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2011年6月12日 (日)

星守る犬

Photo 村上たかしの同名ベストセラーコミックを映画化。市役所の職員が身元不明の男性と飼い犬の遺体の足跡を辿り、その度から何かを受け取るロードムービーだ。主演は『ハゲタカ』の玉山鉄二と『釣りバカ日誌』の西田敏行。共演に川島海荷、余貴美子、三浦友和ほか。監督は『イキガミ』『スープ・オペラ』の瀧本智行。
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ハッピーは“父守る犬”

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犬が星を見上げてモノ欲しそうにしている姿転じて、手に入らないものを求める人の愚かさを例えた言葉、それが“星守る犬”。しかし人はみな“星守る犬”であり、叶わぬ思いを抱きながらそれでも一生懸命生きてゆく。この物語の主人公である奥津京介(玉山鉄二)はその旅を経てそれに気付くのでした。原作は未読。元々は西田敏行扮するお父さんと愛犬ハッピーのお涙頂戴物語かと思いきや、現代の格差社会、地方の疲弊といった閉塞的社会状況までも描き出した意外にも社会派のドラマでした。何しろ物語の始まりはそのお父さんとハッピーの遺体が発見されたところから始まるのです。放置されたワゴン車の中から発見された死後半年の白骨遺体とその側で亡くなっていた秋田犬の遺体。京介は現場に落ちていた複数の手がかりから、彼らの最後の旅路を辿ることにします。

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物語の構成は京介の旅路とお父さんの旅路を交互に描き出しながら、随所に2人の背景を挿入してくるロードムービーでした。京介は子供の頃事故で両親を失い、祖父母に引き取られ、更にその直後に祖母を失うという、大切な人を立て続けに失う経験をした青年。祖父はクロという犬を買ってくれたけれど、最初だけ可愛がっただけですぐに放置するようになるのでした。それはもうこれ以上愛する存在を失いたくないという自己防衛本能から。故に孤独を愛するようになってしまった彼が、孤独死を遂げたお父さんに興味を抱いたのはある意味では自然な流れだと思います。東京、いわき、遠野、弘前、石狩、そして名寄と続く旅のルートですが、特にいわきでは海岸と側にあるコンビニが舞台ですし、美しい三陸海岸の風景も映し出されています。

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震災の影響で、恐らく私たちはもう京介やお父さんの辿った旅路を辿ることは出来ないであろう現実にしばし考えさせられるのでした。西田敏行さんは特に福島県出身ですから、作品と故郷にかける想いは二重になっていたことは想像に難くありません。さて、東京ではダンスのオーディションに落ちた少女・有希(川島海荷)と出会い、彼女は故郷に帰るために京介と同行する事に。映画オリジナルの設定だそうですが、“星守る犬”の意味を悟り、それによって成長する彼女の存在は重要に思えます。本来人間は大人になってゆく過程で、人間には出来ないこと、なんともならないことが多い、いやむしろそんなことばかりであることを知り、小さな幸せを願い続けてその為に自然に努力することを身に着けてゆくもの。しかし京介はそれを自らの殻に篭ることで放棄した…。

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有希の存在は、本来こうあるべきであるという、お手本を示してくれるものだと思うのです。だからこそ彼女の行き着いた先には“希望が有る=有希”なのではないでしょうか。お父さんや京介は道中出数々の人々と出会います。寂れた旅館の女将(余貴美子)、借金の保証人になって店を失ったコンビニ店長・永崎(中村獅童)、全然繁盛していないリサイクルショップ店長・富田(温水洋一)…。彼らは決して経済的には恵まれてはいません。更に北海道に渡ってからはシャッターに閉ざされたり、崩壊した家々がいくつも並ぶ姿が映し出されたりします。運転しながらお父さんが歌ったり口笛を吹いたりするのが水前寺清子の「三百六十五歩のマーチ」というのがなんとも皮肉でした。言うまでもなくこの曲は日本の高度経済成長期に大ヒットした曲であり、現在の日本の状況とは余りに対照的。

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しかしながらその歌詞はまさに“星守る犬”である人間がそうあるべき姿を現したものに他なりません。旅が進むに連れてお父さんの背景も明らかになって行きます。不況から失業した彼は、それによって妻との不和→離婚のお定まりコース。病気を患い全てを失ったお父さんはハッピーと共に旅に出る…。決して大それた幸せを望んでいたわけではありません。家族旅行に行こうにもお金がなくて出来なかった、しかしハッピーの拾った福引で温泉旅行券が当たると、それを握り締めて家に帰る程度のごくごく小市民なのですから。しかし社会の情勢は“星守る犬”になることすら許してくれない…。ただお父さんは彼を信じ支え続けるハッピーの存在を受け入れていたのに対して、京介は自分を信じているクロを拒絶してしまった。

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この辺り、対称的な生き方だった2人が旅が進むに連れて一本化していくようです。名寄に流れ着いたお父さんは暫くの間はキャンプ場の残飯などで生き延びますが、冬になりそれもなくなるとヒッソリと息を引き取るのでした。ハッピーを残して…。それでもお父さんを、人間を信じていたハッピーが、人間に酷い仕打ちを受けてしまう姿はショック。ところが息も絶え絶えにハッピーはお父さんを信じて彼の骸の元に戻るのです。優しいお父さんと一緒に生きることだけを願ったハッピー。当然それは叶わぬ願いであり、故にハッピーは正に“星守る犬”いや“父守る犬”でした。最後の最後でお父さんの呼ぶ声に誘われるように旅立ったハッピーは、願い続けた想いが叶ったのに違いありません。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:平井堅の主題歌が涙をさそう
総合評価:80点

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