幸せパズル/Rompecabezas
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| やっと見つけた幸せの1ピース |
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昨年10月の『ルイーサ』以来約1年ぶりのアルゼンチン映画だ。そんなに本数を観ている訳ではないが、かの国の作品は派手さには欠けるものの、とてもクオリティが高い印象がある。今回の作品も少し変わった視点からとある主婦を見つめたハートフルで素敵なドラマだった。主人公のマリア・デル・カルメン(マリア・オネット)は夫フアン(ガブリエル・ゴイティ)と長男イバン(フリアン・ドレゲール)、次男フアン・パブロ(フェリペ・ピリャヌバエ)の4人家族。特に家族中に問題がある訳ではなく、夫はマリアをこよなく愛しているし、2人の息子たちも母親思いで立派に成長していた。冒頭、自分の誕生パーティーだというのに、食事を作り、ケーキを運び、皿を洗いとかいがいしく働く彼女。

つまみを欲しがる息子だったり、給仕の手伝いを一切しない夫を見ていると、正直マリア本人の誕生パーティーなのに…と思わなくもない。もっとも海外でどう見られているのかわ知らないが、我々の親の世代は大抵こんなものが一般的だったと思う。第一本人もそれがおかしなことだとは思っていない。ただ彼女の50歳と言う年齢は、一生懸命働き子どもを育て、ようやくふと一段落が着くタイミングなのだろう、自分を顧みた時にこれで良いのかと思う気持ちを抱くのも無理からぬことだ。ところが、その誕生日で彼女に送られたジグソーパズルが彼女の生活を一変させるのだった。しかしフアンは「時間の無駄だ」とニベもない。もちろん彼女がそこまで入れ込んでいるとは思っていないのだが。

この辺、その気はなくとも知らず知らずの内に妻を傷つける言葉を吐いていることはあるものだと自戒の念がこみ上げてきたりもした。フアンに内緒でパズルを買いに行った店で、彼女はパズル大会のパートナー募集の広告を目にする。その広告主が大富豪のロベルト(アルトゥーロ・ゴッツ)だった。かくして彼女は家族には膝の手術をした叔母の看病のためと偽り、週2回、ロベルトの家でパズルの練習を始めるのである。私も含めてだが普通パズルといえば周りの枠を作って内側へとはめ込んでゆくのが一般的だ。しかし彼女のやり方はいきなりど真ん中から始めるというものだった。少し解りにくいのが、それでも人並み以上に速く組める彼女の非凡な才能を映像として表現しにくいところだろう。

誰かと比べた映像や、実際に係った時間の比較といった、具体的で目に見える映像が出てこないため、ロベルトが彼女をパートナーとして評価したことに関してもいま一つ説得力が出てこないのだ。さて、いずれにしても家族に嘘をついて、しかも独身男性の自宅に2人きりでとなると、いつそれがばれてあらぬ勘繰りを受けるのかが不安になってくる。しかも大会が近づくにつれて、彼女は家事の方もおろそかになってくるのだ。息子が独立するために借りた家を見に行かなかったり、フアンの食事療法のためのチーズを買い忘れたりと、要するに完全に家族の方を見なくなってゆくのである。これにフアンは激怒してしまう。ただ、これは客観的には双方の気持ちが理解で来るだけに切ないところだ。

そもそもこれまで何十年も家族の方だけを見てきた彼女にすれば、少しぐらい自分中心になっても良いではないかと言う気持ちがあっても無理はない。結局マリアは益々パズルにのめりこんで行くのだった。そして大会。周囲のやり方と自分のやり方の違いに戸惑いを覚え、混乱する彼女にロベルトは言う「気味ののやり方でいい。周りは一切関係ない。」と。落ち着きを取り戻した2人は見事に優勝する。この優勝がマリアにもたらしたのは単に勝った喜びだけではなく、自分に対する自信だ。恐らく彼女は結婚してから初めて自分のために何か行動し、その成果を得たのではないか。自分に対する不安を払拭した彼女が、お酒の力も手伝ってロベルトと男女の関係になってしまったのには驚いたが…。

ただ最終的にドイツで行われる世界大会の権利を放棄し、家族の元へと戻ってゆく彼女を見ていると、そもそも彼女にとってパズルはきっかけに過ぎなかったことが良くわかる。つまり彼女は50年かかってようやく自立したとも言えるのではないか。土地を売るために夫のお供で出かけていた彼女が、夫無しでもその交渉に出かけ、一人その土地にシートを広げりんごをかじるラストシーンは象徴的だ。彼女は自分に欠けていた1ピースをようやく見つけることが出来たのだと思う。
個人的おススメ度
3.5
今日の一言:例えば500ピースならどのくらいだと速いの?
総合評価:69点
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