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2012年1月 5日 (木)

サルトルとボーヴォワール 哲学と愛/LES AMANTS DU FLORE

Photo 実存主義で知られる哲学者ジャン=ポール・サルトルとそのパートナーで「第二の性」の著者シモーヌ・ド・ボーヴォワールの愛の形を描いた伝記ドラマ。主演は『シャネル&ストラヴィンスキー』のアナ・ムグラリスと『ザ・レース』のロラン・ドイチェ。監督はイラン・デュラン・コーエン。世界的に著名な2人の知られざる苦悩が今明らかになる…。
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男女のあり方を考えさせる伝記ドラマ

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正直言って哲学的分野は解らないし解りたくもない私としては、美しいアナ・ムグラリスが出演しているから観たいけれど…と逡巡していた作品。しかしながら実際にはそれほど哲学的要素があるわけでもなかったし、単純にサルトルとシモーヌの2人の学生時代からの伝記として楽しむことが出来る作品だった。天才・ジャン=ポール・サルトル(ロラン・ドイチェ)とシモーヌ・ド・ボーヴォワール(アナ・ムグラリス)はソルボンヌ大学で運命の出逢いを遂げることになるが、序盤はサルトルが彼女に一目惚れし追いかける姿が描かれる。面白いのはそこにあるのが単純な好き嫌いの感情だけでなく、自分にとってベストのパートナーであるという論理的思考であることだ。

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サルトルに次ぐ次席で一級教員資格を取得するほどの才女であり、父と母の影響から既存の男女関係のありかた、それは女性が男性を従属させたり、女性が働くことを認めなかったりする慣習に敢然と反旗を翻すシモーヌは正にサルトルの理想の女性だった。一方でそんな自分を全面的に認めてくれるサルトルの存在は、言ってみれば世の全てを敵に回しているシモーヌにとっては強力な味方だったといっていいだろう。しかし驚いたのは、この2人が同棲を始める最初にサルトルが持ち出した「契約結婚」だ。1999年からフランスではパックス(民事連帯契約)と呼ばれる結婚と同等の権利が認められる同棲契約が導入され、お陰で結婚するカップルが減っているのだという。

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しかもこのパックスには貞操義務が無い。要するに浮気し放題なワケだが、その代わりどちらか片方の申し立てだけでこの契約は解消出来るとされている。サルトルとシモーヌの場合はそこまでシステマチックではないものの、パックスのはしりだったといっていいだろう。サルトルは自分は作家であり、常に刺激を求めるためにお互い自由恋愛で、しかもその他人との関係をお互いに嘘偽り無く報告しあおうと提案するのだ。浮気してその浮気相手の事を相手に話すというぶっ飛んだ思考回路、流石は天才だ。ただ、シモーヌにしてみたらその提案を断り彼に固執することは、否定していた旧態依然とした男女関係を自ら認めることになるのだから、ここは意地でも認めざるを得ない。

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この後サルトルの浮気に悩まされるシモーヌの姿が描かれるが、ストーリー的にはちょっと中だるみして単調である。ただ一見するとサルトルが何と都合の良い男であり、更に都合のよい女を手に入れたものだと思わないでも無いのだが、彼にそんな下衆な考えはなく、真剣にかつ論理的にそうした関係を必要としているのが解るシークエンスでもある。ここが面白いところで、サルトルもシモーヌもお互いを真剣に愛しているし、お互いを必要としているのだ。例えばサルトルが他の女性と結婚しシモーヌと別れたら、その瞬間から彼はむしろその女性に縛られることになる。故にどんなに愛していようとも必ず彼はシモーヌの元に帰って来るのである。もっとも待つ身のシモーヌは堪らないが。

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そんな彼女が初めて女性としての歓びを得たのがアメリカ人作家のネルソン・オルグレンだった。強烈にプロポーズされるシモーヌ。だがしかし、彼女もまたサルトルと同じで彼を捨てることは出来ない。結局この2人は良く似た者同士なのだ。男女がパートナーのような関係で一緒に暮らすというのは個人的には歓迎だ。しかし結婚に伴う家と家との結びつきであったり、家を継ぐ子どもを作らないとという考え方が根強い日本にはパックスは馴染まないとは思うけれど。そうはいっても他の道もあっても良いと思うのだ。男女がパートナーであるという考え方自体も、必ずしもサルトルとシモーヌのような関係ではなくても成立する形があるはずだ。…というように男女のあり方を考えさせてくれる作品だった。

個人的おススメ度3.5
今日の一言:アナは相変わらず美しい…
総合評価:72点

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» サルトルとボーヴォワール 哲学と愛 [あーうぃ だにぇっと]
サルトルとボーヴォワール 哲学と愛@オーディトリウム渋谷。 [続きを読む]

受信: 2012年1月 6日 (金) 10時07分

» *『サルトルとボーヴォワール 哲学と愛』* [〜青いそよ風が吹く街角〜]
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