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2012年1月25日 (水)

ピアノマニア/Pianomania

Photo 超一流のピアニストたちから絶大な信頼を受ける調律師の姿を追ったドキュメンタリーフィルム。フランスのピエール=ロラン・エマールがその録音をする1年も前から準備を開始するエピソードを軸に、多くの演奏家の評価を受ける調律師・シュテファンの職人技を余すところ無く映し出す。ラン・ラン、アルフレート・ブレンデルといったピアニストの素顔もまた興味深い。
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脅威の職人技…というより超人技!?

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そもそも音楽に疎い私にとっては、本作に登場する世界の超一流ピアニストといえども初めて聞く名前ばかり。せいぜい中国のラン・ランがたまたまついこの間、某テレビ番組の正月特番に出演したためそういう人もいるのだと知ったぐらいだ。ただそんな私でもピアノの調律師という職業があることぐらいは知っている。彼らの仕事はピアノの音のズレを正確に直すことだと思っていたのだが、本作に登場するシュテファン・クニュップファーという調律師はそんな固定概念を覆す恐ろしいまでの職人技を見せてくれた。何しろアーティストたちが彼にだすオファーはとにかく抽象的。しかしそれをしっかり把握し、例えば音の広がり、深み、軽さ、重さ、果てはタッチの強弱に到るまで調整するのだ。

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正に陰で支えるもう一人のアーティストである。本作ではフランスのピアニスト、ピエール=ロラン・エマールがバッハの「フーガの技法」を録音する1年前から彼を追い始め、そのエピソードを軸として様々なピアニストたちとの係わり合いを映し出している。最初に書いた通り、全く知らないピアニストばかりなので私としてはどうしても覚えたてのラン・ランとのリハーサル風景が印象深い。それにしてもピアノの椅子の選択までもするとは驚くばかりだ。名だたるピアニストとシュテファンのやり取りは興味深く、言葉に従い彼がサササっと調律しては、また意見を聞くという繰り返し。しかしながら私如きでは一体それまでと何が変わったのやらさっぱりだ(笑)

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そんな中でもエマールの注文はすこぶる煩い。といっては失礼、完璧を求めてくる。何度調整しても中々理想の音にたどり着けず、録音間際に別のピアノを運び入れるシーンもあった。シュテファンが無理を承知で業者に依頼するのだが業者が「シュテファンの依頼だ」というと「僕じゃなくてエマールだ」と切り返すところが面白い。ギリギリの線で調律し、危うい所でバランスを保っている状態の音は、そのピアノを弾き続けることで加わる衝撃によって翌日には音が変わってしまうという。録音している最中にもほんの1音が僅かにずれているだけでその調律をしなおしたりと、これはもう気が遠くなるような作業だ。これはある意味ピアニストとの真剣勝負でもある。

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実際この位のレベルになると、常人では解らない域での語り合いで、シュテファンの微妙な調律をエマールは瞬時に感じ取り、またエマールの弾く微妙な音の変化をシュテファンは聞き取るのである。この繊細さをシュテファンはこうジョークで表現していた。『以前、日本人技術者が「大変だシュテファン!響板に埃がついている!」といって僕に見せたんだ。僕は「それは大変だ!すぐそれを元の位置に戻しておいてくれ!」と言ったのさ(笑)』と。彼もまたアーティストだなと感じるこんなエピソードもあった。一生懸命録音技師に音に関して説明している彼に技師は「簡単なことを難しく言うんだな」と一刀両断。確かに技師の言うとおりなのだが、音の表現方法は正にピアニストと同じなのだ。

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これ程までに息詰まる仕事でありながら、シュテファン自身は実に茶目っ気たっぷりで人間的な魅力に満ちているのが観ていて心地良い。先に書いただけでなく、他愛もないジョークで皆を笑わせたり、例えば調律師でありながら、ピアノショーのアイディアを出したりもする。もっともバイオリンをピアノの脚に見立てたのは、バイオリニストから怒られないかとも思ったけれど(苦笑)エマールの相反するオファーを両方とも満たそうと真剣な眼差しで調律する中、「落胆しながら仕事をしてる訳じゃない、ぼくにとってこれは研究なんだ。」と言い切る彼。ああなるほど、確かに“ピアノマニア”なんだなと納得してしまった。クラッシック音楽好きでなくともシュテファンその人の人間的魅力に惹き付けられる一作だ。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:ヤマハとかカワイは世界の中ではどうなんだろう?
総合評価:79点

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