小川の辺
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藤沢周平原作のの映画といえば去年公開された北川景子主演の『花のあと』と豊川悦司主演の『必死剣 鳥刺し』が記憶に新しく、それぞれに共通していたのは素晴らしい殺陣でした。『花のあと』では北川景子の凛とした気迫溢れる殺陣が、『必死剣 鳥刺し』では豊川悦司と吉川晃司の日本のお家芸的な殺陣が魅力的だったのを覚えています。そしてこの作品でも東山紀之と片岡愛之助の間で繰り広げられる殺陣に魅せられたのでした。東山紀之が演じるのは主人公・戊井朔之助。彼は藩主を批判し脱藩した佐久間森衛を討つように藩命を受けます。この佐久間を演じているのが片岡愛之助なのですが、そもそもこの佐久間は朔之助の妹・田鶴(菊地凛子)の夫、つまり義理の弟と言うのがミソ。
妹が脱藩者の妻とあらば、そもそも戌井家にも災いが及びそうなところを、藩主に田鶴にはお咎めなしとまで言われては追っての役を引き受けざるを得なかったワケです。朔之助は個人的にも佐久間と親しい間柄、よって友を斬らざるを得ない苦悩は尋常ではない。その上、田鶴の気性を考えたら、間違いなく彼女も自分をタダで返す訳がない…。朔之助はお役目を引き受けたもののその苦悩は深まるばかりなのでした。兄の優しさと苦悩を表現するのに東山紀之が実に上手くはまっています。彼の髷姿は必殺シリーズで見慣れていますが、ドコとなく現代テイストを取り入れたあの作品とは異なり、今回は純和風の時代劇。それがここまで似合うようになったのですからヒガシも年齢を重ねたなと妙に実感…。
旅立つ間際、戌井家で兄弟のように育ってきた奉公人・新蔵(勝地涼)が自分を連れて行ってくれとせがみます。実は彼は田鶴に恋心を抱いているのだけれど、それは当然朔之助も気付いていました。この新蔵の存在は本作に於いて、ある意味象徴的といえるものです。即ち彼は武士の兄弟のように育てられながらも武士ではないのです。道中の会話で朔之助が「武士とはまことに難しいものようのぅ」と語るのが印象的でした。ところでこの手の純和風時代劇では、一つ一つの所作にも気を配らないと、とたんにピンと張り詰めた空気が緩んでしまうものなのですが、勝地涼も東山紀之も舞台芝居を多くこなしている役者さん、そこらへんにぬかりはなく、これがまあ見事なほどにその一挙手一投足が美しい。
もちろん昔から東映の時代劇は素晴らしい俳優を多く排出していますけれど、当然ながら世代はどんどん若返ってゆく訳で、その意味でも東山紀之や勝地涼といった若い世代の俳優が時代劇をキチンと演じられるのを観ているとそれだけで嬉しくなってきます。ただ勝地涼はイマイチかつらが似合ってなかったですが(笑)ついでに言うと田鶴役の菊地凛子が勝地涼と並んだ時に何故か異様に顔が大きく見えたのはやはりかつらのせいなのか…。ちなみに実物はメチャクチャ小さいです。さて話を戻します。江戸までの道のり、そして江戸から利根川を下る行程はこれがまた日本らしい田舎道であり風景。山形で撮影されたそうですが、これ実際にこんなロケーションがあることに微妙に感動。
宿場に到着し、新蔵が田鶴の行方を突き止め、更に田鶴がいつも家を留守にする時間を突き止めると、いよいよ冒頭に書いた上意討ちの殺陣シーンです。ちなみに『花のあと』で北川景子の相手は市川亀次郎、今回は片岡愛之助ということで、殺陣の相手役に歌舞伎役者がキャスティングされるのは何故なんでしょう?もっとも所作という意味において歌舞伎役者ほどの適役はいないでしょうから、それは殺陣にも通じてくる訳で。ピンと張り詰めた空気、裂迫の気合が篭った斬り合い、とにかく藤沢作品に相応しいこの殺陣は紛れもなく本作一番の見所です。江戸の日本に生きる古き良き日本人像をその外面も内面も余すことなく描いた作品、心にしっくり来るものを覚えました。
7月2日(土)公開 |
個人的おススメ度4.0
今日の一言:ヒガシの体が凄いマッチョに!
総合評価:80点
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» 小川の辺 [あーうぃ だにぇっと]
6月24日(金)@東商ホール。
戴き物の試写状だったので募集媒体はわからないがいつもと趣のちがう試写会だった。
圧倒的に年配者が多く、試写会ずれしていない感じ。
入り口で、パンフレットはないのか?と係りの人に聞いているおじいさんがいてずっこけた。(笑)
相当後ろの方に並んだのに、端っこではあるが最前列が確保できた。
これまたレアな出来事である。... [続きを読む]
受信: 2011年6月28日 (火) 05時32分
» 小川の辺 [迷宮映画館]
これは勝地君が主役だった!! [続きを読む]
受信: 2011年6月28日 (火) 19時58分
» 「小川の辺」 (2011 東映) [事務職員へのこの1冊]
わたしが山形県民でよかったと思うのは、藤沢周平を早くから意識できたことだ。同郷の [続きを読む]
受信: 2011年6月28日 (火) 20時36分
» 小川の辺 [Akira's VOICE]
静謐で情感豊かなロードムービー。
[続きを読む]
受信: 2011年6月29日 (水) 16時48分
» 小川の辺 [象のロケット]
東北・海坂(うなさか)藩藩士・戌井朔之助(いぬいさくのすけ)は、卓越した剣の腕を見込まれ、脱藩した元藩士・佐久間を討てとの藩命を受ける。 しかし、佐久間は朔之助の妹・田鶴(たづ)の夫であり、かつては剣の腕を認め合った旧友でもあった。 秘かに田鶴に想いを寄せている、兄弟同然に育った若党(奉公人)の新蔵を供に、朔之助は佐久間と田鶴を追う旅に出るが…。 時代劇。... [続きを読む]
受信: 2011年6月30日 (木) 03時21分
» 小川の辺(ほとり) [佐藤秀の徒然幻視録]
大義なき戦いと脱力感
公式サイト。藤沢周平原作、篠原哲雄監督、東山紀之、菊地凛子、勝地涼、片岡愛之助、尾野真千子、松原智恵子、笹野高史、西岡徳馬、藤竜也。海坂藩士・戌 ... [続きを読む]
受信: 2011年7月 3日 (日) 18時44分
» 『小川の辺』('11初鑑賞89・劇場) [みはいる・BのB]
☆☆☆-- (10段階評価で 6)
7月2日(土) 109シネマズHAT神戸 シアター5にて 14:05の回を鑑賞。 [続きを読む]
受信: 2011年7月 3日 (日) 21時17分
» 映画「小川の辺」@東商ホール [新・辛口映画館]
試写会の主権はテレビ朝日、NISHIKAWAさんだ、客入りは8割くらい。映画上映前に本間智恵アナによる前説とスポンサー様からのPRが行われた。今回も映画のあらすじが本間アナから語られる。... [続きを読む]
受信: 2011年7月 3日 (日) 21時57分
» 小川の辺 [映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評]
海坂藩大全 上正しいことをした友を斬らねばならない無念。兄妹で戦わねばならない不条理。藤沢文学らしく、登場人物たちは運命を受け入れる、ひたむきな人々だ。海坂(うなさか) ... [続きを読む]
受信: 2011年7月 4日 (月) 09時02分
» 映画「小川の辺(おがわのほとり)」感想 [タナウツネット雑記ブログ]
映画「小川の辺(おがわのほとり)」観に行ってきました。
藤沢周平原作の短編集「闇の穴」に収録されている短編小説を映画化した作品。
ストーリーは、架空の藩である海坂藩の藩士で戊井家の家長でもある主人公・戊井朔之助が、義弟である佐久間森衛を討てとの藩命を受けるところから始まります。
佐久間森衛は、2年前... [続きを読む]
受信: 2011年7月 4日 (月) 18時40分
» 小川の辺 [とらちゃんのゴロゴロ日記-Blog.ver]
人物の設定から結末がわかるのだが、わかっていても感動するほど演出がうまい。東山紀之と片岡愛之助は姿勢がいいので存在感があるし、尾野真千子がしとやかで、菊池凛子は思い切ったところがあった。東山が勝地涼と追いかけていく途中で、それまでのいきさつを導入して最後... [続きを読む]
受信: 2011年7月 4日 (月) 20時43分
» 小川の辺 [だらだら無気力ブログ]
『山桜』の篠原哲雄監督と東山紀之が再び手を組み、藤沢周平原作の短編 小説を映画化した感動作。 藩命で妹の夫を討つよう命じられた兄が、社会的立場と肉親の情の板挟みで 苦しむ様子をじっくりととらえる。心優しい主人公を東山紀之が務め、彼に 仕える若党を、『シュ…... [続きを読む]
受信: 2011年7月 5日 (火) 01時39分
» 「小川の辺」 [みんなシネマいいのに!]
もうそろそろ原作がなくなるんじゃないかと思われる藤沢周平の同名短編を映画化。 [続きを読む]
受信: 2011年7月 5日 (火) 06時36分
» 小川の辺/東山紀之、菊地凛子、勝地涼 [カノンな日々]
藤沢周平作品の『山桜』を映画化した篠原哲雄監督が再び東山紀之さんを主演に迎えて藤沢周平さんの短編小説「闇の穴」を映画化した作品です。とはいっても『山桜』はイマイチだっ ... [続きを読む]
受信: 2011年7月 5日 (火) 09時35分
» 小川の辺 山形県総動員っ!(爆) [労組書記長社労士のブログ]
【=38 -8-】 TOHOシネマズ1か月フリーパスポート12本目、映画観ている最中に地震が来た!( ̄ー ̄; ヒヤリ
震度2くらいかなと、長く揺れたけど大丈夫だろうと、そのまま鑑賞していたが、考えてみたらそれで良かったのだろうか・・・。
卓越した剣の腕を持つ海坂藩士・戌井...... [続きを読む]
受信: 2011年7月 6日 (水) 09時45分
» [映画『小川の辺 』を観た] [『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭]
☆静謐の良作だった。
藤沢周平原作で、物語は至ってシンプル、脱藩した義理の弟・佐久間を討つ上意を受けた主人公が、藤沢作品ではお馴染みの海坂藩から江戸へと向かう一種のロードムービー時代劇。
藤沢周平作品は、司馬遼太郎作品の歴史を揺るがす大事件を描くス...... [続きを読む]
受信: 2011年7月10日 (日) 21時47分
» 篠原哲雄監督 「小川の辺」 [映画と読書とタバコは止めないぞ!と思ってましたが……禁煙しました。]
「必死剣鳥刺し」以来の藤沢周平作品鑑賞
公式サイト⇒http://www.ogawa-no-hotori.com/index.html
【あらすじ】
海坂藩士、戌井朔之助(東山紀之)は直心流の使い手としての腕を買われて、家老の助川権之丞(笹野高史)から、ある藩命を受ける。それは、親友である佐久...... [続きを読む]
受信: 2011年7月12日 (火) 22時32分
» 「小川の辺」感想 [新・狂人ブログ~暁は燃えているか!~]
時代小説の第一人者・藤沢周平原作。藩命により、脱藩した親友を討たねばならなくなった下級武士の姿を、「地下鉄(メトロ)に乗って」「真夏のオリオン」の篠原哲雄監督、東山紀之主演で映画化。
正直、藤沢文学はあまり得意ではないのだが、本作もその御多分に漏れず... [続きを読む]
受信: 2011年7月15日 (金) 19時06分
» 『小川の辺』を109シネマズ木場5で観てゴツゴツやなあふじき☆☆☆ [ふじき78の死屍累々映画日記]
五つ星評価で【☆☆☆いい映画だが只一つ妹萌えが全くなし】
とてもいい映画だと思う。
ただ一点、討たなければいけない友の妻=主人公の妹、
菊池凜子が果てしなくゴツゴツし ... [続きを読む]
受信: 2011年7月16日 (土) 02時21分
» 『小川の辺』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「小川の辺」□監督 篠原哲雄 □脚本 長谷川康夫、飯田健三郎□原作 藤沢周平□キャスト 東山紀之、菊地凛子、片岡愛之助、勝地 涼、尾野真千子、松原智恵子、笹野高史、西岡徳馬、藤 竜也■鑑賞日 7月10日(日)■劇場 TOHOシネマズ...... [続きを読む]
受信: 2011年7月16日 (土) 08時30分
» 小川の辺 [とりあえず、コメントです]
藤沢周平著の短編小説を映画化した時代劇です。 『山桜』が好きだったので、この作品も楽しみにしていました。 シンプルな展開の中で、様々な情を交差させながらも優しい余韻の残るような作品でした。 ... [続きを読む]
受信: 2011年7月16日 (土) 20時17分
» 小川の辺 [くまさんの再出発日記]
監督 篠原哲雄
出演 東山紀之 (戌井朔之助)
菊地凛子 (田鶴)
勝地涼 (新蔵)
片岡愛之助 (佐久間愛之助)
尾野真千子 (幾久)
物語(gooより)
卓越した剣の腕を持つ海坂藩士...... [続きを読む]
受信: 2011年7月19日 (火) 15時47分
» 映画『小川の辺』劇場鑑賞。 [ほし★とママのめたぼうな日々♪]
この日、私の住む街では最高気温が36.4℃になりました。 ひとときの「涼」を求めて、 『小川の辺』 (公式サイト)を、観 [続きを読む]
受信: 2011年7月19日 (火) 20時49分
» 古き良き日本の姿。『小川の辺』 [水曜日のシネマ日記]
藤沢周平原作の短編小説を実写版映画化した作品です。 [続きを読む]
受信: 2011年7月23日 (土) 10時19分
» 小川の辺 [ケントのたそがれ劇場]
★★★☆ 最近の本格時代劇といえば、ハンで押したように藤沢周平の短編小説が原作である。そして舞台は山形で、美しい日本の自然と人情が絡む話が多い。本作もまさにその通りの展開で、そうした意味では観客の期待を裏切らなかったことになる。 藩命によりやむを得ず、脱... [続きを読む]
受信: 2011年7月23日 (土) 13時40分
» 藤沢周平・山形万歳。【映画】小川の辺 [B級生活 ゲームやら映画やらD-POPやら]
【映画】小川の辺
藤沢周平原作の短編小説を映画化。
【あらすじ】
ある日、朔之助(東山紀之)は藩から上意討ちの命を受けるが、その相手は何と妹・田鶴(菊地凛子)の夫である佐久間森衛(片岡愛之助)だった。朔之助は佐久間を狙う道中に、幼いころから自分や妹と兄弟... [続きを読む]
受信: 2011年7月27日 (水) 20時47分
» 小川の辺 [パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ]
「たそがれ清兵衛」、「必死剣鳥刺し」など、封建社会の現実に翻弄されながらも懸命に生きようとする人々を描いて人気の時代劇作家、藤沢周平の小説を「山桜」の篠原哲雄監督が映 ... [続きを読む]
受信: 2011年8月 4日 (木) 18時37分
» 「小川の辺」 藤沢作品、粗製濫造気味じゃないですか? [はらやんの映画徒然草]
山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」以来、映画化されることが多くなった藤沢周平作品。 [続きを読む]
受信: 2011年8月19日 (金) 23時57分
» 小川の辺 [『映画評価”お前、僕に釣られてみる?”』七海見理オフィシャルブログ Powered by Ameba]
愛する人を
斬ることなど、
出来るのか。
「田鶴は…手向かってくるであろうな」
藩命は、妹・田鶴の夫である
親友を討つことであった。
「海坂藩大全」、「闇の穴」に所収されている藤沢周平の短編小説の映... [続きを読む]
受信: 2011年9月 3日 (土) 23時44分
» 花のあと [背面飛行がとまらない]
北川景子扮する武家の娘が、たった一度剣をまみえたことのあるだけの武士を弔うために [続きを読む]
受信: 2011年9月10日 (土) 02時01分
» 小川の辺 [ゴリラも寄り道]
小川の辺 [DVD](2012/01/13)東山紀之、菊地凛子 他商品詳細を見る内容(「キネマ旬報社」データベースより)
藤沢周平作品の中でもひと際名作との声が高い「小川の辺」を、
篠原哲雄監督が東山紀之主演で映...... [続きを読む]
受信: 2012年1月26日 (木) 23時22分
» 小川の辺 [銀幕大帝α]
11年/日本/104分/時代劇ドラマ/劇場公開
監督:篠原哲雄
過去監督作:『昭和歌謡大全集』
原作:藤沢周平『小川の辺』
出演:
◆東山紀之…戊井朔之助
◆菊地凛子…田鶴
過去出演作:『ノルウェイの森』
◆勝地涼…新蔵
過去出演作:『戦慄迷宮 THE SHOCK LABYRINTH...... [続きを読む]
受信: 2012年1月29日 (日) 23時51分
» 小川の辺 [いやいやえん]
原作は、奉公人・新蔵と田鶴の恋心と、二人は想いを寄せていたのではないかと回想する朔之助の図という作品でした。他にもいい作品がたくさんあるのになんでわざわざこの作品が映像化されたんだろう?三すくみの関係が良かったのだろうか。藤沢周平ファンとしては作品の映像化は嬉しいものの、何でこの作品が?というのもあるのでそこらへんが謎だ。
これは菊池凛子さんがミスキャスト。気性の激しい女子という設定でそれは合っているかのようにみえますが、原作の花のようだと思われるシーンなどからもイメージが合わない(ついで... [続きを読む]
受信: 2012年2月24日 (金) 10時37分
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