東京人間喜劇
孤独感の見本市 |
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フランスの文豪バルザックと言われても名前ぐらいしか知らない。バルザックはその作品「人間喜劇」の中で、何人かの登場人物を章を跨いで登場させたという。その手法を取り入れた上で舞台が東京だから『東京人間喜劇』。従って単純に喜劇映画というワケではない。もっとも、『海炭市叙景』などでもこの手法は取り入れられているのだから、本作だけが際立ってそこに特徴があるというのは少し違う気はする。手法はともかく、3つのエピソードに描かれる登場人物たちの孤独感は、時に共感できるものもあれば、何故?とクビを傾げてしまうものもあり、様々な人間模様を興味深く見られるといったところだ。
『白猫』 |
出演:角舘玲奈 根本江理子 河村竜也 古舘寛治 福士史麻 大塚洋 兵藤公美 鄭亜美 村田牧子 畑中友仁 小河原康二 岩下徹(特別出演) 齋藤徹(特別出演)
旦那と別居中の女性とその彼氏、そして彼に捨てられた女性の3人がメインの登場人物。なんとも奇妙な雰囲気が漂う作品だった。一応女性二人が、ファンである役者のサインを求めて夜の街を駆け巡るというのが表向きの姿。それは2人の共通項であり、一つの目的に向けた共同作業に他ならない。ただ一見すると似た者同士の2人でありながら、方や男にフラれ、方や男に裏切られていることに気付いていないというのが皮肉であり面白い。しかも、この設定が第3章で活きてくることになるとは思いもしなかった。つまり、本作では第1章→第2章→第3章と進むと再びこの第1章に戻ってくるように計算されているのである。
『写真』 |
出演:荻野友里 木引優子 足立誠 根本江理子 島田曜蔵 鈴木智香子 井上三奈子 山本雅幸 石橋亜希子 端田新菜 高橋智子 たむらみずほ 宇田川千珠子 安倍健太郎 山本裕子 真山俊作(フリー) 立蔵葉子
第2章からはグッと解りやすくなってくる。メインとなる舞台は、第1章で別居中だった女性の旦那が営業している画廊。アマチュアカメラマンの女性が個展を開くものの、学生時代の同級生は誰一人として観に来ない。きっと来てくれるだろうという淡い期待と大きな失望、その上本物のプロカメラマンの自分の写真に向ける冷たい視線…。気持ちは良く伝わってくる。しかし個人的には、この程度で個展を開こうとする主人公の女性に共感など出来なかった。技術的な稚拙さは問題ではない。自らやるべきことをキチンとやっていない者が、失望する資格などない。あまつさえ友人の結婚パーティーに出かけてその幸せそうな姿に嫉妬するなど論外である。っとチョット不快にさせられた。
『右腕』 |
出演:山本雅幸 井上三奈子 志賀廣太郎 足立誠 根本江理子 古舘寛治 秋山建一 石橋亜希子 佐藤誠 大竹直 酒井和哉 村井まどか 天明留理子 山村崇子 小河原康二 (声)
第2章のアマチュアカメラマン女性の結婚した友達の旦那が主人公。彼は新婚早々事故に遭い右腕を切断するハメに。無い筈の右腕が痛む「幻肢症」に悩まされる男は、そのハンディキャップが故に仕事をクビになる。職場の同僚は同情するも、意味不明な集会に参加するように彼を誘ったりと、周りの誰も、そう妻さえも彼の気持ちを理解してあげていない孤独の闇は余りに深かった…。しかも話はそれだけでなく、実は彼の孤独感は事故に遭う前からのものであることが明らかになるのだが、これが余りに衝撃的事実で驚いた。言ってみればそれは事故そのものの原因でもあったのだ。彼の主治医を演じる志賀廣太郎の、ちょっととぼけたような芝居が地味に笑いを誘ってくれた。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:個性的な役者さんたちの演技がいい
総合評価:63点
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