僕たちのバイシクル・ロード~7大陸900日~
飛行機を使わず、船と自転車のみで7大陸を走りぬくという世界初の快挙に挑むイギリス人青年に密着したドキュメンタリーフィルム。冒険旅行の主人公となるのはジェイミー・マッケンジーといとこのベン・ウィルソンの2人だ。合計33カ国900日を越える波乱万丈の旅、そしてそこから2人は何を得たのだろうか。 |
若者らしい自由奔放さが眩しい |
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今流行の自分探しの旅でもないだろうが、とにもかくにもこの作品の主人公、ジェイミー・マッケンジーとベン・ウィルソンは世界7大陸全てを空路を使わず自転車と船で走破するという冒険旅行に出かける。2005年4月27日のことだった。このまま普通の社会人として働いている自分の姿が想像できなかっただとか、世界中を心行くまで自分の目で観たかったなどとと言うが、まあそれは今時の若者らしい理由と言えばそうだろう。それでもこの2人はとにかく行動を起こした。しかも彼らは冒険家でもなく、言葉がしゃべれる訳でもなく、海外旅行の経験が豊富なわけでもなく、お金持ちな訳でもない。ナイナイ尽くしのなかでもとにかく突っ走れるのも若さ故の特権だ。
イギリスからまずはモスクワを目指す。で、いきなりベンの自転車がパンクする。この旅でとても驚いた事の一つがこのパンクだ。最初はジェイミーがカメラに向かっておどけた様子でベンがパンク修理をしている様子を解説しているが、なんとこの旅でベンの自転車は数百回もパンクするのに、ジェイミーの自転車は0回だったのである。一体何がどうしてこんなことになってしまうのか(笑)中国は西安の誇りだらけの道を進むと彼らの顔は真っ黒け。空気が非常に悪いとボヤいていたが、以前私が西安に行った際にはその汚れた空気で喉をやられて旅行の間中声が出なくなった経験がある。言葉は通じない、道は洪水で崩れている、しかし中国の奥地などまあこんなものだ。
それにしてもハッキリ行って彼らは完全にただの若者だった。それが証拠にこれだけの冒険にも拘らずサンダルで自転車に乗ったりしている。転んで足の爪をはがしたりもするのだが、別に懲りた様子も無く好きなように旅をしている。良いことも悪いことも含めて自由を満喫するとはこういうことなんだろうとちょっと羨ましく感じた。マレーシアで取材を受けたり、ヒッチハイクでトレーラーに乗せてもらったり、オーストラリアのメルボルンではジェイミーが未来の奥さんであるジュリアとであったりと旅は続く。そしてこの旅の最大の見せ場である南極大陸上陸だ。「水平線と地平線を氷の壁が繋いでいる」なんて言葉からは実際にその場で経験しなければ中々出てこないだろう。
くしくもドラマ『南極大陸』では上陸するのにキムタクご一行様は大変な苦労をしていたものだが、彼らは場所こそ違えサクッと上陸できてしまう。条件がまるで違うとはいえこのギャップに思わずクスリとしてしまった。それにしても一面雪景色の南極大陸で自転車を走らせる映像というのは世界中探しても中々見れない映像である。自転車が坂道を下ると、前方にいるペンギンがワラワラと逃げていくなんて、南極でしかありえない楽しい光景だ。この後南米に渡り北上しながら帰国の途につくことになる。さて、非常に興味深いドキュメンタリーだと思うのだが、残念ながら満足感というと足りないと言わざるを得ない。とにかく根本的に映像が少なすぎて、場面が飛び飛びすぎるのだ。
それ故に地図上で赤い線を引いた旅の経路を辿っている印象が非常に薄いのである。何しろ927日間、即ち約2年半にも及ぼうかと言う壮大な旅の映像記録が僅かに30時間しかないというのがつらい。もちろん自転車での走行距離約1万3000キロという彼らの過酷な冒険の価値がそれで下がる訳ではないのだが、映画にするのであればある程度のポイントで相応の量の撮影は必要だろう。映画そのものも彼らが主体になって進められた非常に手作り感あふれる作品であることは解るのだが、行き当たりばったりで特に計画性の無い旅の欠点が出てしまったようにも感じる。この旅が彼らにもたらしたもの、それはすぐには出てこないと思う。これから10年後20年後に彼らが生きていく上で、ふと振り返ったときにそれに気付くのではないか。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:自転車に乗りたくなってきた…
総合評価:64点
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