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2012年1月 7日 (土)

善き人/GOOD

Photo 英国の劇作家C・P・テイラーの舞台劇を映画化。ナチス政権下のドイツで、自らの小説がヒトラーに気に入られてしまったが故にユダヤ人との友情と、自己の保身との間で良心の呵責に苛まれる大学教授を描いたヒューマンドラマだ。主演は『イースタン・プロミス』のヴィゴ・モーテンセン。共演にジェイソン・アイザックス、ジョディ・ウィッテカー。監督はヴィセンテ・アモリンが務める。
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久々のヴィゴ・モーテンセン主演作品は『ザ・ロード』の前年、2008年に公開された作品である。元々英国の劇作家C・P・テイラーの舞台劇であり、原題は「GOOD」というが、むしろそれよりも邦題『善き人』の方が概念的な部分と具体的な部分の中間的曖昧さを表現するのには適しているように思う。監督のヴィセンテ・アモリンはこの作品に普遍性を持たせることを意識したそうだがそれは見事に成功していた。即ち主人公ジョン・ハルダー(ヴィゴ・モーテンセン)は極普通の人間、いわゆる善人であり、この物語で語られることと似たような話は恐らく数え切れないぐらいあったと思われるのだ。話は1930年代、ナチスが台頭し始める時期から始まる。

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ジョンは大学の文学教授。介護が必要な母親と、そんな母親の相手に辟易としてノイローゼ気味な妻そして2人の子どもという家族構成だ。運命の変遷はひょんなことから起こる。彼の書いた小説、それは不治の病に冒された妻を夫が安楽死させる内容だったのだが、それが検閲に引っかかり、更にヒトラーに気に入られたのである。彼は更に「人道的な死」をテーマにした論文を書くように依頼されるのだが、無論当時の社会情勢から考えたらそれは依頼ではなく命令に等しい。そもそもジョンは恐らくその置かれた環境からインスピレーションを得てそんな小説を書いたのだろうが、ヒトラーの受け取り方は違ったはずだ。どう違ったのか、それは誰でも容易に想像がつくはずである。

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ここからジョンの人生は思いも寄らぬ方向へと変転し始める。親衛隊少佐のフレディ(スティーヴン・マッキントッシュ)と知り合い、学部長に昇進すると同時に彼もまたナチスに入党することに。更に妻ヘレン(アナスタシア・ヒル)とは別居ご離婚、愛人として付き合っていた元教え子のアン(ジョディ・ウィッテカー)と暮らし始め、母を実家に帰して1人暮らしをさせてしまうのである。恐らく彼自身はどうしてこうなってしまったのか解らないだろう。もちろんその時々の判断は彼が下したもので、全責任は彼にある。しかし、彼には別に壮大な野心があったわけではなく、あったのはほんのちょっとの自己保身だけだ。そしてそれは別に彼ならずとも誰でも持っている程度のものでしかない。

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しかしそれ故に彼はユダヤ人の親友で精神分析医モーリス(ジェイソン・アイザックス)の事で良心の呵責に苛まれることとなる。身の危険を感じたモーリスはジョンにパリ行きのチケットと出国許可証を手配してくれるように頼むのだが、ジョンは一度はそれを断ってしまうのだ。一応二度目に頼まれた時には試みてはみるものの、駅でフレディと鉢合わせになり失敗してしまう。例えば他の作品ならば機転を利かせたり、平然とウソを突き通して目的を達するのであろうが、この作品ではそうはならない。しかし、ある意味それが現実と言うものだ。モーリスにしてみたら他に手段は無く、藁にも縋る思いで親友を頼ったのだが、ジョンとの温度差、言うなれば命に対する危機感の差があるのが何とも切ない。

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そんなある日、パリのドイツ人外交官がユダヤ人に殺される事件が起こる。これをキッカケにユダヤ人は警察に連行され、収容所に送られることになるのだった。モーリスを救おうと、勇気を振り絞ってチケットを買いモーリスに自宅に来るように伝言を残すジョン。出動する自分に代わって妻のアンにチケットを渡すように頼むが、結局彼は現れなかった…。そして4年後…、ジョンはモーリスの消息を突き止めるのであるが、同時にあの日に何があったのかを知ってしまうのだ。secretそう、モーリスは現れていた。しかしアンが彼をゲシュタポに引き渡したのである。secretこれには観ている方も愕然としたが、しかしだからと言ってジョンに責める権利は無い。secret彼女secretとてジョンと同じく“善き人”に過ぎないのだから。

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ラストシーンは、ユダヤ人収容所を訪れたジョンが呆然と立ち尽くす姿で終わる。それは自らの犯した罪が、単に親友を失ったということに留まっていないことに気付いたからだ。つまりそれはジョンだけではない、この時代に生きた極普通のドイツ市民の罪というべきものである。ナチスを台頭させたのは他ならぬドイツ市民であり、逆に言えば民主主義は黙っていて与えられるものではなく、主張して勝ち取るものであると訴えているように思えてならない。主人公の設定上全く派手さはなく、地味で淡々とした展開となっているが、メッセージが素直に伝わってくる佳作である。

個人的おススメ度3.0
今日の一言:地味なヴィゴ、でもやっぱり上手いなぁ
総合評価:72点

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受信: 2012年1月 7日 (土) 06時01分

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12-10.善き人■原題:Good■製作年・国:2008年、イギリス・ドイツ■上映時間:96分■字幕:渡邉貴子■観賞日:2月4日、ヒューマントラストシネマ渋谷(渋谷)□監督:ヴィセンテ・アモリン□脚本:ジョン・ラサール□撮影監督:アンドリュー・ダン□編集:ジョン・ウィル...... [続きを読む]

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» 善き人            評価★★★55点 [パピとママ映画のblog]
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受信: 2012年5月27日 (日) 13時00分

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