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2011年12月30日 (金)

運命の子/趙氏孤児

Photo 『さらば、わが愛/覇王別姫』のチェン・カイコー監督が、司馬遷の「史記」に記された「趙氏孤児」を映画化。謀殺されたある一族の子を我が子と妻を犠牲にして助ける医者は、やがて来る復讐の日を想いその敵の臣下として働くのだった…。主演は『狙った恋の落し方。』のグォ・ヨウ。共演に『レイン・オブ・アサシン』のワン・シュエチー、『孫文の義士団』のファン・ビンビンらが出演している。
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どうにも理に叶わない復讐劇

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全体としてとてもオーソドックスな中国歴史物語なのだが、何やら首を傾げざるを得ない物語でもあった。グォ・ヨウ、ワン・シュエチー、ファン・ビンビンといった俳優陣は、中国映画ではお馴染みの面々であり、安定した演技力で落ち着いて観ることは出来る。物語は2600年前の中国・春秋時代は晋の国が舞台。宰相の趙盾(パオ・グオアン)は屠岸賈(ワン・シュエチー)の謀略にはまり一族皆殺しとなる。と書くと屠岸賈が暴虐なヤツに思えるが、作品を観ているとそうでもないように感じるのがこの作品の躓きの第一かもしれない。趙盾の息子・趙朔(ヴィンセント・チャオ)の屠岸賈に対する傲岸不遜な態度を観ていると、いつか誰かがこういう行動に出ていたのではないかと思えてしまうのだ。

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趙朔の妻・荘姫(ファン・ビンビン)は謀反と同じタイミングで息子を産み落とすのだが、事態を悟った彼女は出産のためにそこにいた医者の程嬰(グォ・ヨウ)に我が子を託す。物語の前半はその程嬰が一族の子を守るために必死な姿が描かれる。実は彼も息子を授かっていたのだが、何と彼は自分の息子だけでなく、妻までも犠牲にして託された一族の子を守るのである。ちなみに程嬰の子を殺すのは屠岸賈だが、謀反を起してしまった後であり、趙氏の忘れ形見とあらばその行動は極当たり前だ。一族の子に程勃という自分の息子につけるはずだった名前を与えた程嬰は、いつかこの子に一族や自分の息子、妻の仇を討たせると誓うのだった。

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ところが!ここで驚いたことに程嬰は程勃を連れて屠岸賈の屋敷に出向き、自分を臣下にするように言うのだ。要するに彼は屠岸賈に趙氏の息子を差し出した挙句、妻まで殺されているのだから貸しがあるはずだという理屈らしい。しかも程勃に屠岸賈のことを義父だと思えと教育するのである。彼の腹積もりは、程勃に情が移ったところで全てを明らかにして、程勃に屠岸賈を殺させるというものだった。屠岸賈は彼を臣下にするのだが、それは彼にしてみれば程嬰如きの復讐心などなにするものぞという自信からだろう。ここから先は程勃が15歳になるまでの生活が描かれるのだが、これがどうも釈然としない。何しろ程勃は普通に義父・屠岸賈を慕ってしまっている。

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これでは彼が義父を殺すことなど到底おぼつかないのは明白なのだ。反対に屠岸賈は程勃を非常に可愛がり、まるで本当の父親のようである。むしろ程嬰が息子が余計なことを屠岸賈にしゃべらないように四六時中監視している姿を観ていると、それは逆に怪しまれるのじゃないかとすら思う。そもそも、彼の作戦には一つ重要なことが抜けている。それは実際に殺す程勃の気持ちだ。情が移った程勃に殺される屠岸賈はそれは悔しいだろうが、逆に程勃とて情は移っているはずだとは考えないのか。そうならないためには程勃に屠岸賈は一族の仇であり、ゆくゆくはお前の手でヤツを殺すけれども今はそれをかくして義父として慕い・慕われるようにと教育をしなければならないのにそんな様子は一切無い。

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自分の一族を殺されたと言えば即相手を恨んでくれると考えたのだとすれば、そもそも情の捉え方を間違っている。これが釈然としない最大の理由だ。更にここに関わってくる韓厥(ホァン・シャオミン)の存在がある。彼は最初に荘姫の屋敷で程嬰が一族の子を助ける手助けをするのだが、それで屠岸賈に顔面を斬り付けられる。彼は自分の恨みを晴らすべく彼の元に屠岸賈暗殺のためにやってくるのだった。しかし結果的に彼の存在は、“程勃が彼の存在を屠岸賈にもらすことを恐れ神経質になる”程嬰を演出するために必要なだけの存在なのだ。程嬰はすっかり屠岸賈に信用され、彼を殺すチャンスはいくらでもあったし、韓厥はそうしようとするのだが、程嬰はそれを止める。

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その殺し方にも拘ったからにしても15年もあったら他に方法は思いつくと思うのだが…。全てを程勃に告げて最終的に彼が屠岸賈を殺すことにはなるが、彼は案の定心に葛藤を抱えることになる。いくら自分の恨みのためとはいえ、程勃自身には何の罪も無い。にもかかわらず彼にやらせる程嬰よりも、程勃の正体に気付いてなお戦場で彼を助ける屠岸賈の方がむしろイイヤツに見える。元がある話なので話そのものはタイトル通り運命の子を描いたものとして、オーソドックスな面白みはあると思うが、すんなりこの話を受け入れるのに抵抗感があったのも事実だ。

個人的おススメ度3.0
今日の一言:俳優は相変わらずいいなぁ
総合評価:63点

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司馬遷の「史記」に記される復讐譚「趙氏孤児」を映画化とのこと。俳優陣は豪華で演技も安定していて、わかりやすかった。でも現代の尺度で考えてはいけないとは思う作品ストーリーかも。 陛下の姉を娶り調子に乗っている趙一族と、一方で陛下の守り役で武官である屠岸賈。屠岸賈の策略により一族皆殺しにされた宰相の趙一族。しかし、生まれたばかりの自分(医師)の子と趙一族の子とを取替え育て、相手に可愛がらせ、機が熟したところで復讐させる。相手が子を可愛がれば可愛がるほど、復讐のダメージは強まるというわけだ。わか... [続きを読む]

受信: 2012年7月 2日 (月) 09時22分

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