極道めし
麿赤兒さん味がありすぎます! |
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娯楽が圧倒的に少ない刑務所の受刑者にとって三度の食事は何よりも楽しみ。その昔、映画化もされた安部譲二の「塀の中の懲りない面々」を読んで刑務所のお食事事情に感心した記憶があるが、今回はそんな受刑者たちが年に一度楽しみにしている正月のおせち料理争奪戦を繰り広げる。といっても物騒な手段ではなく、過去に食べた1番旨いと思った“めし”の想い出トークバトルだ。ただこれは受刑者全般の話ではなく、あくまでもとある刑務所の204房に伝わる伝統行事。(といっても二度目だが…)トークバトルのルールは簡単で、聴いている人間が「ゴクリ」と喉を鳴らしたら1点、4点満点で争う。物語はその204房にチンピラの栗原健太(永岡佑)が入ってきたところから始まった。


4人いる同房者は個性的ではあるのだが、正直言って勝村政信と麿赤兒以外はちと俳優としての存在感が弱いと思う。なんと言っても八戸役の麿赤兒はもうあの風貌が堂々たる威圧感を放っていて、しかし何気にコミカルというのが実にイイ。本当は大泥棒なのだが、何故か勝手にヤクザの大物と勘違いされているのだった。南役の勝村政信は的屋らしくやたらと仕切りたがるのだけれど、上に弱く下に強いキャラクターで5人の中のポジショニングが絶妙だ。後はホストの相田(落合モトキ)と元力士の覆面レスラーのチャンコ(ぎたろー)という2人なのだけれど、キャラクター設定としての面白さはあるのだが、演じている俳優の顔が見えてこない。簡単に言えば観終わって全く記憶に残らない。


この5人が順々に“めし”トークをして行くのだが、本作はその内容が各人の人生ドラマの一編になっていて、八戸以外の4人に関しては何故塀の向こうに落ちることになったのかという話も兼ねているところがミソ。ただ思うにその人生ドラマを見せたいのか、“めし”を見せたいのかが今一つ中途半端に感じた。一言で言うと、登場してくる“めし”がそんなに旨そうじゃないのだ。堺雅人主演の『南極料理人』で登場するアツアツのおにぎりと、ラーメンは堪らなく旨そうだった。とにかく観ている最中から食いたくて食いたくて仕方なくなったものだが、この作品ではそこまでのモノがない。強いて言うなら相田が紹介した黄金めしか、栗原の彼女のラーメン位だろうか。


他の3人の紹介するサザエのつぼ焼きやイカ焼き、特製オムライスにおっぱいプリン、すき焼きといった“めし”もそれそのものは旨そうではある。ただ見せ方としてそれらの“めし”に人生ドラマという調味料を加えようとしているのだが、その表現が今一つよろしくないのだ。コミカルであるのは構わないし、実際刑務所での様子がコミカルに描かれているのは面白い。しかしその人生ドラマにまでそれを持ち込むのはやり過ぎに思う。コミカルである部分とシリアスである部分の落差があるからこそ、そのドラマに込められた話し手の想いが強く伝わり“めし”の調味料になるのではないだろうか。何だかふざけたような人生話の中に登場する“めし”などその程度でしかないと思う。


もちろんおふざけ調の人生話もそれだけ取れば面白いし、観ていて楽しむことは出来る。しかしこちらは『極道めし』というタイトルである以上、やはり飛びっきり旨そうな“めし”を期待してしまう。残念ながら“めし”話はイマイチだったが、それ以外の部分の面白さは中々のもので、個人的には一生懸命話しているのに麿赤兒が素っ頓狂な声で「2点♪」なんて発表したりする姿は可笑しくて仕方がなかった。原作は未読なのでどんな話なのかは解らない。しかし栗原出所後の後日端など観る限りでは、やはり本作は“めし”に絡めた彼の人生ドラマと捉えた方が良いのかもしれない。設定的にも栗原が主人公であって、少なくとも“めし”が主人公ではないから。
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個人的おススメ度3.0
今日の一言:黒はんぺん最高!!
総合評価:63点
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