フェア・ゲーム/Fair Game
夫の元大使がイラク戦争開戦の理由となった大量破壊兵器が存在しない事実を公表したために、その身元をリークされるという政府からの報復を受けた女性CIA工作員の実話「プレイム事件」の映画化。主演を『愛する人』のナオミ・ワッツと『ミルク』のショーン・ペンが演じる。監督は『ボーン・アイデンティティー』、『Mr.&Mrs.スミス』のダグ・リーマンが務めた。 >>公式サイト |
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元ニジェール大使の夫が、イラク戦争開戦の理由となった大量破壊兵器の存在に関してブッシュ政権の間違いを告発したため、CIA工作員だった妻の身元をリークされるという報復を受けた「プレイム事件」の映画化である。観ている限りでは殆ど余計なエピソードを挟まずにそのものズバリを描いている作品だった。正直言うと最初はこの手の作品はまたぞろアメリカのイラク戦争にたいするエクスキューズ映画ではないかと思っていたのだが、観ているうちにそうではないと気付かされる。即ちストーリーは余計なエンタテインメント要素や感動要素を出来るだけ省き、起こった出来事に関して愚直に描いていたからだ。ただし、それならばドキュメンタリーか記録映画にすればよいのにと思った。
要するに余りにそのものズバリしか描かれて居ないため、知識的興味としての面白さそれ以上でも以下でもないのだ。ただし、演じているのがナオミ・ワッツとショーン・ペンという2人の実力派だけにその演技力にグイグイと牽引されていく感じではある。そもそもブッシュ政権が9.11以降イラクを「悪の枢軸」と決め付けていたことは私達も知っている。この物語の主人公であるヴァレリー・プレイム(ナオミ・ワッツ)やジョー・ウィルソン(ショーン・ペン)にとって、いやアメリカ国民にとって不幸だったのはブッシュが希代の大バカ大統領だったことだ。チェイニー副大統領の首席補佐官ルイス・“スクーター”リビーは簡単に言えばイラクに難癖をつける絵図を書いていた。
そこでCIAに対してその絵図に見合う材料を探させるわけだが、その過程でジョーも元ニジェール大使として協力する。しかし核兵器開発計画など無いわけで、無い以上何も出て来るワケがない。ところがアメリカはひたすら開戦へと突き進み結果は今私たちの知るとおりだ。ジョーはその過ちをマスコミに暴露するのだが、直後に報復で妻ヴァレリーがCIAの工作員であることをバラされてしまう。即ちそれは彼女にとってはキャリアの全てを失うことと同等だった。この話、最近の日本の特捜検察の話と非常に良く似ている。日本の司法の一機関ですら、反論を封じ込め有罪にすることなどワケもなく出来るのだから、まして世界最高の権力であるホワイトハウスからすれば造作もないことだろう。
バカをリーダーに頂くとこういう時に修正が効かない、というか、側近の言うことを的確に判断する能力もないのにアメリカ大統領をやっているのだから、これはまさに何とかに刃物と同じだ。社会的に抹殺されてゆく夫妻だが、ジョーだけが必死の抵抗を続ける。ヴァレリーは下手にCIA、つまり体制内部にいただけに権力の恐ろしさを熟知していて、逆らうことは無駄だと考えていたのだ。この考え方の違いによって夫婦は崩壊寸前に追い込まれる。が、実話だから仕方ないのかも知れないけれど、ヴァレリーが実家に帰って両親と過ごしただけであっという間に夫と共に戦う事を決意するという流れは何ともお手軽で安易に見えてしまった。
ちなみにこの時彼女がいうセリフ「全てを失ってもこの結婚だけは守りたいの」の“結婚”は“家族”と意訳したほうがよいと思う。確かに“marriage”とは言っているが、まさか子供を失っても良いと考えているはずがないだろう。最終的にはこれも既に周知の通り、大量破壊兵器は存在しなかったということになっている。従って彼女たちの名誉は回復されましたという話なワケだ。結局この作品にテーマがあるとすると、それは最後にジョーが講演で言った「民主主義は決して簡単に与えられはしない。」コレに尽きるのではないか。民主主義の枠組みの中で生きる上で、政府はそれを制限する動きになることが多い。それに対して常に主張し、戦う事でしか権利は勝ち取れないのだ。本作を観ていると、昨今のデモ等を含め、日本も3.11移行そういう社会に変わりつつあるのかなと感じた。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:ナオミとショーンに★1
総合評価:71点
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【FAIR GAME】 2011/10/29公開 アメリカ 108分監督:ダグ・リーマン出演:ナオミ・ワッツ、ショーン・ペン、サム・シェパード、デヴィッド・アンドリュース、ブルック・スミス、ノア・エメリッヒ、ブルース・マッギル、マイケル・ケリー、アダム・ルフェーヴル
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受信: 2011年11月 4日 (金) 12時51分
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» フェア・ゲーム [だらだら無気力ブログ!]
見応えはあったけど、何度も睡魔が・・・。 [続きを読む]
受信: 2011年11月 7日 (月) 00時59分
» フェア・ゲーム [ダイターンクラッシュ!!]
2011年11月8日(火) 19:35~ TOHOシネマズ六本木ヒルズART SCREEN 料金:1300円(シネマイレージデイ) パンフレット:未確認 『フェア・ゲーム』公式サイト 実名で実話の政治スリラー。 イラクとの開戦のために政府がついた嘘とそれを暴いた元大使そしてその妻のCIAエージェントと政府の戦い。 反抗するも政府に押しつぶされそうになり離婚の危機を迎えてしまう。 陰謀の黒幕であるホワイトハウスの側の人間が登場回数が少ないので、リークした奴が誰かとか、背後が少々判り難いのだが、... [続きを読む]
受信: 2011年11月 9日 (水) 13時40分
» No.272 フェア・ゲーム [気ままな映画生活]
【ストーリー】
03年3月に開始されたイラク戦争のきっかけとなった大量破壊兵器の存在。米外交官ジョセフ・ウィルソンはその存在そのものを否定するレポートを発表したが、米政府 ... [続きを読む]
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» フェア・ゲーム(2010)◎●FAIR GAME [銅版画制作の日々]
アメリカ合衆国 史上最大のスキャンダルイラク戦争を巡る巨大な謀略。兼直に立ち向かったCIAエージェントの孤高なる戦い。
評価:rarr;70点
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FAIR GAME
9.11後、アメリカはイラクが核兵器開発を画策しているという不確定情報を得
る。CIA(米国中央情報局)は工作員ヴァレリー・プレイム(ナオミ・ワッツ)に、
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受信: 2011年11月15日 (火) 10時35分
» フェア・ゲーム [とりあえず、コメントです]
アメリカで実際に起きた“プレイム事件”をナオミ・ワッツ&ショーン・ペンで映画化したサスペンスです。 この二人でポリティカルなサスペンスなら、きっと面白いだろうなと期待していました。 こんな話が本当にあったのかととても驚いてしまうような作品でした。 ... [続きを読む]
受信: 2011年11月20日 (日) 00時21分
» フェア・ゲーム [迷宮映画館]
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受信: 2011年12月20日 (火) 08時54分
» 「フェア・ゲーム」 [みんなシネマいいのに!]
仕方ないとはいえ、映画も同じようなタイトルには困ったもので、この映画も随分昔に [続きを読む]
受信: 2011年12月26日 (月) 06時47分
» 『フェア・ゲーム』 あなたの正体は? [映画のブログ]
徳川家康は豊臣家が再建していた方広寺の梵鐘に「国家安康」の文字があるのを問題視した。
国家安康とは、国が平和であるようにということだが、あろうことか家康は、「国家安康」の中には「家康」が「家...... [続きを読む]
受信: 2012年1月 4日 (水) 09時00分
» 『フェア・ゲーム』を銀座シネパトス1で観て、今回は踊るなナオミ・ワッツ★★★ [ふじき78の死屍累々映画日記]
五つ星評価で【★★★面白い。でも、そこで切るのか】
ナオミ・ワッツと言うと『キングコング』でひたすら踊ってた人、
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ま ... [続きを読む]
受信: 2012年1月 5日 (木) 00時42分
» 映画『フェア・ゲーム』を観て [kintyres Diary 新館]
11-81.フェア・ゲーム■原題:Fair Game■製作年・国:2010年、アメリカ■上映時間:108分■料金:1,800円■鑑賞日:11月27日、新宿武蔵野館 □監督・製作・撮影監督:ダグ・リーマン□脚本:ジェズ・バターワース、ジョン・ヘンリー・バターワース□撮影監督:ア...... [続きを読む]
受信: 2012年1月15日 (日) 14時08分
» 「フェア・ゲーム」 アメリカのとんでもない真実w(゚o゚)w [ジョニー・タピア Cinemas ~たぴあの映画レビューと子育て]
フェア・ゲーム観ましたよ~(◎´∀`)ノ 主演はナオミ・ワッツとショーン・ペンの [続きを読む]
受信: 2012年4月 9日 (月) 00時02分
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