酔拳 レジェンド・オブ・カンフー
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酔拳?殆ど出てきません… |
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うーん、何だか騙されたような作品。そもそも酔拳なんて最後のほうで唐突に出てくるだけで、物語本線には何にも絡んでこないし。原題の「蘇乞兒」についてチョット調べてみたら、清朝末期に武術の達人とされた10人「広東十虎」の内の1人で、酔拳を完成させたという実在の人物のことだそうな。『ドランク・モンキー/酔拳』でジャッキー・チェンに酔拳を仕込んでいた赤鼻のオッサンが正に当人なのだそうだけれど、時代的にはフィクションということらしい。乞食のような格好で息子と共に国中を旅していたから“乞兒”で、姓である“蘇”と合わせて「蘇乞兒(スー・チー・アル)」ということなのでしょう。要するに、本作は蘇乞兒の伝記物語ということなのです。


従って『ドランク・モンキー/酔拳』のように、主人公が酔拳を会得して敵を倒してゆくということは全くなく、その意味でこの邦題はとてつもなくミスリードだと思います。上映時間は116分と、今時の映画としては特に長いワケではないのだけれど、見終わってみると2時間半ぐらいあったのではと感じました。というのもこの作品、何故だかストーリーが2つあるから。最初は戦士スー・サン(チウ・マンチェク)と兄ユアン(アンディ・オン)の骨肉の争いを描いています。五毒邪拳を用いてスー・サンに襲い掛かるユアン。一度は戦いに敗れるも九死に一生を得て、森の中で武神(ジェイ・チョウ)と修行を始めます。当然期待しているのは、いつで酔拳を習い始めるんだろう?ということ。


特に香港カンフー映画や中国の拳法に詳しいくもないので、当然ここで酔拳を学びリベンジを果たす物語だと思っていたのだけれど、酔拳の“す”の字も出てこない(笑)大体、五毒邪拳はいわゆる毒手拳というやつで、猛毒を含んだ手に撃たれるとそれだけで死に結びつくという強力な拳法。そんな特殊な拳法に対抗するならこちらも何か特殊な拳法をもってすると考えても無理ないと思うのですが。結局全うに修行して普通にリベンジを果たすのだけれど、この時点で「酔拳どーなってんだよ!」と…。一応チウ・マンチェクとアンディ・オンのカンフーアクションはそれなりに迫力があるのだけれど、ユアンの方は何だか体に金属を埋め込んで鎧にした挙句、五毒邪拳のお陰で死人のような顔色。


ついでに言うと、修行の時からそうなのだけれど、余りにワイヤーアクションを全面的に使いすぎて、まるで武術家同志の戦いというより『霊幻導士』でも観ているかのようだったりします。要するに重力が全く感じられないという…。『イップ・マン』や『処刑剣』あたりでもワイヤーは使ってましたが、基本は己の肉体ベース。この辺り少し演出的にワイヤーは控えて欲しかったところです。反面、投げた短刀が敵に向かって飛んでゆくようなCGベースの演出はこれが結構迫力があってイイんですけど。結局この後普通の拳法でスーがユアンを倒すクライマックスで終わりかと思いきや、ここから次のお話に進むのでした。エピローグ的な話ではなく、思いっきり話は続くのです。


先の戦いの結果妻を亡くし、そのショックから立ち直れないままに乞食同然に国中を放浪するスー。たまたま酒場で出会った男が使う酔拳を見て、自らもその動きを即座にコピーするのでした。この物語で初めて酔拳が登場した瞬間です。何の説得力もなく唐突過ぎるにも程がありますが、まあようやくお目当てのモノが観られたので良しとしましょう。で、あとはその酔拳の見せ場だけ。中国人武術家を試合という名の下に殺しているロシア人レスラーたちと戦い次々倒してゆくのだけれど、どうしてもジャッキー・チェンの酔拳のイメージが強いせいか、全然それらしく見えなかったり。やっぱり「酔えば酔うほど強く」なって欲しいところなんですが、これが案外そうでもない…。


結局最後の最後で彼を支えたのは亡き妻だったという締め方はそれはそれで良いと思います。しかし作品全体としては、家族の絆を描いて見せたかったのか、「蘇乞兒」の人生を見せたかったのかが中途半端でどっちつかずになっていました。とりあえず、兄弟の闘いより以降はなんだか時間稼ぎ的に無理矢理つけたようなエピソードで苦しいと言わざるを得ません。
個人的おススメ度2.5
今日の一言:期待してたんだけどなぁ…
総合評価:55点
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