はやぶさ／HAYABUSA

２００３年に打上げに成功し、小惑星イトカワからのサンプル採取に成功した小惑星探査機「はやぶさ」の７年にも渡る挑戦の軌跡を描いた感動のドラマだ。主演は『僕と妻の１７７８の物語』の竹内結子。共演に西田敏行、高嶋政宏、佐野史郎、山本耕史、鶴見辰吾といった実力派が揃う。監督は『２０世紀少年』シリーズの堤幸彦。いくつもの困難を知恵と工夫で乗り切った世界初の偉業を称えたい。
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「はやぶさ」入門にうってつけ

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この作品から始まる小惑星探査機「はやぶさ」をテーマにした３つの映画。初っ端は２０世紀ＦＯＸからだ。ちなみに２０１２年２月１１日には東映から『はやぶさ　遥かなる帰還』、更に３月１０日には松竹から『おかえり、はやぶさ』の公開が予定されている。実のところ「はやぶさ」が戻ってきて、それが人類史上初めて月外の天体からサンプルを持ち帰る偉業なのだとニュース報道されるまでは、打ち上げられていたことすら知らなかった。いや、もっと正確に言うならばそれを聞いてなお「そりゃ凄いね。」程度にしか考えていなかった。しかし本作を観て、この偉業が実に多くの人々の英知が結集された結果であることを知り、自らの不明を恥じると共に、日本人として素直に嬉しく感じた。

物語はこのプロジェクトの広報を務めた的場泰弘（西田敏行）の下で働く水沢恵（竹内結子）を中心に描かれてゆく。と言っても彼女はあくまでも物語全体の進行役だ。ちなみに「はやぶさ」を擬人化した形でナレーションがのるのだが、それも竹内結子が務めている。この擬人化という手法は実はこの映画よりも先にネット上でFlash動画であったり、画像だったりで様々なものが存在しているようで、どれも中々良くできている。物語は打上げから帰還までの７年間を描いているのだが、ややもすると専門用語が出てきたり、トラぶったときに彼らが一体何をしようとしているのかが解らなかったりすることもあるが、結果的に観ていれば解るように作られているので安心だ。

最初は「はやぶさ」製作段階での苦労が描かれるのだが、単に作ってロケットに乗せれば良い訳ではない。重量は恐ろしく厳密に決まっていて、例えば鶴見辰吾演じる喜多修が担当するイオンジェットエンジンの高々数ミリのパーツ一つを付けるか付けないかで言い争いになったりするぐらいなのだ。もっともこの伏線を後で活かしてくるのが映画的な脚色としては上手いところだと思った。打ち上げてから小惑星イトカワに辿り着くまでは順調なのだが、いよいよサンプル採取の段階、即ち着陸の段階でまず最初のトラブルが出る。なにしろ「はやぶさ」は太陽までの距離の倍というとんでもない遠距離にいるのを地球から操作しようというのだからこれは非常にデリケートなことが良く解る。

具体的には地球に届いた「はやぶさ」のデータは１７分前のものなのだそうだ。最初の着陸に失敗し、２度目の着陸を決行。無事成功するも、燃料漏れが発生し姿勢制御が出来なくなる。７週間後に奇跡的に通信が回復するが、今度はイオンエンジンが故障したりと「はやぶさ」は次第に満身創痍になってゆく。この間のスタッフたちの必死の努力の様子には素直に頭が下がる思いだ。親切だなと思ったのは、水沢恵の存在。彼女は広報官として、子供たちにも解り易いようにその時々の「はやぶさ」の姿を擬人化してイラストし、それがスクリーンに映し出される。要するに本作を観に来ている子供たちに向けても自然に解り易い解説になっていると言うワケなのだ。

７年６０億ｋｍという気の遠くなるような旅を終えて「はやぶさ」は地球に帰還し、サンプル入りのカプセルを分離投下すると、本体は大気圏で燃え尽きる。機械を擬人化して感動するなどバカバカしいと言うなかれ。劇中プロジェクトリーターの川渕幸一（佐野史郎）が「はやぶさくんに故郷を見せてあげようか」というセリフを聞いて涙腺決壊だった。７年間の過程を観てきたら、たとえ映画のみの体験だったとしても万感胸に迫る想いがあるはずなのだ。プロジェクトを通してスタッフは決して諦めない強い心のありようを見せてくれた。そしてその心に触れた水沢恵が、諦めずに博士号を取得するサイドストーリーは、より身近な存在として私たちの心に響くだろう。

ただ一点だけ。堤幸彦監督お得意の遊びだと思うが、生瀬勝久扮する関西弁の「はやぶさ」ファンは確かに面白いのだけれど必要なのだろうか。

個人的おススメ度3.5
今日の一言：随時入る実写映像が臨場感を増します
総合評価：73点

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