少女たちの羅針盤
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これを言ってしまうと身も蓋もないのだけれど、この作品、ミステリー部分がないほうがずっと面白かったと思う…。もっとアイドルっぽい作品かと思いきや、若手の4人の演技から演劇に賭ける真剣味はビンビン伝わってくる本格的なものだったし。だからこそミステリーパートがどうしても取って付けたというか、安っぽく見えてしまうのです。物語は廃墟のホテルに連れてこられた女優・舞利亜が何者かに脅迫されるところから始まります。舞利亜はどうやら地元では伝説の劇団・羅針盤のメンバーだったらしい。そしてその羅針盤のメンバー1人を殺した犯人らしい。と言うワケで以後本作では、どのメンバーが死ぬことになり、一体犯人は誰なのかという謎解きが展開されることに……ならんのですこれが。実際に描かれていくのは、4人の少女が舞台演劇に賭ける熱い想いなのでした。
この4人が実に良いキャスティング。『武士道シックスティーン』、『書道ガールズ』の二本で復活した成海璃子は、4人のリーダー格で気の強い女の子・楠田瑠美役。この子は見た目のホンワカさと違って、どんどん前に出てゆくタイプの役の方があっています。そして4人組では瑠美に続いて男っぽく、サッパリとした性格、サブリーダーの北畠梨里子に森田彩華。ショートカットで長身の彼女は舞台での男子役も良く似合っていました。『蘇りの血』でヒロインを演じた草刈麻有は、女の子らしい来栖かなめ。瑠美にトコトン付いてゆく小型犬のような愛らしさは、その容姿からしてピッタリ。そして成海璃子に続く実力派、『BECK』や『半分の月がのぼる空』でヒロインを演じた忽那汐里。今回は4人の中では1人だけ学校が違う江嶋蘭を演じていました。
4年前…初に瑠美たち3人は学校の演劇部での揉め事から部を飛び出し、他校の蘭を誘って劇団・羅針盤を結成します。廃アパートを稽古場にし、ストリートで芝居を見せ、やがてそれが認められ市が主催する演劇大会で優勝を狙うまでに成長する、もちろんすんなりと辿り着くわけではありません。4人の少女がそれぞれの想いや悩みを抱きながら成長してゆく様子は『書道ガールズ』などに共通する部分がありました。4人の芝居にかける情熱度合いが高まれば高まるほどその熱は私たちにも伝わり、それを観ている間は確実にこの4人のうちの誰かが舞利亜であり、メンバーのうち1人を殺すのだということなど忘れています。というより、そんなことあり得るのか?と思わざるを得ないのです。所々でこれ見よがしに舞利亜の姿が挿入されますが、もちろん顔は見えなくしていました。
じゃあこの4人以外に犯人なんているの?と思ったら実に都合よく登場するのがかなめの姉で売れない芸能人のなつめ(黒川智花)。幾らなんでもそんな安直な……と思いながら観ているものの、この人、登場は実に自然なのだけれど、次第に「何でお前がここに出てくるの?」になってくるのです。ちなみに本作は舞台が広島県福山市なのですが、まさか福山市限定で働いている芸能人なんているはずもないでしょうし…。っとまあ、早々に犯人の目星は付くのだけれど、それでも本作が面白いと思えるのは、ミステリー部分以外が面白いから。演劇に対する熱い想いからケンカしても、相手の素晴らしい部分は素直に認めたり、ストリート演劇を成功させるために全員で衣装を作ったり懐中電灯のライティングを工夫したりと、一つのものを作り上げるのに打ち込む姿は観ていて気持ちよいのです。
人間関係も良く考えられていますが、出来たらミステリーなどなくしてその辺りをもっと掘り下げた方が面白かったでしょう。両親が離婚したという共通点をもつかなめと蘭が心を通じ合わせたり、梨里子が瑠美にキスしてしまったり、その梨里子はリストカッターだったりと彼女たちの背景はまだまだ描き様があるだろうし、むしろそう言った背景が彼女たちの演劇に対するモチベーションに繋がっている部分は否定できないです。もちろんそういった描写は少しだけあるのですが、例えば瑠美の背景は全くと言って良いほど出てきません。観たところ裕福な家庭で、大きな家の階段に座っているシーンこそありましたが、彼女は一体どんな少女なのだろうということも知りたかったり。結局ミステリーにしたいのなら、演劇部分の話が長すぎるのです。
演劇大会での芝居の様子など、まるでそこがクライマックスであるかと言うほどに尺を取って見せていましたし。犯人はばらしましたが誰が死ぬのかはばらさないでおきます。もっとも想像はつくでしょうけども。原作ありきの作品なので、ミステリーを無くすことは出来ない相談なのでしょうが、良作になりそこなった印象です。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:誰一人広島弁使わないのはなぜ?
総合評価:63点
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広島県福山市にある廃墟となったホテルを貸し切って、ネットシネマの撮影が始まろうとしていた。 しかしヒロインを演じる新進女優・舞利亜には、改訂されたはずのシナリオが届いていない。 更に壁には不気味な落書きが。 誰かが彼女を陥れようとしているのか? …4年前、伝説の女子高生劇団“羅針盤”に起きた悲劇の真相が明らかになる時がやってきた…。 サスペンス。... [続きを読む]
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ねえ、人の才能を殺すって どんな気持だった?
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シナリオはまあまあ面白く、若手女優陣の若干たどたどしい演技も、よく言... [続きを読む]
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» 少女たちの羅針盤 [あーうぃ だにぇっと]
(C) 映画「少女たちの羅針盤」製作委員会
製作年: 2011年
製作国: 日本
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受信: 2011年5月17日 (火) 07時55分
» 少女たちの羅針盤 [映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評]
少女たちの羅針盤 新装版ミステリーとしては弱いが、みずみずしい青春映画として見ると楽しめる。福山市オールロケで、1000人以上の市民エキストラが参加。地域一体型の映画だ。ネ ... [続きを読む]
受信: 2011年5月17日 (火) 08時59分
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《少女たちの羅針盤》 2010年 日本映画 新進女優の舞利亜は廃墟となったホテル [続きを読む]
受信: 2011年5月17日 (火) 21時06分
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水生大海著の同名小説を映画化した青春ミステリーです。 原作は未読なので、高校生たちでどんなミステリーになるのだろうと楽しみにしていました。 少女たちの舞台にかける想いと交差するように発生する死の切なさがドーンと胸に来る作品でした。 ... [続きを読む]
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2011年5月22日(日) 15:45~ ヒューマントラストシネマ渋谷2 料金:1000円(Club-C会員料金) パンフレット:未確認 『少女たちの羅針盤』公式サイト ミステリーであり、青春映画。 冒頭ミステリー部分の現代で始まるのだが、過去(4年前)の青春映画部の劇団活動描写の比重が多く、残り20分くらいにいきなり事件が発生し、残り10分くらいで強引にミステリーの解決だ。 情けないことに犯人が想像つかなかったのだが、負け惜しみでなくミステリー部分は、たいしたことがない。 ということで、貧... [続きを読む]
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5月8日、広島八丁座ツアーで見た映画です。当初は八丁座での上映だったのですが、急遽シネツィン新天地に劇場が変わってしまい、少し残念でしたが、福山オールロケのこの映画を全国に先駆けて見ることができ...... [続きを読む]
受信: 2011年5月27日 (金) 21時35分
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ミステリーの部分は無いほうが面白い。
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» 『少女たちの羅針盤』 | 青春を演劇に賭けた四人の女子高生たち。 [23:30の雑記帳]
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受信: 2011年7月14日 (木) 23時30分
» 少女たちの羅針盤 [いやいやえん]
新進女優の舞利亜。…かつて「羅針盤」という演劇ユニットに所属していたという彼女が、自分達に起こった過去の出来事を振り返っていく…という話。舞利亜の顔はあえて映しません。そのわけは、これから起こる殺人事件とその犯人に直結してるから。
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受信: 2012年1月 7日 (土) 15時24分
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