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2011年8月10日 (水)

ヒマラヤ 運命の山/Nanga Parbat

Photo 1970年6月にヒマラヤ山脈のナンガ・パルバート(標高8,125m)のルパール壁初登頂に思考したメスナー兄弟の実話を映画化。この登頂では弟ギュンターが命を落としたが、実際に山で何があったのか。兄ラインホルト本人の協力で今真相が明らかになる。主演はフロリアン・シュテッター、共演にアンドレアス・トビアス、『ヒトラーの贋札』のカール・マルコヴィクス。監督はヨゼフ・フィルスマイヤーが務める。
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実話ならではの説得力が強烈

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ドイツの山岳映画、さらに兄弟での登攀といえば思い出されるのは昨年公開された『アイガー北壁』だ。1936年にナチスがドイツ国家の優位性を世界に誇示するためにアイガー北壁のドイツ人初登頂挑戦を描いた物語だったが、本作はそれから34年後の話である。実話を描いた作品だけあって、オープニングシーンで既に弟のギュンター(アンドレアス・トビアス)が死んでいることは明らかにされていた。というより、弟の死の責任を負わされ、尚且つナンガ・パルバート初登頂の栄誉すら奪われた兄ラインホルト(フロリアン・シュテッター)が記者たちを前にして自分を非難するカール博士(マール・マルコヴィス)を批判し、実際に山で何があったのかを語ったのが本作なのだ。

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子供の頃から壁をよじ登ったり、果ては教会の祭壇を見てもどう登るかばかりを考えていたこの兄弟たちは将来ナンガ・パルバート登攀を夢見て成長するのだった。2人が長じたある日のこと、ラインホルトがそのナンガ・パルバート遠征隊のメンバーに選ばれる。彼を呼び寄せたのはナンガ・パルバートで兄を失い、その弔いのために過去6度もの遠征隊を送り込むも、遠征隊としては一度も成功したことがないカール博士であった。思えばこの時点でギュンターが選ばれなかったことが後々の彼の運命の分岐点だったのかもしれない。結果的に兄の推薦で選ばれるものの、登頂にかける想いの大きさは兄に勝るとも劣らないというところが彼を悲劇へと誘うことになるからだ。

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『アイガー北壁』を観た時にも感じたのだが、人の強い欲望・競争心はその人間の行動力の源となると同時に、時として的確な判断を誤らせることもある。そして小さなミスの積み重ねが、引き返すことの出来ない奈落の底へと彼らを落とし込むのである。天候不順の際はラインホルトが単独登頂することに決まっていたが、ギュンターは自らも登頂したいという欲望を抑えられなかった。但しそれ自体は一つのミスでしかない。問題はそれ以前だ。メスナー兄弟の過剰ともいえる自信はカール博士のプライドを傷つけ、そこから生まれた不信感が兄弟をバラバラのチームとして扱う事態を招き、同時に登頂に際しての天候を知らせる信号弾のミスを誘発する。

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一つ一つの問題は解決可能だが、それを放置することによる負の連鎖が結果としてギュンターを死に追いやることとなったのだ。その登頂が難関であればあるほど山の神は登山家たちにパーフェクトを求めるのだと思う。一応メスナー兄弟は登頂自体は成功したのだが、そもそも何の装備も持たずに登頂することなど無謀以外の何ものでもなく、しかもギュンター本人が下山のためのザイルの固定を放棄して登頂してしまった以上、この時点で普通に考えたらジ・エンドだ。正直言って登山自体にはまったく魅力を感じない筆者としては、この自殺行為の結果に同情する気にはなれなかった。従ってラインホルトの弟を思う気持ちに感動することなど全くない。むしろ自業自得だと思う。

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ラインホルトがボロボロの状態で山を下り、地元住民に助けられ偶然にも引き上げる遠征隊と出会うというシークエンスはやけに長く退屈なくだりだったが、実際に本人が協力して作られているということで、できるだけ実際にあった通りに近づけたかったのだろう。言ってみれば再現映像であり記録映像だということだ。驚くことに彼はこの後も登山を続け、8年後にはナンガ・パルバート2度目の登攀、しかも今度は単独での登攀に成功する。『127時間』ではないが、山に魅せられた、冒険に魅せられた人々と言うのは、どれほどの困難を体験したとしても必ずそこに戻ってゆくものなのだろうか。この気持ちばかりは筆者には永遠に理解できそうにない。

個人的おススメ度3.5
今日の一言:それでもやっぱり登山はいいや…
総合評価:73点

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