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2011年5月22日 (日)

秒速5センチメートル

Photo 最新作『星を追う子ども』が公開中の新海誠監督の2007年の作品。一人の少女を思い続ける少年の、大人になるまでを3本のオムニバス形式で描いた切ないラブストーリーだ。引っ越していってしまったヒロインとの再会、そして高校時代の少年に恋する別の少女の想い、大人になってもさまよい続ける主人公の魂は果たして救われることはあるのか。美しい映像と音楽で描かれる映像叙事詩だ。
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類稀なる映像叙事詩に心奪われた

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『星を追う子ども』で初めて新海作品に触れるも、その前の作品である本作への絶賛の声が多く、むしろ新作はボロクソに叩かれている論調に疑問を感じていました。当ブログでいつもお世話になっている「こねたみっくす」のにゃむばななさんは新作を認めつつも「『秒速5センチメートル』を観れば、叩くファンの気持ちも解らなくはない。」と教えてくださいましたが、なるほど、実際に観てみると確かにその通りだと思います。これほどまでに美しい映像とうっとりする音楽で描かれた本作は、正にアニメーション叙事詩と言えるほどの鮮烈なイメージと衝撃を持った作品でした。本作は短編三本の集まった連作となっています。

『桜花抄』

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桜の花びらが散る速度が“秒速5センチ”らしい。それを教えてくれたのが篠原明里(近藤好美)だった。遠野貴樹(声:水橋研二)の目線で描かれたこの第1話では、2人の出会いから、お互いに惹かれあう姿が描かれています。何より物語冒頭の桜吹雪のあまりに美しい映像にハッとさせられるのでした。写実的で鮮烈な美しさを持ったアニメーションは中原俊監督の『カラフル』以来ではないでしょうか。もっとも空だったり雪だったりといった自然描写では本作のほうが一枚上手のような気もします。小学校途中で明里は栃木に転校、そして今度は貴樹自身がが鹿児島へ転校することが決まり、彼は最後に一目彼女に逢いに出かけるのでした。見知らぬ土地へ始めての電車を乗り継いで出かける不安。

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大雪で電車が動かず約束の時間にたどり着けない苛立ち。登場人物としてのセリフが少ない代わりに、訥々と語られる貴樹の声によるナレーションが観ている者にも彼のどうしようもない気持ちを伝えてくれます。夜7時の待ち合わせが何と11時に到着。しかし駅に明里は待っていてくれました。夢中になって話す2人の姿は、それまで必死に自分たちで抑制していた心を解き放ち、お互いに離れていた時間と空間を埋める作業のようでもあります。雪の舞う桜の木の下で交したファーストキス。自然と体が動いたとしか言いようが無いそのキスシーンは、逆にお互いの決別の証でもあるかのようでした。どうなってしまうんだろう…私たちの気持ちは不安に支配されることに。

『コスモナウト』

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一転して貴樹が転校していった先でのお話。鹿児島といいつつも種子島だったんですね。既に高校生になっていた貴樹ですが、この第2話の主人公は彼ではなく、彼に密かに想いを寄せる澄田花苗(花村怜美)。毎日カブ置き場で偶然を装いながら貴樹が部活動が終わるのを待ち、2人で一緒に帰るのが日課です。これはもう最初から切ない。何故なら貴樹の心を占めているのは明里であって、そこに花苗が入り込む隙間がないことを私たちは知っているから。でもこの花苗がまた純粋でイイ娘なんです。サーフィンに挑戦中の彼女は、ちゃんと波に乗れたら貴樹に告白すると決めているのだけれど、これが中々上手く行かない…。こちらも上手く乗れて欲しいような欲しくないような微妙な心理にさせられます。

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貴樹は時々携帯電話のメールを打っているものの、それは明里に出されることはありません。しかし花苗は彼のそんな姿から、彼の目が自分を見ていない、彼の心の中に自分は映っていないことを気付いているのでした。そんな彼女を見るにつけ、貴樹には今を生きて欲しいと言う想いとともに、あの桜の木の下でキスをしたときのままでいて欲しいと言う相反する想いが浮かんできます。貴樹とて彼女の気持ちに全く気付かないほど鈍感ではないと思うのですが、もしその想いに対して彼女への優しさで応えていたのだとしたら、これはあまりに失礼と言うもの。恐らく明里とは全く連絡も取れなくなった今、彼の心はあの大雪の日で止まっているのかもしれません。彼は東京の大学を目指しているのですが、ここでも第1話と同様にこの先の貴樹と明里の運命が気になりつつ最終話へ…。

『秒速5センチメートル』

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大人になって働き始めた貴樹を描いた最終話。結局明里とは出会う様子もなく、それどころか彼女は別の男性と結婚を決めたようで、これまで「どうなってしまうの?」と漠然と抱えていた不安が悪い方向で実現してしまうのでした。ただもちろん一方で、これが普通の人生なのだという想いもどこかにあります。人生そんなにドラマチックなはずもなく、誰しも心の中にそっと大切にしておきたい青春の想い出の一ページはあるもので、それに囚われ続けてしまった貴樹と、そこから解放されていた明里というコントラストがクッキリしていたようにも感じました。これはもしかしたら女性には解らないかも。振られたのならともかく、男は本気で惚れた女のことはいつまで経っても忘れられません。

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その意味では貴樹は極自然な男であって、その気持ちは痛いほどに良く解ります。そんな2人が偶然すれ違う踏み切りのシーンから始まる、山崎まさよしの「One more time,One more chance」に乗せて描かれる映像クリップ調の描写が最高にツボでした。セリフもナレーションもありません。彼の魂が時間と空間を越えて彷徨するさまを、実に写実的なアニメーションで描き出し、早いカット割で音楽に載せて見せてゆく。それはまさに貴樹のこれまでの人生そのものでもあります。前2話では描かれなかった内容もそこには含まれています。最初は手紙をやり取りしていたものの、いつしかそれもなくなり、時間と空間は否応なしに2人の間を裂いてゆく…。

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踏み切りを電車が通過している間に後ろを振り向く貴樹。もしかしたら彼女が振り向いてくれるかもしれない…。しかし電車が通り過ぎた後、彼女の姿はそこにはありませんでした。それは過去を振り向いた貴樹と、未来に目を向け歩み続ける明里の姿そのものです。しかし、貴樹はきっとこれで振り切れたはず。自分の歩み続ける先に明里はもういないのだと。

個人的おススメ度4.5
今日の一言:そりゃこっちのが断然上だろう
総合評価:92点

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