がんばっぺ フラガール! ~フクシマに生きる。彼女たちのいま~
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今も昔も彼女たちは笑顔と元気をくれる |
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初日の新宿バルト9、15時30分上映。しかし観客席の埋まり具合は3割程度と言ったところか。私はきっと満員になると思い、前日にネット予約までしたのだが。脱原発の映画は満員御礼で行列が出来るのにどうしてこうなってしまうのだろう。結局我が身に降りかかる放射能汚染に関しては気になる人は多くても、東日本大震災に関しては既に過去の出来事になっているということなのか。2006年に蒼井優の主演で公開され大ヒットした『フラガール』。舞台となっていた常磐ハワイアンセンター、現スパリゾートハワイアンズも今回の大震災で甚大な被害を受け営業停止を余儀なくされていた。当然フラガールの面々も被災し、ダンスどころではない状態だ。


本作はスパリゾートハワイアンズが今年の10月1日の部分オープンに漕ぎ着けるまでに密着したドキュメンタリーフィルムだ。と言っても密着した対象は施設そのものではなく人間だ。フラガールの面々はもとより、ファイヤーダンサー、ホテルのスタッフ、そのホテルを避難所にしていた被災者の皆さん、さらにはフラダンサーの家族と、彼の地で生き、復興のために必死で立ち上がろうとする人々の姿をカメラに納めた貴重な作品だった。そもそも常磐ハワイアンセンターが出来たきっかけは、国のエネルギー政策が石炭から石油に切り替わった際に、この地の人々が何とか行き抜くために知恵を絞った結果である。この辺は『フラガール』を観てもらえるとよく解る。


しかし、今また再び国のエネルギー政策の犠牲になっているのは皮肉としか言いようがない。46年前も現在も、フラガールたちは人々に笑顔を届け、いわきを活性化するために存在しているのだ。いや、今の方が震災の影響で彼女たちの役割はより大きなものとなっていると言っても良い。だが震災後久々に会ってレッスンするも、最初はやはり表情が硬かったとカレイナニ早川先生は言う。当然だ、彼女たちとて被災者なのだから。カメラはフラガールのサブリーダー大森梨絵さんに密着する。彼女は福島県双葉町出身で、福島第一原発から僅か2キロの地に実家があった。一時帰宅で防護服に身を包み帰宅するのだが、瓦礫の除去も全く出来ていない町は、正しく時間が止まったままだった。


無事保護された愛犬チョコを毎日散歩させるためにボランティア施設に向かう彼女が言う「当たり前ってなんだろうなぁって…」の言葉に心が痛かった。しかし、そんな彼女が一度舞台に立てば素晴らしく素敵な笑顔とダンスで人々を魅了する。その様子を観ていて思い出したのは、以前サッカー日本代表の元監督・岡田武史さんが言っていた言葉だ。彼は被災地で子供たちとサッカーをする理由をこう言っていた。「子供たちが心から笑顔になれば、大人たちはその姿を観て笑顔になれるんです」と。見よう見真似で一生懸命踊る女の子の姿は心が和むのだが、しかし彼女たちのダンスを見た人々は子供だけでなく大人も一様にみな笑顔を浮かべていたのが印象的だった。


フラダンサーの影に隠れているが、消防法の関係で踊れないファイヤーダンサーたちの姿にも勇気付けられる。いつ踊れるのかの目処もないが、いつか来るその日のために体を鍛え、日焼けをし、練習を続け、フラガールたちのキャラバンではスタッフの1人として一生懸命手伝っているのだ。ホテルの支配人、コックさん、フロント係、皆フクシマで必死に生きようと頑張っている。10月1日の部分オープンの日の人々の表情を見た時、ここが単なるレジャー施設ではなく、彼女たちが単なるショーダンサーではないのだということがハッキリとわかった。ありていに言えばいわきの、福島県の、東北の復興の象徴なのだ。ただもちろんこの日は復興への第一歩に過ぎない。


福島第一原発の事故は収束したわけではないし、先日の報道では廃炉までに30年以上の見通しとの記事も出ていた。ここから先も困難な道はまだまだ続くのである。人によっては子供たちや若い人間はあの地域に生活すべきではないという人もいる。国が主導で無理矢理にでも非難させるべきだという人も少なくない。しかし、現実的にも気持ち的にも故郷で必死に生き、そこを復興させようと頑張っている人の姿がこの映画にはあった。実際に被災していない、そして放射能汚染の少ない地域に生きる私は彼女たちに対して簡単に避難すべきだとは口には出来ない。ならばそこに生きることを前提に何をすべきなのかを考えなければならない。まずはスパリゾートハワイアンズに行って彼女たちの舞台が見てみたい。
個人的おススメ度5.0
今日の一言:100万回の「I love you」に聞き入った
総合評価:93点
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