさ、信仰心、そういったものがまるで浴びせかけるように観る者を惹き付けて止みません。一人ずつの表情をアップで順次映し出し、彼らの表情を余すことなく描き出す。感極まって涙を浮かべる彼ら。私は彼らはこの時点で自らの死は覚悟していたと思うのです。しかしこの時点で彼らはその恐怖を乗り越えていた、いや、彼らの中の信仰は結局死すらも超越したのだと。

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本作はアカデミー賞外国語映画賞のフランス代表作にも選ばれ、第63回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞した作品でもあります。クライマックスに到るまではかなり淡々と村人との交流と修道士の生活が交互に描かれるだけなので、時として退屈に感じるかもしれません。しかしそれら全ての光景が集約・蓄積されたクライマックスの胸を締め付けるような感動を是非感じ取って欲しいです。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:グランプリ<パルムドールって解りにくい
総合評価:78点

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さよならを言わなければならない時に──ともに生きる 2010年 フランス  日本公開日2011/03/05 神々と男たち [DVD]/ランベール・ウィルソン,マイケル・ロンズデール,オリヴィエ・ラブルダン 監督 グザヴィエ・ボーヴォワ 脚本 エチエンヌ・コマール 出演 ... [続きを読む]

受信: 2012年4月29日 (日) 00時10分

» 神々と男たち [RE940の自作DVDラベル]
2010年 フランス 123分 監督:グザヴィエ・ボーヴォワ 出演:ランベール・ウィルソン マイケル・ロンズデール オリヴィエ・ラブルダン フィリップ・ロダンバッシュ ジャック・エルラン  1996年、激しい内戦が続くアルジェリアで布教活動を行なっていたフランス人のカトリック修道士7名が、現地のイスラム武装集団によって誘拐され、殺害されるという事件が発生。死と隣り合わせの切迫した状況が続くなかで、なおも人間としての尊厳と誇りを失わず、その地に留まることを選んだ彼らの姿...... [続きを読む]

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受信: 2012年5月24日 (木) 11時22分

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