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2011年7月18日 (月)

Peace ピース

Peace ナレーションやBGMを一切排し、自ら“観察映画”と呼ぶその独自のスタイルが人気の想田和弘監督が『選挙』『精神』に続いて送る最新作だ。今回は監督の義理の父母が従事する福祉の仕事と義父母の家に住み着いた猫たちという一見何の関係もなさそうな風景を観察してくれる。野良猫たちの社会と人間たちの社会が図らずも対比されるかのような切り取り方が面白い。
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ノーコメントは平和の秘訣?!

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実はこの作品、観察映画の“番外編”と銘打たれている。なんで?上映終了後のティーチインで監督が言うには元々この企画自体が監督自身のものではなかったからだそうだ。韓国で行われた映画祭で“平和”をテーマにドキュメンタリー作品を撮って欲しいと頼まれたのだが、監督はテーマを決めてカメラを回すことを良しとしない。それをやるとそのテーマ或いは思い描く結論に必要な映像を撮ることになり、撮影している間に得られる“何でもない発見”が無くなってしまうから、それでは面白くないと。うーん、なんとも想田監督らしい拘りで、ファンの1人としては思わずにんまりとしてしまうのだった。断ろうと思っていたが義父母の家に住み着いた猫たちを見て考えが変わる…。

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義父・柏木寿夫さんは元擁護学校の教師だったが、定年後は障碍者や高齢者を乗せる福祉車両の運転手をしていた。そんな彼が庭で餌やりをしている数匹の猫達。そこにある日“泥棒猫”がやってくる。うまくいっていた猫社会に突如として乱入してきた異邦人、いや異邦猫。あ、この猫社会を絡めて“平和”というテーマが描けるかも…と思ったというのだから、この監督の発想はやはりドコか飛んでいて面白い。映画序盤はそんな猫社会の戸惑いを理解しながらも、“泥棒猫”にも餌をやり、そして本業である福祉車両の運転をする柏木さんの2つの姿が映し出されていた。一見何の関係もないこの2つのシーン、しかしこのシーンから柏木さんの人となりがとても良くうかがわれる。

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人間と猫を同じにするなと言われるかも知れないが、私にはこの人が障害者の、高齢者の、いつもの猫たちの、泥棒猫のいずれの前でも全く同じでいられることが新鮮な驚きだった。大げさに言えば命の前で柏木さんが取る行動自体がまるで変わらないかのようなのだ。特に同情的でもなく、特に仕事的でもなく、極普通に接することの難しさは口で言うほど簡単ではないと思う。さて、映画は中盤から柏木さんの妻である廣子夫人に密着を始める。彼女は週に一度、91歳で末期がんの患者である橋本至郎さんの生活支援に出かけていた。身よりもなくネズミが石鹸を齧り、ダニだらけのアパートに1人暮らしの橋本さんの家を訪れる際には、ダニ避けスプレーをかけないと大変なことになると彼女は笑って言う。

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ちょっとしたことだが、私はここでご主人と夫人の違い、それは男女の違いでもあるであろうし、性格の違いでもあるのだろうけれど、そんな部分を感じた。簡単に言えば、寿夫さんならダニに食われようとそんなことは気にしないのではないかと思うのだ。誤解のないように書くが、これは決してそれをもって夫人がダメでご主人が良いというような話ではない。実は後半で寿夫さんが庭で猫を飼い、そこらじゅうに餌を撒き散らすことを夫人は快く思っていないことが解る。夫のそこだけが絶対に許せないと語る夫人に対して、寿夫さんは「それに関してはノーコメント」と逃げてしまうのだが、結局のところその灰色決着が夫婦の間の平和維持の秘訣なのだ。

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要するに価値観の違いは人それぞれ、そこに折り合いをつける方法も色々あるのだが、大抵の場合はそこで白黒はっきりつけることは良い結果を生まないのだと思う。監督は偶然だと言うだろうが、ここで以前からいた猫達がいつの間にか“泥棒猫”を仲間と認めている映像が実に象徴的に映る。寿夫さんは「認めるというより諦めたんだね」と語っていたが、いずれにしろ猫たちは平和を選んだと言うワケだ。橋本さんの家から帰る間際、カメラは民主党・鳩山総理(当時)のポスターを映し出し、鳩山氏の国会での演説がラジオから流れてくる。これも偶然だったと監督は言っていたが、この余りにブラックなシチュエーションは全く国民目線に立っていない民主党に対する痛烈な皮肉に他ならない。今この作品を民主党の面々はどう観るのか聞いてみたいものだ。

想田監督の作品はいつ観ても新鮮な驚きを提供してくれる。それは監督自身が常に新たな発見を楽しみながら撮影しているからなのだろう。次回作ではどんな驚きや発見を私たちにさせてくれるのか、今から楽しみだ。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:パンフと本にサインありがとうございます!
総合評価:82点

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