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2011年6月30日 (木)

愛の勝利を ムッソリーニを愛した女

Photo ヒトラーと並ぶ独裁者ベニート・ムッソリーニ。その男に己の持てる全てを捧げた女がいた。しかし彼女は歴史の闇に葬り去られたのだった…。イタリアの巨匠マルコ・ベロッキオ監督が描く悲劇の物語の主人公は全米批評家協会賞主演女優賞を獲得したジョヴァンナ・メッツォジョルノだ。彼女の尋常ならざる気迫のこもった演技に目が釘付けになる。共演はフィリッポ・ティーミ。
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ベロッキオによってもたらされた勝利

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第二次世界大戦のヒトラーと並び称される独裁者ベニート・ムッソリーニ(フィリッポ・ティーミ)。そのムッソリーニによって歴史の闇に葬り去られた愛人イーダの半生を描いた伝記物語です。原題「VINCERE」はイタリア語で“勝利”。このタイトルが示すとおり、本作自体が主人公イーダ(ジョヴァンナ・メッゾジョルノ)の勝利に他ならない、そんな作品でした。それにしてもヨーロッパ史は実に面白いです。まだまだ一般的な日本人には馴染みの薄い歴史の裏側がたくさんあり、この作品でもまた一つ勉強になったのでした。そうは言ってもこの話、実はそんなに難しいもんではありません。要するに若かりし頃のムッソリーニの愛人が捨てられたあとも彼を愛し続けたというお話です。

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よく「可愛さ余って憎さ100倍」などと言いますが、イーダの場合はその愛の深さが尋常ではなかっただけに憎さも1000倍といった感じ。実際、若い頃のムッソリーニはその過激な思想から当局に目を付けられ、挙句に先鋭的過ぎるその考え方は同士のにも受け入れられず党から除名されたりと散々です。そんな彼を自分の持てる全て(それは金銭的な面でも、肉体的な面でも。)で支えたのがイーダでした。しかも彼女はムッソリーニの息子を産み落とします。要するに彼を愛していただけでなく、彼の今あるのは私のおかげだという自負、強烈なまでのそのプライドが逆にイーダをして希代の独裁者ムッソリーニを攻撃する原動力となっていたわけです。

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それにしても凄いのはジョヴァンナ・メッゾジョルノの演技。アカデミー賞の前哨戦として権威の高い全米批評家協会賞で主演女優賞を獲得したのも頷ける内容で、凄まじいまでの生々しい“女”を見せ付けてくれます。ある時は擦り寄るように可愛らしく甘え、ある時は自分の愛に応えない男に対して痛烈に罵倒し、またあるときは愛する息子の母として父の愛を欲する…。あまりに極端な精神の振幅の大きさは、時として彼女を狂人のように見せてしまいますが、そこをムッソリーニに上手くつけ込まれてしまうのでした。あまりにしつこく彼に付きまとった結果、彼女は精神病院に収容され、息子とも引き離されてしまいます。当然ながら病院内は本当の精神病患者ばかり。

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しかし彼女の鉄の意志はこの程度の活況では揺らがないのが凄い所。ただこの強い精神力故に、わが身を滅ぼしてゆくイーダを観ているのは余りに辛いものがありました。病院長の今は黙って反抗しないほうが良いという至極まともな忠告に、一度は従おうと試みるものの、今度はムッソリーニの側が到底納得し得ない条件で彼女を追い詰める。結局どうあがこうと運命には抗えないのか、国王や法王に対して手紙まで書いてムッソリーニの非道を訴えるも、それに対する応えはありません。観客は時折挟まれるモノクロフィルムによるムッソリーニの演説の記録映像から、当時の絶大なる独裁者の現実の姿を目の当たりにすることになります。あの男の前では一人の女の存在など虫けら同然なのか…

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結局ムッソリーニの愛を取り戻すことよりも、一人の母親として息子との再会を優先させたイーダ。しかしそこまでの彼女の苛烈な戦いぶりを観れば、むしろその様子にホッとしました。ところが!彼女はその残されたたった一つの希望すら手にすることが出来ないのです。今思えば当時のムッソリーニは歴史そのものであり、歴史の流れに逆らおうとしたイーダはその存在すら消し去られようとしていたのかもしれません。しかし、巨匠マルコ・ベロッキオの手により再び歴史の表舞台へと導かれることになったと言えるのではないでしょうか。ヨーロッパ史の深遠さと、そこに絡む人間ドラマの面白さ、双方を上手く捉えて料理した素晴らしい作品でした。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:ムッソリーニって肉々してるのね…
総合評価:82点

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