ハードロマンチッカー
グ・スーヨン監督の故郷である下関を舞台に、フリーター青年のグーが暴力とセックスにまみれた世界に生きてゆく姿を描いたバイオレンス映画だ。主演は『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』 の松田翔太。共演に永山絢斗、柄本時生、渡部篤郎、中村獅童といった若手とベテランの演技派が揃う。思わず顔を背けたくなるほど壮絶なバイオレンスシーンの裏にある青春ドラマに注目したい。>>公式サイト
11月26日(土)公開
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観ていて思い出したのが井筒和幸監督の『ヒーローショー』 や品川ヒロシ監督の『ドロップ』 だった。ただそれは過激な暴力描写という意味においてであり、主人公の精神的な成長を描くというよりは、どこにもやり場のないやるせなさや怒りをを描いていたように思う。とにかく過激な描写のオンパレードで、不良同士の殴る蹴るは当たり前、女子高生に馬乗りになって顔面タコ殴りだとかレイプ、包丁で腹を何度も突きまくる殺人と思わず顔を背けたくなるシーンだらけだ。実際後ろの席のおばちゃんが思わず「ヒィッ!」と声が漏れていたほどで、間違いなく観る人を選ぶ作品だと言える。そんな本作の舞台となっているのはグ・スーヨン監督の故郷下関だ。
登場人物が話す“下関弁”は“広島弁”にソックリで、さながら「仁義無き戦い」の現代若者バージョンといった様相である。実は主人公グー(松田翔太)は在日韓国人二世で、名前を見ても解るとおりこの作品は監督の自叙伝的作品でもあった。物語はそんなグーの後輩・辰(永山絢斗)とマサル(柄本時生)がとある事件の腹いせに朝鮮高校の学生の祖母を襲い図らずも殺してしまうことから始まる。そもそも下関は日本有数のコリアンタウンがあり、事件の背景には在日韓国・朝鮮人と日本人との微妙な人間関係が絡んでいた。刑事の藤田(渡部篤郎)から事件への関わりを尋問されたグーは、事件の真相を探り始める。といってももちろん正義感からなどではなく、単に疑われてムカついたからだが…。
要するに元々グー自身は何も悪いことはしていないのだが、彼が動くことであちこちに暴力のタネをばら撒くことになるのが面白い。辰は警察に捕まってしまったため、マサルに事情を聞こうと歩き回る途中、偶然にもパクヨンオ(遠藤要)の弟をボコってしまい、ボクサーで超人的な強さを誇る兄貴に付け狙われるハメに。更にその時に偽名で金子と名乗ったが故に、本物の金子がパクヨンオにボコられる。結果、金子もグーを狙うことに…。更には悪友のタカシの元を訪れた際に、ひょんなことからイーパッキ(石垣佑磨)やカンテファン(ペ・ジョンミョン)といったヤクザ予備軍をぶちのめしたことで彼らからも狙われるのだった。気がつくとグーは下関じゅうのロクデナシから狙われるハメに。
元々人とつるむことを良しとしない、己の美学を貫くグーの生き方はそれは観ていてカッコイイものがあるのだが、当然ながらそれには代償が付きまとうわけで。この手の青春バイオレンスムービーの場合大抵は仲間との絆が重要な要素となってくるのだが、本作の場合このグーの孤高さ加減が特徴であり魅力でもある。一体どうなってしまうのかとハラハラしながら観ているのだが、ここでタイミングよく小倉でクラブのマネージャーのバイトをすることに。このクラブのオーナー・高木(中村獅童)が実に面白いキャラで、実はヤクザの幹部にも関わらず妙に丁寧な口調で喋るシーンは本作の中の数少ない笑えるシーンだった。結局グーは下関に戻ることになるのだが、この間様々なエピソードが起こる。
悪友タカシ(金子ノブアキ)の事故、気に入っていた女子高生・中村みえ子(小野ゆり子)の売春、懇意にしていたヤクザ・庄司(真木蔵人)の死、グーの周りで目まぐるしく起こる事件、そのどれもがいま一つ表面的な描き方であり、それはまるで所詮は俺には関係ないというグーの生き方そのもののようでもあった。そして対決。パクヨンオにタコ殴りにされボロボロになっても起き上がるグー。これまでと違ってケンカの様相自体にはリアリティはあまり感じられない。どこか綺麗にまとめられているようで、それはやはり主人公だからか。ただ、ボロボロになったグーから未来への希望や夢といったポジティブな要素が感じられない点が、現実には映画ほど甘くないとでもいった感じで妙にリアルだった。
11月26日(土)公開
個人的おススメ度3.5 今日の一言:上目遣いで怒鳴る柄本時生が父親ソックリ!総合評価:74点
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受信: 2011年11月26日 (土) 11時55分
» ハードロマンチッカー [とりあえず、コメントです]
グ・スーヨン監督が自身で書いた同名小説を映画化した作品です。 主演の松田翔太さんがボコボコの顔をしている写真のインパクトにかなり引いていたのですけど 友達に誘われたのでチャレンジしてみました。 予想以上にハードで、でもちょっと“ロマンチック”な気持ちもわかる青春アクションでした。 ... [続きを読む]
受信: 2011年11月26日 (土) 12時28分
» ハードロマンチッカー/松田翔太、柄本時生 [カノンな日々]
とてもハードで濃厚そうな予告編の印象にこれは絶対に観に行きたいと思った作品です。『THE 焼肉ムービー プルコギ』のグ・スーヨン監督が在日韓国人二世という自身の出自を題材に ... [続きを読む]
受信: 2011年11月26日 (土) 23時07分
» ハードロマンチッカー [映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評]
暴力の中に“切なさ”と“刹那さ”が混在する青春映画「ハードロマンチッカー」。金髪オールバックの松田翔太の熱演が光る。山口県下関市。在日韓国人2世で、高校を中退したフリ ... [続きを読む]
受信: 2011年11月27日 (日) 10時25分
» ハードロマンチッカー [A Day In The Life]
劇場にて鑑賞
解説
高校を中退したフリーター青年グーが、暴力とセックスがはびこる世界で
たくましく生きていく姿を描く衝撃作。
『偶然にも最悪な少年』のグ・スーヨンが、自身の著書を映画化。
主人公のグーを、『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』などの松田翔太が... [続きを読む]
受信: 2011年11月27日 (日) 19時53分
» 2011年10月26日 『ハードロマンチッカー』 TOHOシネマズ六本木 [気ままな映画生活(適当なコメントですが、よければどうぞ!)]
今日は、『ハードロマンチッカー』 を東京国際映画祭(TIFF)で鑑賞です。
おいらには刺激が足りなかったぜ
上映前に、松田翔太、永山絢斗、渡部篤郎、遠藤要、グ・スーヨン監督の舞台挨拶がありました。
そこでは、ハードロマチッカーは格好悪いだの、渡部篤郎は唯一のまともな役だといってましたが
まともな役では無かったですね。ちょっと異常な刑事でした
英語の通訳が入るので、時間がかかるしテンポが悪いんですよね。
国際映画祭ってのも善し悪しですね。
英語だけにしたらいいんじゃない とも思うが、私には理解でき... [続きを読む]
受信: 2011年11月27日 (日) 22時45分
» ハードロマンチッカー [とらちゃんのゴロゴロ日記-Blog.ver]
グ・スーヨン監督が自身の故郷下関を舞台にした小説を原作に映画化した。若い俳優を起用した勢いのある映画になっている。主演の松田翔太が切れまくっていてすばらしい。格好いいし、凄みを感じた。登場人物が多いので物語がうまくわからないけど、それもいいだろう。こうい... [続きを読む]
受信: 2011年11月27日 (日) 23時51分
» ハードロマンチッカー [映画とライトノベルな日常自販機]
“ハードなバイオレンスのが行き着く先はモヤモヤした閉塞感” 誰ともつるまず自分の価値観だけで生きようとしているグーは、どんなに暴力をふるっても、彼のモヤモヤとしたやり場のない怒りが晴れることはないように思います。目の前で女の子がレイプされようと、自分を目の敵に思っている連中に囲まれようと、興味がなければ手を出すこともなく、いたってクールに振る舞うところは、グーのかっこ良さだと感じます。 そして、彼の行動が暴力の連鎖を生み出していき、敵に囲まれてしまう様子は、どこまで行っても出口の見えない彼の心が持つ... [続きを読む]
受信: 2011年11月28日 (月) 14時37分
» 映画「ハードロマンチッカー」@よみうりホール [新・辛口映画館]
試写会の客入りは1階席は7~8割くらい、2階席は3~4割くらいと非常に客入りが悪い。
映画の話
下関に生まれ、街を歩けば幼いころからの顔なじみのヤクザ・庄司(真木蔵人)に危険な物を無理やり渡されたり、刑事の藤田(渡部篤郎)に絡まれたりするフリーターのグー(松田翔太)。ある日、後輩の辰(永山絢斗)とマサル(柄本時生)が敵対関係にある高校生の家に殴りこみ、それを聞いたグーは、事件の真相を求めて奔走するが……。... [続きを読む]
受信: 2011年11月29日 (火) 00時58分
» ハードロマンチッカー〜非政治的人間の末路 [佐藤秀の徒然幻視録]
公式サイト。グ・スーヨン監督、松田翔太、永山絢斗、柄本時生、渡部豪太、川野直輝、落合モトキ、遠藤雄弥、金子ノブアキ、石垣佑磨、遠藤要、真木蔵人、渡辺大、芦名星、真木よ ... [続きを読む]
受信: 2011年11月29日 (火) 20時38分
» ハードロマンチッカー [パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ]
「プルコギ THE 焼肉 MOVIE」のグ・スーヨン監督が自らの原作を映画化。山口県下関を舞台に、閉塞感に苛まれ、強がりのみで刹那的な暴力に生きる若者たちの姿を描く。出演は「ケ ... [続きを読む]
受信: 2011年11月29日 (火) 21時13分
» ハードロマンチッカー [ダイターンクラッシュ!!]
2011年12月1日(木) 18:55~ 丸の内TOEI② 料金:1000円(映画サービスデー) パンフレット:未確認 『ハードロマンチッカー』公式サイト 予告編のバイオレンスぶりに魅せられ、結構期待して観に行ったのだが・・・。 チンピラ・バイオレンスなので、テンポの良さを期待したのだが、どうにも現実に即してか、間を重視して演出している節が窺われる。よってもって、どうにも間延びした感、弾ける勢いが無い。 チンピラ・バイオレンスなので、対立関係はシンプルな筈なのだが、登場人物が多くて、人間関係... [続きを読む]
受信: 2011年12月 2日 (金) 02時37分
» 狂犬グー 〜『ハードロマンチッカー』 [真紅のthinkingdays]
関門海峡を望む、山口県下関市。一匹狼の在日青年グー(松田翔太)は、馴染
みの組員・庄司(真木蔵人)から、コインロッカーの鍵を預かる。周囲で様々な事
件が起きる中、グーは小倉のクラブでマネージ...... [続きを読む]
受信: 2011年12月 2日 (金) 18時01分
» 「ハードロマンチッカー」パッチギ的感情 [ノルウェー暮らし・イン・原宿]
株主優待券があったので、期限が切れる前に・・・
「無理して観なくてもいいんじゃ?」って、ねえねに言われたけど、確かにその通りだったわ [続きを読む]
受信: 2011年12月 4日 (日) 18時33分
» 「ハードロマンチッカー」 [みんなシネマいいのに!]
「偶然にも最悪な少年」は、あまりにもつまらないため、「偶然にも最悪な映画」と言 [続きを読む]
受信: 2011年12月 7日 (水) 06時34分
» 「ハードロマンチッカー」感想 [新・狂人ブログ~暁は燃えているか!~]
「偶然にも最悪な少年」のグ・スーヨン原作の小説を、著者自らメガホンを取り映画化。
結論から書くと、小生はこの映画が嫌いだ。
主演の松田翔太くんをはじめ、役者陣の芝居は悪くなく、物語も決してつまらないわけではない。が、登場人物の誰一人として感情移入でき... [続きを読む]
受信: 2011年12月13日 (火) 19時28分
» 「ハードロマンチッカー」 ┐( ̄ヘ ̄)┌ わかんね~ [ジョニー・タピア Cinemas ~たぴあの映画レビューと子育て]
「偶然にも最悪な少年」のグ・スーヨン監督が 自身の故郷・下関を舞台に描くバイオレ [続きを読む]
受信: 2012年6月14日 (木) 00時02分
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