ザ・ホークス ハワード・ヒューズを売った男/The Hoax
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| ただの詐欺事件じゃなかった! |
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何と5年前の作品。随分遅れての公開となりましたが、配給会社が付かないほど詰らない作品ではなく、むしろ結構面白い。またぞろ『アメイジング・グレイス』のように配給権をふっかけられたのでしょうか…。そもそもは作家でありながら希代の詐欺師として歴史に名を刻むこととなってしまったクリフォード・アーヴィングの物語です。彼は何をしでかしたのか。それはかの大富豪ハワード・ヒューズの自伝をいかにも本人に依頼されたかのようにでっち上げ出版社から当時の金額で110万ドル、日本円にして3億9千6百万円(固定相場制時)を騙し取ったのです。この詐欺事件自体は実話であり、アーヴィングはこの事件で逮捕された出所後に回顧録「THE HOAX」を出版、それをベースに制作されたのが本作と言うワケ。ちなみに「THE HOAX」とは“でっちあげ”という意味です。

この作品の面白いところは、嘘で嘘を塗り固め、更に嘘も100回付いていると真実に思えてくるという人間の心理が上手く描かれている点と、ハワード・ヒューズという謎に包まれた大富豪と当時のニクソン大統領という政治と経済の2大パワーの狭間で翻弄される個人を上手くサスペンスタッチに描かれている点でした。そもそもアーヴィング(リチャード・ギア)は売れない作家。ところが珍しく自分の作品が出版されることになり大喜びします。ところが、出版社側の都合で突如その話はお流れに、頭に来たアーヴィングは悔し紛れに今世紀最大の作品を持ってくると啖呵を切ってしまうのでした。で思いついたのがハワード・ヒューズの自叙伝を書こうということ。要するに当時すでに公の場に姿を現さず隠遁生活を送り謎の多い彼ならばごまかせるだろうと思ったのでした。

早速親友のディック・サスキンド(アルフレッド・モリナ)と組んでヒューズの資料集めに入るのですが、公文書館の本を写真に撮る程度はともかく、ペンタゴンから資料を盗みだしたりするシーンは面白いけれど「ほんまかいな?」と思わずにいられません。しかもヒューズの筆跡や筆圧まで真似て本人から自叙伝の依頼を受けた手紙を作ってしまうのですが、これが何と筆跡鑑定をクリアしてしまうのです。そんなに上手い話あるのか?と思わないではないけれど、今から40年前という時代と事件そのものが事実であるという2つの要素で何だか上手いこと丸め込まれてしまうのでした。更にいうと、出版社の社長役のスタンリー・トゥッチを始めとして、アーヴィングに懐疑的な人たちが実に嫌な人間として好演を見せてくれるせいか、自然に心情はアーヴィング寄りに誘導されてゆくのです。

順調に騙せているうちはこれが痛快。しかし元々嘘で構築した絵図、随所にほころびが生じてきます。遂には出版間際になって、実際に最後にヒューズにインタビューしたジャーナリストがヒューズからの電話を受けてアーヴィングの嘘を暴こうという事態にまで発展。ディックあたりは既にもう正直に話して降りようとするものの、アーヴィングはそれを頑なに拒むのでした。実は本作の面白いのはここから。自叙伝を書くにあたってアーヴィングはヒューズの口調を真似て彼の考え方に同化し、まるで彼のモノマネをするかのようにテープに言葉を吹き込み、それをディックが文字に起していました。それにしてもこの成り切りヒューズを演じている時のリチャードがお見事。喋り方を真似るだけならともかく、声の質感や発音・イントネーション、更には身振り手振りまでもが同化していくのが目に見えて解るほどの熱演です。

しかし余りにのめり込み過ぎた彼は時として自分を見失います。嘘の上に嘘を重ねた砂上の楼閣を維持するためには彼はもはや自分自身にすら嘘をつくしかなかったのかもしれません。ところがそんな彼の苦悩すら実はもっと大きなパワーバランスの中では折込済みの事だったとしたらどうでしょう。当時アーヴィンの元に送られてきた差出人不明の資料には、ヒューズからニクソン大統領への資金提供の事実が克明に記されていました。ニクソン大統領陣営としてはこれが出版されて明るみに出ては大問題。一方、ヒューズはTWA(トランスワールド航空)から訴訟を受けて莫大な賠償金を支払わなければならない危機に陥っていました。そして出版の直前にアーヴィンの詐欺行為がばれて彼は逮捕されるはめになります。すると程なくその訴訟で裁判所はヒューズ側有利の判決が…。

これらの事実から導き出される答えは「ヒューズが訴訟を有利に運ぶために、おりしも自分を利用しようとしたアーヴィングを使い、ニクソン側を揺さぶった。」ということ。もちろん真実かどうかなど解るはずはありませんが、歴史に残る詐欺事件が実は国家的な陰謀のなかの一部でしかなかったという本作の描き方は実に興味深いものです。惜しむらくは最初からそれを匂わせた形で作品の流れが形作られているならばともかく、途中までは完全に売れない作家の詐欺事件を描いた作品になってしまっていること。どうせなら原作がそうなのだから仕方ありませんけども。とはいえ、こういった陰謀説はアメリカという大国ならではのお話であって、サスペンスストーリーとしてとても愉しめる一作だと思います。
個人的おススメ度
3.5
今日の一言:日本ではあっても表に出てこなそう…
総合評価:72点
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