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2011年8月24日 (水)

おじいさんと草原の小学校/The First Grader

Photo ケニア共和国独立から39年、やっと実施された無償教育制度で84歳の小学生が誕生した。キマニ・マルゲだ。ケニア独立のために戦ったマルゲが、とある目的のために様々な問題をクリアしながら一生懸命読み書きを学ぶ姿を描いた実話の映画化だ。監督は『ブーリン家の姉妹』のジャスティン・チャドウィック。主演をオリヴァー・リトンド、ナオミ・ハリスが務める。
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マルゲが学んだこと、マルゲに学んだこと

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改めて教育の大切さ、そして学びたいという情熱の大切さを教えられ、同時に、欧米列強による植民地政策という過去の過ちは、ここケニアだけでなく様々な場所で多くの人々を傷つけ、その傷跡は厳然と残っているのだと再認識させられた作品だった。ケニア独立から39年後、ようやく始まった政府による無償教育制度は、国民が等しく無料で教育を受けられる権利を有することを謳っている。小学校に集まる膨大な数の子供たち…もちろん全てを入学させることはできないのだが、そこに現れたのが84歳の老人キマニ・ナガンガ・マルゲだ。彼はとある目的のために読み書きを勉強したかったのだが、子供たちですら全員入学できないのに84歳の老人を入学できる訳がない。

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門前払いを食らうものの、マルゲは校長のジェーン(ナオミ・ハリス)に言われるままにノートと鉛筆を買い、制服をあつらえて毎日学校へと足を運ぶのだった。もちろん、彼の極貧生活からすれば、その出費がとても大きいのは察しが付く。しかも、悪い足を引きずり杖を突きながら何キロもの道のりを徒歩で通ってくるのだ。そもそも彼をそうまでして駆り立てるのはなんなのか…。どうやらマルゲの目的はとある手紙を読みたいことらしいことが序盤で解る。それも手紙のタイトルに「ケニア共和国大統領府」とあるのだから、何やら意味深だ。ただし、本作はこの手紙の中身が重要なのではない。実は手紙の中身は物語の途中でサラッと察しが付くように構成されている。

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重要なのはマルゲの存在そのものなのだ。入学を許されたマルゲは、皮肉にも政府のお偉いさんからケニア教育制度の象徴であるかのごとく扱われるのだが、それはあくまで彼の一側面でしかない。彼はもともとマウマウ団と呼ばれる、イギリスからの独立を目指して戦う組織の戦士だった。先祖から受け継いだ土地をイギリス人に奪われた彼は、独立の闘いの中で妻子をイギリス人に殺される。そして自らも収容所に入れられ拷問を受け、足が不自由になるのだ。彼にしてみれば、自分の人生の全てを投げ打って手に入れたのが祖国の独立なのである。ところが、マルゲが小学校に入学するにあたって、それを快く思わない人間(それは教育委員会の人間だったり、他の子供の父親だったり)がいた。

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そこには単にマルゲが老人だからというだけでなく、彼の部族がイギリスに対して好戦的だったことを好ましく思っていない感情が根底にある。それをジェーンは部族主義と呼んでいたが、良い悪いではなく厳然と残るその考え方はマルゲ個人の問題ではなくケニア全体の問題だろう。つまり彼はケニア教育制度の象徴というよりは、独立したケニアそのものの象徴ではないだろうか。ジェーンは一度はマルゲを小学校から退学させるものの、自らの助手という形で再び呼び戻す。子供たちとともに勉強を学び、しかし子供たちに自らが独立で勝ち取ったもの“自由”の価値を語るマルゲ。学校では勉強だけでなく、先達が子供たちに連綿と伝えてゆかなくてはならないことがあるのは明白だ。

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その意味でマルゲはとても良い生徒であり、良い先生でもあった。しかし、やがてマルゲ自身を攻撃していた勢力は、その矛先をジェーンに向ける。彼女を無理やり別の学校へと異動させてしまうのだ。それに対してマルゲは大胆な行動に出る。それは流石は独立の戦士というべきものだった。そして彼に自由の意味を伝えられた子供たちは新任の校長をボイコットするという行動に出る。理不尽な行為に対して言いなりにならず、自らの行動で勝ち取るスタンスは、理屈で言えば必ずしもほめられたものではないのかもしれないが、それでもやはり感動を覚えずにはいられない。マルゲはこの後90歳で亡くなるまでに国連で初等教育無料化の演説したりしている。言ってみれば彼の独立のための闘いはずっと続いていたということなのかもしれない。

個人的おススメ度:4.0
今日の一言:そう、無償であっても内容も重要だよね
総合評価:78点

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» おじいさんと草原の小学校 [象のロケット]
独立後39年を経た2003年、東アフリカ・ケニア。 政府が無償教育制度をスタートさせたというニュースを聞いた84歳の老人マルゲは、入学を希望して地元の小学校を訪れるが門前払いされてしまう。 毎日やって来る熱心さに負けて校長のジェーンはついに入学を許可するが、父兄をはじめ周囲は大反対。 学校にはマスコミが押し掛け、ジェーンも窮地に立たされるのだが…。 実話に基づくヒューマン・ドラマ。... [続きを読む]

受信: 2011年8月24日 (水) 20時50分

» 「おじいさんと草原の小学校」 [ヨーロッパ映画を観よう!]
「The First Grader」 2010 UK/USA/ケニア ジェーン・オビンチェに「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマン・チェスト/2006」「マイアミ・バイス/2006」「フェイク シティ ある男のルール/2008」のナオミ・ハリス。 キマニ・ナンガ・マルゲにオリヴァー・リトンド。 チャールズ・オビンチェに「ホテル・ルワンダ/2004」「インビクタス/負けざる者たち/2009」のトニー・キゴロギ。 監督は「ブーリン家の姉妹/2008」のジャスティン・チャドウィック。 ... [続きを読む]

受信: 2011年8月24日 (水) 23時35分

» *『おじいさんと草原の小学校』* ※ネタバレ有 [〜青いそよ風が吹く街角〜]
2010年:イギリス映画、ジャスティン・チャドウィック監督、ナオミ・ハリス、オリヴァー・リトンド、トニー・キゴロギ、アルフレッド・ムニュア、ショキ・モガパ出演。 [続きを読む]

受信: 2011年8月25日 (木) 21時49分

» 【映画】おじいさんと草原の小学校 [DJAIKO62京都通への道]
管理人より→ご一読ください。 先日FM横浜Re:wind内アイコバナシで取り上げ [続きを読む]

受信: 2011年8月27日 (土) 01時34分

» 2011年7月22日 『おじいさんと草原の小学校』 東商ホール [気ままな映画生活]
今日は、『おじいさんと草原の小学校』 を試写会で鑑賞です。 素晴らしい作品でした 【ストーリー】  イギリスの植民地支配から独立して39年後の2003年、ケニア政府は無償教育制度を導入。何百人もの子どもたちであふれる小学校を、それまで教育を受ける機会がなかった84歳の老人マルゲ(オリヴァー・リトンド)が訪れる。文字を読みたい一心で、何度も門前払いされてもあきらめない彼の熱意に動かされた校長ジェーン(ナオミ・ハリス)は、周囲の反対を押し切ってマルゲの入学を認めるが……。 私には知らないことが多... [続きを読む]

受信: 2011年8月28日 (日) 00時00分

» 『おじいさんと草原の小学校』 The First Grader [かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY ]
教えて、おじいさんー 84歳で小学校に通うことになった“世界最年長の小学生” ケニアのキマニ・マルゲの物語。2003年にケニア政府は無償教育制度をスタート。私がケニアに旅行した90年代にはまだそれは行われていなかったのだな。サバンナの野生動物を見るための観光旅行とはいえ、当時のその国の子どもたちはまだ小学校教育を当然のものとして受ける機会をもっていなかったことすら、おそらく自分は気にも留めていなかったことを少し恥じたりもした。そんな思いもあったから、スクリーンの中で大地の子どもたちが、元気いっ... [続きを読む]

受信: 2011年8月31日 (水) 07時56分

» 【映画】おじいさんと草原の小学校 [★紅茶屋ロンド★]
<おじいさんと草原の小学校 を観て来ました> 原題:The First Grader 制作:2010年イギリス テレビで少し取り上げられていて、内容を知りました。 興味はあったんだけど、名画座でやっていて、一人でいくのはちょっとなぁ~って思っていたら、友達から誘われたので喜んでホイホイついていった(笑)。 ホイホイついて行ってよかったーー(笑) イギリスの植民地から独立して39年後の2003年。 ケニア政府は無償教育制度を導入した。田舎の小学校には電気も水道もないが、多くの子供たちが... [続きを読む]

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» おじいさんと草原の小学校 [迷宮映画館]
これは力作!こういう話、やっぱ好きだわ。 [続きを読む]

受信: 2011年10月25日 (火) 20時44分

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地元でようやく公開。「84歳の小学生」という実話をもとに映画化したもの。最初劇場でチラシやポスターを見た時、主演が”モーガン・フリーマン”だと思い込み、即座に「観るリスト」に加えたのだが、良く良くみた... [続きを読む]

受信: 2011年11月24日 (木) 22時36分

» 『おじいさんと草原の小学校』 [シネマな時間に考察を。]
生きることは、学ぶということ。 マルゲは言う。 私はまだ死んでいない、と。 『おじいさんと草原の小学校』 2010年/イギリス/103min 監督:ジャスティン・チャドウィック 出演:ナオミ・ハリス、オリヴァー・リトンド わが国において小学校は義務教育である。... [続きを読む]

受信: 2012年2月 1日 (水) 12時15分

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