ロック ～わんこの島～

フジテレビの朝の名物番組「めざましテレビ」内の人気コーナーで紹介されて反響を呼んだ実話をベースに、２０００年８月の三宅島大噴火によって離れ離れになった犬・ロックと家族の絆、そして避難住民の島に対する想いを綴った感動の物語だ。主演は『ROOKIES -卒業-』の佐藤隆太。共演に『インスタント沼』の麻生久美子、倍賞美津子、原田美枝子。監督はフジテレビの中江功が務める。
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なんだかラストの印象が悪いんですが…

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またしても犬を使った泣かせる物語なのかと思い少し観るのを躊躇していた作品。結論からいうと、その認識は微妙に違った。もちろん泣かせる部分はあって大いに涙したのだけれど。それにしても犬は本当に映画になり易い動物なんだとつくづく感心する。個人的には猫派なのだが、こちらは圧倒的に少ない上に大抵は人気がでない…。それはさて置き、三宅島の大噴火からはや１１年が過ぎた。あの大噴火の様子は今でもはっきり覚えているし、同僚にはあの三宅島に取材にはいった人間も沢山いたものだ。本作はその三宅島で民宿“たいよう”を営む野山一家とその飼い犬ロックの家族の絆をメインテーマで描くとともに、避難住民の島への想いも綴った物語である。

序盤は野山一家の１人息子・芯（土師野隆之介）が生まれたばかりのロックを育てる様子が描かれていると同時に、父・松男（佐藤隆太）の実直な人柄や母・貴子（麻生久美子）のサバサバした人柄、そして根っからの三宅島住人である祖母・房子（倍賞美津子）といった家族の紹介をするプロローグとしてのシークエンスとなっている。最初はその演技が例によって子役特有の演じている感を醸し出している土師野隆之介くんだったのだが、これが不思議と観て行く内に心惹かれ始めるから不思議だ。技術的にどうこうというより、彼のロックに対する想いがまるでダイレクトに観ている側の心に流れ込んでくるかのような演技なのだ。これは序盤の１人と１匹を描いた演出の上手さもあると思う。

三宅島ならではの大自然の中でロックを散歩させる芯、ここではリードなど必要なく、２人はいつだって一緒に寄り添っていた。散歩の途中に雨に降られ、岩場でずぶ濡れになりながら雨宿りをする２人の姿が印象的だ。家族の絆に限らず、その関係性の深さから観ている側がどれだけ幸せを感じ取れるか。幸せが大きければ大きいほど、別離の瞬間の悲しみも大きくなる。その意味でここで描かれた２人の絆の深さは本作のラストまでにあるいくつかの転機ごとに、その悲しみの大きさを際立たせてくれた。さて、最初は小学校の寮で暮らしていた芯だが、祖母の房子は芯が両親と住めるように自らはアパートをでて１人暮らしを始める。実は個人的にはこのエピソードが心に響いた。

実はロックの母犬ハルはずっと寝たきりで、避難の直前に死んでしまう。房子がハルに注ぐ愛情は芯がロックに注いだのに勝るとも劣らないもので、住民が島の学校の体育館に一時避難をする時も、房子はハルから離れようとしなかった。ハルは自分が生きていたら房子が島から避難しないことを解っていたのだと思う。そのハルの死と、若い家族のために自ら身を引く房子の姿が重なり寂寥感が胸を突き上げた。この後の意外にもロックは瀕死ではあったが保護される。しかしカットが変わるとあっという間に元気なロックがスクリーンを飛び跳ねていたのは少し拙速だろう。しかし暫くするとストレスで体調を崩したために獣医師・真希佐代子（原田美枝子）はロックを里親に出すように勧める。

別れ、再会、再度の別れ。芯の心情は思うに余りあるのだが、あまりに展開が早すぎてちょっとこちらの心が付いていかない部分もあった。そんなエピソードは他にもあり、松男たちが島に一時帰島タイミングで親友・喜一が心筋梗塞で死んでしまうという件もあまりに唐突過ぎて違和感だけが残ってしまった。１番釈然としなかったのが、４年後に島に帰ることになった際に、里親からロックを返してもらって帰るということだ。実はロックを里親に出すときに松男は帰島するときには返してもらう約束を取り付けていた。ただ、だからと言って４年間ロックの面倒を観てくれた老夫婦の気持ちはどうなるのか。その辺のフォローがないのはあんまりだ。変な話だが少し一家の印象が悪くなったぐらいである。

家族の絆、島との絆、確かに言いたいことは解るし、単なる犬を扱ったお涙頂戴の物語ではなかったのは好感が持てたのだが、丁寧に描かれていた前半に比べて終盤の拙速さに不満が残ってしまった。

個人的おススメ度3.0
今日の一言：ベテラン女優２人がいい味だしてます
総合評価：63点

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