家族の庭/Another Year
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描かれているのは一組の初老の夫婦、そしてその家族と彼らの家に集ってくる友人たちの姿だ。取り立てて何か大きな事件が起こるわけでもなく、本当にただ食事に来たりするだけの日常の一コマを切り取っているだけである。ちょっと面白いのが物語の主人公はメアリー(レスリー・マンヴィル)なのだが、舞台となっているのは地質学者のトム(ジム・ブロードベント)と医学カウンセラーのジェリー(ルース・シーン)夫妻の家だという点だ。この夫妻が正に庶民的な幸せを具現化した存在で、2人とも現役で働きつつ休日は市民菜園で畑仕事、時にはホームパーティーを開き、友人や息子を招いて美味しい料理とワインを嗜むといった具合。おまけに息子は親思いで弁護士として自立しているのだ。
物語は春夏秋冬に分けてそれぞれ4つのエピソードが語られるのだが、1年を通じて登場するのがメアリーというワケ。春、メアリーが最初に登場してくるエピソード。怒涛の勢いでしゃべり倒す彼女の話をニコニコしながら、しかもちゃんと聞いて受け答えするトムとジェリーの心の広さと大きさに驚かされる。「私って聞き上手なのよね!」と言いながらも“私”の話しかしないのだからハッキリ言ってただの煩いオバハンだ。一応メアリーはジェリーの古くからの同僚だということなのだが、良くこんなのと付き合っていたものだと思う。個人的に酒に飲まれる人間は男であろうと女であろうと大嫌いな私としては、ワインがぶ飲みで酔いつぶれる彼女を観ているだけで嫌悪感で一杯になった。
夏、夫妻の元に2人の幼馴染のケン(ピーター・ワイト)がやってくる。夕食を食べながら日頃の鬱憤を晴らすように話す彼。トムとジェリー夫妻はさながら悩み相談所のようだ。ただメアリーにしてもケンにしても心に隙間をもった孤独な人々であるのは良くわかる。そう考えるとまるで夫妻は幸せのお裾分けをしているかのようにも見えてしまった。実はケンはメアリーの事が好きなのだが、メアリーは太っちょで汗かきの彼のことが嫌い。まあこういってはなんだが、それは女性の気持ちとして解らないでもない。特に彼女ときたら「私って若く見られるじゃない」と来ているのだから、野暮ったい中年男などはお断りなのだ。ただだからと言ってトムとジェリーの息子ジョーに色目を使うのはどうだろう。
別にいい年こいてなどと言うつもりはない。ただジョー(オリヴァー・モルトマン)は日頃から世話になっていて大親友のジェリーの息子なのだ。恋は盲目とはいっても分別ある判断ができない程メアリーは子供ではないのだ。孤独な女性で同情すべきところは多分にあれども、私はやはりどうもこのメアリーの事が好きになれない。従って同情も共感もできない…。秋、このジョーへの気持ちがちょっとした問題を引き起こす。ジョーが恋人ケイティ(カリーナ・フェルナンデス)を連れて家にやって来たのだ。トムとジェリーは30歳になっても浮いた話一つなかった息子だけに大喜び。しかもお相手のケイティもとても素敵な女性で申し分ない。ところがそこにメアリーがやってくる。
あからさまに不愉快な態度をとるメアリー。というか初対面の人間に取る態度ではないのは明らかで、正直自分がトムかジェリーだったらはっきりと言うだろう。「もう絶交だ。二度と来ないでくれ」と。冬、トムの兄ロニー(デヴィッド・ブラッドリー)の妻が無くなりその葬儀に参列する。ここでロニーの息子とひと悶着あるのだが、それ自体はよくある話でどうと言うことはない。要するにここでもメアリーなのだ。ボロボロの様子でいきなり現れた彼女は、ジェリーに秋のケイティの態度のことでハッキリと「失望した」と言われてしまうのだ。彼女の心の痛み、それは自分でも決して褒められたマネをしている訳ではないと解っているからこその痛みであり、同時に後悔の念でもある。
トムとジェリー、ロニー、ジョーとケイティという家族の座ったディナーに同席を許された彼女だが、明らかに招かざる客であることはいくら自己中心的なメアリーといえども解っている。居心地は最悪だろう。何しろ観ているこちらがいたたまれない程なのだ。だが敢て言うがそんなものは自業自得だ。この歳までそういう生き方を自ら選択してきた結果でしかない。従って可哀想だとは全く思わないし、むしろこちらの気持ちが暗くなるから消えて欲しいとすら思う。っとまあ、登場人物の心情の微妙な変化を日常の姿から見事に紡ぎだしてはいるのだが、トムとジェリー夫妻の心地良い優しさ以上にメアリーの不愉快さが勝ってしまい、結果的に気持ちが今一つ不快なまま終わってしまった。
個人的おススメ度
3.5
今日の一言:映画のクオリティは高いと思うけど…
総合評価:75点
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