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2011年5月25日 (水)

エクレール・お菓子放浪記

Photo 西村滋の自伝的作品『お菓子放浪記』を映画化。孤児の少年が戦争末期から戦後の混乱期を様々な人々と出会いながら生き抜く姿を描いたヒューマンドラマだ。主演は本作が映画初出演となる子役・吉井一肇。共演にいしだあゆみ、遠藤憲一、林隆三らベテランが揃う。監督は『ふみ子の海』の近藤明男。吉井が美しいボーイソプラノで歌う「お菓子と娘」は思わず聞き惚れてしまう。
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吉井君の歌声に聴き惚れました

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エクレールはいわゆるエクレアのこと。フランス語で「稲妻」の意味。いくつか命名の説はあるらしいけれど、稲妻のように素早く食べないと中のクリームがはみ出てしまうからなんて説を大分昔に聞いた覚えがあります。てっきりお菓子系のお話かと思いきや、実際には主人公の西村アキオ(吉井一肇)が戦争末期から戦後の混乱期を様々な人々と出会いながら生き抜いてゆくヒューマンドラマでした。そのなかでお菓子は要所要所に登場するのですが、その最初は菓子パンでした。空腹のあまり食べ物を盗んで逃げるアキオにその菓子パンをあげたのが刑事の遠山(遠藤憲一 )。無我夢中でかぶりつくアキオが初めて人の優しい心に触れた瞬間です。その後アキオは感化院に入れられ、サタンの異名を取る指導員・伊集院鉄太郎(松村良太)から理不尽な体罰を受ける辛い毎日を送ることに。

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しかしそこで出会った教員の陽子(早織)と、彼女に教わった「お菓子と娘」の歌に救われるのでした。この歌は、本作で最も重要な要素で、この歌の歌詞に登場するお菓子がエクレールなのです。アキオがいつか食べてみたいと憧れるエクレールは、彼にとって陽子に対する憧れの象徴であり、同時に将来に対する希望でもあります。もっと言えば、戦争で甘いものが慢性的に不足していた当時の日本全体の希望の象徴でもあるのかもしれません。レトロですが、どこかホッとさせるメロディに、ちょっとユニークな歌詞が耳に残る歌でした。少し気になったのはここまでの話の展開がかなり早足なこと。この後アキオは感化院を出ますが、実家に帰った陽子の事をずっと想い続けます。ならば物語の軸となってゆく陽子との関係はもう少し時間をかけて描いても良かったように感じるのです。

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さて、感化院からフサノの養子として引き取られることになったアキオ、孤児の彼にしてみたら生まれて初めての家族に大喜びです。もっとも傍から見ていると、金を稼ぐために子供を利用しているように見えなくもないのですが、戦争末期から戦後の混乱期にはこの程度は当たり前の事だったのかもしれません。いずれにしてもこの守銭奴バーサンを演じるいしだあゆみの怪演が素晴らしい。その言葉の端々から、行動から彼女が根っからの悪人ではないことがよく伝わってくるのです。アキオが街の映画館で働いた初給料を渡した時の満面の笑みは、金を得た喜びというよりは、頑張った息子を褒める笑顔だったように見えます。さて、フサノや陽子だけでなく、本作でアキオは感化院時代から含めて多くの人々と出会います。その殆どがみな心優しい人たちばかり。

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例えばフサノと生活しながら働く映画館では売り子のトミ子(竹内都子)、映写技師の徳さん(尾藤イサオ)と出会い、その後フサノとケンカ別れし家出してからは旅芸人の一座の尾上紋三郎(林隆三)たちに拾われる。ちょと地味な俳優たちの演じる人情味溢れる芝居が観ていて心地良いのです。これにはアキオならずとも心が緩むというもの。ところが、とある事件で一座は解散してしまいます。行き場を失ったアキオに更に悪いことが…。実は彼は感化院をでてから先、自分がどこにいようとも必ず陽子に手紙を書いていました。しかし、彼女が結婚し広島に行ったことを知っていた彼は、原爆のニュースをみて絶望の谷に突き落とされます。その後の彼の姿はまさに「放浪記」そのもの。アキオは戦災孤児を集めて生き抜くためにかなりガメツイ行動をとりますが、いつもどこか寂しげなのです。

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つまり、肉体だけでなく彼の陽子を想う心が行き場を失って放浪していたのでした。それにしてもアキオ役の吉井くんは映画初出演とのことですが、誰にも頼らずに生きてやるという気持ちと、先生への想いの入り混じった寂しげな演技はこれがどうして中々堂に入ったものでした。台詞回しはともかく喜怒哀楽の表情にメリハリがあるのが好印象なんです。この後、陽子がフサノの家を訪ねることで彼女は生きていることが解り、あとは2人の再会というクライマックスに向けて物語は動き始めることになります。2人を結びつけたのは「お菓子と娘」でした。簡単に言えばこの歌を歌うアキオの声を陽子が聞きつけるという流れで、そのためにのど自慢大会が開かれるといったシチュエーションが用意されています。このシーン、吉井君の澄んだボーイソプラノの歌声はこれがもう最高に素晴らしい。

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物語的には定番と言っても良い展開ですが、アキオのそこまでの苦労や、一度は希望を失う姿を観ているだけに、彼の想いの篭った歌声は本当に心に響きますし、それだけにここは心の底から再会を祝福したい気持ちが湧き上がってくるのでした。ラストシーンは必要かどうかはちょっと賛否ありそうですが、個人的にはなくてもよかったかなと。本作の主なロケ地は被災した石巻市で、先行上映を行うはずだった劇場が流されてしまっただけでなく、製作に協力された県民の皆さんの中にも未だ行方不明の人もいるのだそうです。劇場でも募金が行われていたので、些少ですがご協力させて頂きました。宜しければ本作を観ることで、少しでも東北復興の力になって欲しいと願います。

個人的おススメ度3.5
今日の一言:シュークリームよりエクレアが好き♪
総合評価:68点

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受信: 2011年5月25日 (水) 03時15分

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