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2011年8月15日 (月)

一枚のハガキ

Photo 日本映画界最高齢の新藤兼人監督が自ら「最後の作品」と言う映画だ。終戦間際に召集された100人の兵士で生き残った6人の内の1人がなくなった戦友の家を訪ねるも、戦友の妻を残して家族は崩壊していた…。主演は『必死剣 鳥刺し』の豊川悦司と『オカンの嫁入り』の大竹しのぶ。共演に六平直政、大杉漣、柄本明、倍賞美津子といった実力派俳優が務めている。
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娯楽の中に込められた反戦意識

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戦争末期に召集された100人の中年兵たち。森川定造(六平直政)は仲間の松山啓太(豊川悦司)に妻からの手紙を見せ、自分が死んだらこの手紙は確かに届いたと妻に伝えて欲しいと頼むのだった。というのもくじ引きの結果定造はフィリピンへの赴任が決まり、恐らく生きては変えれないであろうことが解っていたからだ…。こんなシーンから始まった本作の前半は友子の一家が崩壊していく様子が描かれていた。定造の戦死、そして家族を守るために定造の弟・三平(大地泰仁)と再婚する友子(大竹しのぶ)、更に三平の戦死、ショックを受けた父・勇吉(柄本明)の病死と母・チヨ(倍賞美津子)の自殺……坂を転がり落ちるが如く友子が独りぼっちになってゆく。

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正直言って、定造や三平の出征や戦死して戻って来るシーンがやけにコミカルに表現されていたり、役者の演技がやけに芝居がかっていたりと、前半はカット割りも含めどうも古典的な演出に馴染めずにいることが多かった。しかし新藤監督は御年99歳だ。その方が作る作品に古き良き映画のテイストを感じたとしても無理のないことであり、むしろ今では貴重となったその演出こそ楽しんだ方が良いのだと切り替えてからは、娯楽としての映画の面白さの中に込められた監督の強烈な反戦の意思が伝わって来て話にのめり込んでいく自分がいた。そもそも出演している俳優は、主演の豊川悦司や大竹しのぶをはじめ日本映画界のトップクラスの俳優たちなのだ、普通に考えて惹きこまれない筈がないのだ。

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友子が独りぼっちになったところで啓太が復員するシーンに。啓太の方は啓太の方で見事に家庭崩壊の図があった。家に残して来た妻・美江(川上麻衣子)があろうことか自分の父親と出来てしまい、戦死したとばかり思っていた啓太が戻ってくるということで慌てて家を出て行ったというのだ。ホンマかいな?と思わなくもないが、そもそもこの作品は新藤監督の実体験に基づいての話だというのだから、戦争末期から戦後の時期にはまるで小説のようなお話が本当にあったのだ。美江に対して「親父を捨てたら殺す!」と啖呵を切ってくる辺りに現代とは違う、父の幸せがそこにあるなら子としてはそれを優先させるという家族のあり方をみたような気がする。

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そんな啓太が戦争中の荷物の中に定造から託された一枚のハガキを発見したのは、それから数年立ってからの事だ。遅まきながら友子を訪ねる啓太。ここから先は途中に村の世話役で友子に惚れている・吉五郎(大杉漣)とケンカをするシーン以外は、完全に2人芝居となる。これが実に素晴らしい。初対面から夕食をご馳走し、最終的に2人は結婚することになるのだが、その接近してゆく距離感が絶妙なのである。くじ運だけで生き延びてしまい自己嫌悪に陥っている啓太、そのくじ運を羨みつつドコにももって行きようのない苛立ちを啓太に当てる友子、定造の浴衣を着せられて怒る啓太、自分のために吉五郎とケンカしてくれたことに喜ぶ友子―。

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相変わらず大仰な演出が目立つものの、それは戦争に翻弄された田舎の人々哀しい悲しい喜劇に見えなくもない。そしてそうであっても彼らの目にはそれでも生きてゆく人間の力強さが宿っていたように見えた。友子の家が燃え落ちるシーンは、まるで戦時中を思い出させるものであり、逆に言えばこれでようやく友子の戦争は終わったのかもしれない。若松監督は『キャタピラー』で戦争に綺麗な戦争などない、銃後の戦争だってあるのだということを描いたが、本作もまた新藤監督の手による銃後の戦争を描いた作品だった。何もかも失ったが、新しい伴侶を得た2人が黄金色の麦の穂の向こうで飯を食う姿は、この先続く日本の復興をイメージさせる印象的なラストシーンだと思う。

個人的おススメ度3.5
今日の一言:川上麻衣子はマイアイドルだったんだけど…
総合評価:73点

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