イージー・ライダー
1969年公開のアメリカン・ニューシネマの代名詞にして不朽の名作。自らアメリカらしい“自由”を体現しつつバイクで旅する2人の男を描いている。同年のアカデミー賞では助演男優賞と脚本賞にノミネートされている。製作・脚本・主演をピーター・フォンダ、監督・脚本・主演をデニス・ホッパーが務める低予算映画だ。共演にジャック・ニコルソン。 |
本当に“自由”な奴なんているのか? |
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オープニングはワイアット(ピーター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)がメキシコからコカインを密輸するというシーンから。大もうけした2人が金を愛車ハーレーのガスタンクに金を隠して走り始めると同時に「Born To Be Wild」が流れるともういきなりテンションアップです。特にバイク好きなわけではないですが、日本で見るとちょっと間が抜けて見えるいわゆるカスタムカーのバイカースタイルも、アメリカのだだっ広い大地には本当に良く似合ってカッコいい。更に星条旗を背中にあしらった革ジャンを着込んだキャプテン・アメリカことワイアットと長髪ヒッピースタイルのビリーは正に60年代後半のアメリカの若者のイメージそのままです。
2人が目指したのはニューオリンズで行われる謝肉祭でした。後にデニス・ホッパーが自分たちはバイク映画ではなくてウェスタン映画を撮ったつもりなんだと語っていますが、旅の始めに立ち寄った農夫の家ではビリーたちがバイクのパンクを修理し、農夫が馬の蹄鉄を修理するという象徴的な様子が描かれています。途中でヒッチハイクをしていたジーザス(アントニオ・メンドザ)というヒッピーの男を拾い、彼らのコミューンに立ち寄ります。よそ者の彼らが滞在するのを拒むメンバーたち。コレがどこぞの村であれば何も問題ないのですが、彼らはそもそも自由であるために一般社会を飛び出て、人里はなれた荒野にコミューンを築いたはず。しかし結局は人が集まるとそこには規範が出来上がる…。
皮肉ではあるけれど、それでもまだコミューンにいる連中は、想いとしてはワイアットやビリーと同種な人間たちです。物語が大きく動き出すのはここからで、自由を体現しているワイアットとビリーがアメリカ社会の保守的な部分から目の仇にされていく様子が描かれて行くようになるのでした。手始めに起こったのがラスベガスでの逮捕拘留です。別に何をしたわけでもなくパレードの後ろをバイクでゆっくりと付いていっただけなのですが…。留置場で出会ったのが弁護士のジョージ(ジャック・ニコルソン)。意気投合した3人は途中ジョージが有力者から紹介されたという娼館に経由で謝肉祭に向かうことになります。若い頃のジャックは今と違いすぎで、最初は全く気がつきませんでした…。
途中休憩に立ち寄ったカフェでは地元住民から敵意剥き出しにされます。店にいた若い女性たちは彼らのファッションやバイクに興味深々だったことからも解るように、よそ者だからと言うよりは、南部の保守的な世代にとってワイアットたちは存在自体が憎悪の対象であるかのようです。現代に生きる我々からはちょっとその心情は図りかねますが、しかし実際この後彼ら3人は野宿している所を住民に襲われ、しかもジョージは殺されてしまうのです。襲撃の直前にジョージとビリーの間で交される会話は本作の肝であり、個人的には最も印象深いシーンでした。それは直接的には住民たちの敵意の説明でもあり、また彼らがどうしてこんなにも社会からつまはじきにされるのかの説明でもあります。
ジョージ:「怖がっているのは、君が象徴しているものさ。」
ビリー :「長髪が目障りなだけだろ!」
ジョージ:「違う、彼らは君に“自由”を見ているのさ。」
ビリー :「“自由”のどこが悪いってんだい?」
ジョージ:「そう、どこも悪くない。でも“自由”を説く事と“自由”であることは別だ。金で動く者は自由になれない。」
「アメリカ人は自由を証明するためなら殺人も平気でする。個人の自由についてはいくらでも喋るが、本当に“自由”な奴を見るのは怖いんだ。」
ビリー :「怖がらせたら?」
ジョージ:「非常に危険だ。」
ジョージを失った悲しみを癒すかのごとく、3人で立ち寄るはずだった娼館で女2人を買い、街の教会でジーザスから貰ったLSDを飲む彼ら。ラリッている映像はまるで意味不明ながらも、何かを象徴するかのようなカットや映像の色使いは、彼らの心の苦しみ、鬱積した不満を具現化したように見えます。正直言って現代の、特に日本に生きる私にはその気持ちを実感することはできないですが、日本人でも例えば学生闘争の世代の人々などには、意識的に共通する部分があるかもしれません。娼館を後にしバイクを疾走させるワイアットとビリー、しかしトラックに乗った農夫が突然ビリーに向かって発砲します。怒って後を追ったワイアットも撃たれバイクは炎上…。
何が起こったのか訳が判らないというのが正直な所ですが、結局アメリカは彼ら自身の存在を拒絶したということなのか。アメリカン・ニューシネマらしいバッドエンドながら、このあまりの不条理さは理解不能が先にきて、何だかコーエン兄弟の作風を思い出してしまったのでした。
個人的おススメ度4.0
今日の一言:キャストがホントいいよなぁ…
総合評価:81点
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