ファースター 怒りの銃弾／Faster

刑務所を出所したばかりの主人公が、殺された兄の仇を討つべく５日間に渡ってターゲットに復讐をしてゆく。そんな彼を追う警察官と、殺し屋という３人の姿を描いた咲くションムービー。主演は『ウィッチマウンテン／地図から消された山』のドウェイン・ジョンソン。共演にビリー・ボブ・ソーントン、オリヴァー・ジャクソン＝コーエンが出演。監督はジョージ・ティルマン・Ｊｒが務める。
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愚直で優しい復讐鬼

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久々に観たドウェイン・ジョンソンは…やっぱり凄い肉体だった！劇中でも「この筋肉は充分に武器になるよ！」なんていわれるシーンがあるのだけれど、このごつさで復讐なんぞされた日には狙われた方は堪らないだろうな。今回彼が演じるのはドライバーと呼ばれ、刑務所から１０年の懲役を終えて出てくる男。ドライバーはそのまま運転手という意味で、凄腕のドライバーだからそう呼ばれているらしい。彼は１０年前に起きた銀行強盗事件の犯人の一味で、犯行そのものは成功したけれど、何者かに嵌められて、彼以外は全員殺されるという過去を持っていたのでした。殺された中には彼の兄貴もいて、服役していた１０年間の間、じっと復讐の牙を研いでいたというワケです。

出所してすぐ１人目のターゲットを射殺。これがまた有無を言わさぬ速さで、良心の呵責など微塵も感じさせない…、恨みの深さが良く伝わってくるワンシーンでした。探偵事務所の用心棒のサモア人が彼の腕に刻まれているタトゥーを見るやいなや即座に詫びを入れ、闘わずして逃亡するシーンをみると、一体どれだけビッグネームなのだと、映画的にはテンションが上がってゆきます。一方で事件を担当するのが刑事コップとシセロ。このコップは名前と言うより刑事だからコップ。理由は解らないけれど、この後登場する殺し屋キラーと共に、職業が名前になっているんです。ところがこのキラーの登場がオチをばらしてしまうことになるのが残念なところ。

何故なら１人目を射殺したドライバーは防犯カメラに写されていました。それをコップとシセロは観て、当然ながら彼が出所したてであること、１０年前の銀行強盗の犯人であること、そして何者かに皆殺しにされたその犯人一味の生き残りであることを知ります。そんな前提があった上で、キラーに対して謎の依頼者が自分の身を守るためにドライバーを殺せと命じるのですから、流石にいくらなんでも…。何しろ４人殺してゆくうちの２人目の段階でキラーは動き始めますから、ストーリーの楽しみとしてはもはや“何故ドライバーたちは襲撃されたのか？”しかなくなります。というより、もしかしたら本作は最初からそれが狙いなのかもしれません。

ただ大まかな流れが解ってしまってもそこそこ楽しめてしまうのは、豪快なドラテク＆銃撃戦や、復讐を続けるうちに徐々に憂いを抱えてゆくドライバーの心情に魅せられるから。ドライバーの車はシボレー・シェベルSSといって古い車だけれどアメ車らしい大排気量大馬力。キラーとのカーチェイスでは彼が駆るフェラーリと熾烈な争いを見せてくれます。またドライバーの武器はリボルバー拳銃ですが、これが壁に当たると壁を抉り取るほどの威力を持っている代物。対するキラーは当然ながらオートマチック。本作では実はドライバー自身がその肉体だけで戦うシーンがありません。必ず何か武器を持っています。しかし拳銃にしろ車にしろ、愚直で力だけはあるというドライバー自身に他ならないのです。

愚直だからこそ１０年間もの服役の間、復讐心を持ち続けられたとも言えるのですが、そんな彼の心情が変化し始めたのは３人目の殺しあたりから。今は全うに生きているターゲットたちを憎みきれなくなっているのがありありと解ります。ついには４人目のターゲットは見逃すことに。最後の最後に黒幕のコップが明かす全ての謎、これはそこまで観てきて予想した範囲内でありそう驚くものではありません。撃たれたと思ったドライバーが結局コップに復讐を果たす過程は実に皮肉ですが、しかしむしろコップの死に顔が何かから解放されていたように見えたのでした。個人的にはあれだけの体ですから、ザ・ロックのパワフルな肉弾戦も観てみたかった気がします。

個人的おススメ度3.0
今日の一言：ジェイク・ギレンホールに似てない？
総合評価：61点

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