サヴァイヴィング ライフ -夢は第二の人生-
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観たまま楽しんだ方が無難だと思う… |
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ヤン・シュヴァンクマイエル初体験。何ともユニーク、何ともシュールだ。こういうのが好きな人は堪らなく好きなのだろうと思う。ひたすら個性的な作品なので確実に好き嫌いは分かれるとは思うが。冒頭いきなり監督ご本人登場。予算不足で尺が足りないから仕方なく自分で喋ることにしただの、コメディ映画だけどあんまり面白くないだのと語り始めたのが可笑しかった。もっとも監督の言うことは本当で、確かにコメディではあったが、いわゆる大笑いするようなタイプの作品ではない。そもそも本作は実写映像と写真によるカットアウトアニメーションを組み合わせた独特の映像手法で作られているが、アニメーションにすると尺が短くなるというのだから何をかいわんやである(笑)


監督は舞台挨拶の席上で自らの妄想や執着について語っているが、それにしてもこの方の頭の中にはこんな映像が渦巻いているのかと思うと呆れるやら笑えるやらだ。ブルドッグが頭の人間だったり、ニワトリの頭で下半身が裸の女性だったり、アパートから手だけがニョキニョキ出てきたり、とにかく奇想天外な映像表現が目の前に繰り広げられる。主人公エフジェン(ヴァーツラフ・ヘルシュス)は冴えないサラリーマンだが、ある日夢の中で出会ったエフジェニエ(クラーラ・イソヴァー)という若い女性に恋してしまう。彼女の事が気になる彼は精神分析の専門家であるホルボヴァー医師(ダニエラ・バケロヴァー)を訪ね彼女のカウンセリングを受けるのだった。


このカウンセリングのシーンもシュールで面白い。壁にかかっているのはフロイトとユングの肖像写真なのだが、ホルボヴァー医師が的確なことを言うと拍手をしたりするのだが、先に進むとどうやらフロイトとユングの意見が対立しケンカをしたりし始めるという何ともバカバカしい映像が繰り広げられるのだ。やがてエフジェンは夢を操る方法を習得し、エフジェニエと付き合いながらなんと夢の中で子供まで作ってしまう。こののめり込み方が尋常ではないのだが、考えてみれば夢の中で自らの妄想を実現させるというのは人間にとってはそう珍しいことではない。というより誰しも一度は望むはずだ。しかし夢をコントロールなど出来ないから、夢が夢であり続けられるのである。


ではエフジェンのように自由に操れてしまうとどうなるか。当然夢に入り浸りになる。やがて彼の妄想は現実世界を蝕み始めるのだった。即ち仕事にも行かず、余りにおかしな生活態度から妻には浮気を疑われることになる。観ているほうにもそれと気付かせない間に夢と現実の境目があやふやになっていたのには少々驚かされた。例えばエフジェンは夢の中で宝くじに当たり大金を手にするのだが、夢の中の紙幣を現実の世界で買い取らせ、それをボーナスだといって妻に渡したりするのだ。さて、話が進み一枚の写真をきっかけとして夢の中の女性とその息子の存在の秘密が明かされてゆく。もっともこの手の種明かしは知ってしまえば何と言うこともないものではあるのだが。


サブタイトルにあるように、エフジェンの夢は彼の第二の人生ではあるものの、その終着点が第一の人生に繋がっていた。ということは夢は第一の人生なのだろうか。はたまた人間の人生そのものが夢のようなものなのか…。そもそも監督自らが妄想だと言っているのだから、人の妄想を論理的に理解しようとすること自体無理な相談というものだ。本作はスクリーン一杯に繰り広げられる奇怪で、ユニークな映像を見たままに楽しんだ方がよいと思う。もちろん哲学的な思考が得意な方はそうした見方もありだ。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:うーんシュールとしか言いようが無い
総合評価:64点
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