ルルドの泉で/Lourdes
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人の心は本当に難しいものです… |
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舞台となっているのは奇蹟を起こすことで名高いルルドの泉とその村。従って地理的な広がりはなく、こじんまりとしているのだが、代わりに登場する人物の様々な心情が広がりを見せてくれる作品だった。主人公クリスティーヌ(シルヴィー・テステュー)は多発性硬化症という難病で手足が動かせず、車椅子の生活を余儀なくされている女性である。そんな彼女がルルドの泉を訪れるツアーに参加する。物語としては彼女にルルドの奇蹟が起こり、それを目の当たりにした周囲の人々の心情がどう変化するのかを描いていた。テーマである人々の心情の変化もさることながら、名前だけは聞いたことがあっても見たことのないルルド村観光ツアーを疑似体験できるのもこの作品の楽しい一面だと思う。
洞窟の壁に触りキスをする人々の姿や、奇蹟の水を沐浴する様子、大聖堂に無数の巡礼者が集まり祈りを捧げたりと、初めて見る光景ばかりでとても興味深い。一方で、キチンとツアー化されていて、介助ボランティアが翌日のスケジュールを発表したりする姿を見ると、カトリックの聖地としての一面と、世界的な観光地としての一面が両立しているのがユニークである。一番驚いたのは、クリスティーヌに奇蹟が起きた後だ。奇蹟そのものは物語的には解っていたことなので別に驚きはないが、奇蹟だと認められるには、ルルド国際医療委員会の認定が必要だというのだ。意外にシステマティックであり、スピリチュアルな要素を科学で判定するという点で不思議な感覚を覚えたりもする。
ちなみに今日まで奇蹟の認定を受けたのは僅か67件だそうで、言うなれば68件目がクリスティーヌということになるワケだ。そんな彼女の周囲に要る主だった人々はそれぞれ特徴的に描かれていた。自分の役割を直ぐ忘れ、仕事中に男探しに夢中になってしまう介助ボランティアのマリア(レア・セドゥー)。そしてマリアがほったらかしにしたクリスティーヌの車椅子を押し、なにかれとなく親切にしてくれる老婦人。噂話に花を咲かせるおばさん2人組に、病を抱えた子供の車椅子を押す母親、そしてクリスティーヌが密かに恋心を寄せる介護ボランティアのクノ(ブリュノ・トデスキーニ)。この中でクリスティーヌに奇蹟が起こる前も後も全く変わらないのは老婦人だけだなのである。
例えば手足が不自由であろうともクノに好意を寄せるクリスティーヌに、マリアはあからさまに上から目線を送っていたのが、奇蹟後には何とはなしにバツが悪そうな表情になっている。おばさん2人組や病を抱えた子を持つ母は「どうして彼女に奇蹟が起きたの?」と考えていたし、特に母親のほうの羨望と恨みが混じったような瞳は印象的だ。そもそもクリスティーヌ自身が特に信仰に厚い訳ではなく、単なる観光も兼ねて訪れたに過ぎないのだから余計にそうだろう。「神は自由なのです」と神父は言うが、そんな言葉で納得できないのは人間なら当然だ。一つ気になったのは奇蹟が起こった後のクリスティーヌの言動だった。無論、長年の苦しみから解放されたばかりなのだから仕方ないのだが…。
この辺は西洋と日本の違いがあるのかもしれないが、日本人ならば人前ではまず自分の喜びをアピールし続けるような言動はとらないものだ。自分の喜びが他の人全てにとっても同様ではないことに気を使う国民性だから。むしろ他人の気持ちを慮る方へ転化するだろう。例えば私にはアレだけ親切にしてくれた老婦人に対して、彼女のほうから労わる様な言葉や行動が一切ないのがとても奇異に映ってしまう。ラストで彼女が急に転んだ時「やはり奇蹟じゃなかったのか」ならともかく、「元に戻ってしまえ」的な空気を感じたのだが、それは彼女自身が招いたものだろう。この時、神父がかつて彼女に言ったもう一つの言葉が思い返された。「あなたは歩ける人が無条件にあなたより幸せだと思うのですか?」
個人的おススメ度4.0
今日の一言:レア・セドゥーって仲里依紗に似て可愛い♪
総合評価:77点
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