« ピラミッド 5000年の嘘/La révélation des pyramides | トップページ | ディセンバー・ボーイズ/December Boys »

2012年2月22日 (水)

セイジ -陸の魚-

Photo 辻内智貴のベストセラー小説を俳優の伊勢谷友介が『カクト』以来8年ぶりにメガホンを取り映画化。寂れたドライブインを舞台に、ひょんなことからそこに居付いた青年を中心に、謎めいた店長や常連客たちとの係わり合いを描いたヒューマンドラマだ。主演は『CUT』の西島秀俊と『モテキ』の森山未來。共演に裕木奈江、新井浩文、津川雅彦が出演している。
>>公式サイト

西島秀俊の芝居に魅せられた―

book あらすじ・作品情報へ book

にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへみなさんの応援クリックに感謝デスsunshine

01

俳優の伊勢谷友介が監督を務めた作品。『カイジ2 人生奪回ゲーム』『あしたのジョー』などの素晴らしい演技が記憶に新しいけれど、実は監督もやっていたとは初めて知った。物語は二階堂智扮する“僕”がある一通の企画書を手にし、自分が20歳だった20年前の一時期に経験した出来事を回想するというものだ。20年前の“僕”(森山未來)は就職も内定し自転車で旅をしていたのだが、その途中カズオ(新井浩文)の運転する車と接触事故を起こし、彼が常連である山の中の寂しいドライブイン「HOUSE475」に連れて行かれる。セイジ(西島秀俊)はその店の雇われ店長だった―。本作の流れは当然“僕”の目線で進んで行くが、とにかくこの西島秀俊の存在感が素晴らしい。

02

03

登場した瞬間空気が張り詰めるような緊張感がスクリーンから漂ってくる。“僕”との会話の中で「生きるために食うし、そのために働くのだ」という彼に対して「俺は一瞬でいいから生きたいと思うよ」と話す彼はまるで全てを悟っているかのようでもある。個人的に西島秀俊は前作『CUT』あたりから確実に変わったと思うし、彼自身も自分の俳優人生は『CUT』以前と以後に分けられると語っていたが、本作での彼からはまるで『CUT』の秀二と同じような人格を感じた。…と思ったら、実は本作と『CUT』は同時期に撮影していたらしい。ただ全く同じではなく、あちらが激しい狂気だとするならば、こちらは内に秘めた静かな狂気として演じ分けていたように思う。

04

05

“僕”はそんなセイジやセイジを雇った店のオーナー翔子(裕木奈江)、常連の客たちとの交流の中で何となく居心地の良さを感じ店にいついてしまうのだった。もちろん一番の理由はセイジの存在だろう。時として人を寄せ付けない、強固な鎧を身に纏っているかと思えば、ある時は常連客の一人ゲン爺(津川雅彦)の幼い孫娘りつ子と笑顔で遊ぶ一面も見せる。動物愛護団体の人間に対して、「動物を守りたいなら自分が自殺して人間を一人でも減らせばいい」とまで言い切りながら、一方で相手にいきり立つ“僕”には笑みを浮かべながら「彼らが間違っているワケじゃない」と諭すように話しかける…。必ずしも狂気だけでなく、ふと見せる柔らかい優しさに“僕”ならずとも思わず惹きつけられるのだ。

06

07

その“僕”、森山未來は「セイジさんや周りの人たちに振り回されればいいや」という気持ちで演じていたそうだが、実は本作の登場人物の中で彼が最も“普通”であり、いわば観客の目線で物語を俯瞰してくれる彼の存在なくして私たちは映画に入り込むことは出来ないだろう。その意味で今回の森山未來は実に上手く“普通”を演じていた。ところでセイジをこの地に繋ぎ止めている雇い主・翔子を演じた裕木奈江、ドラマ「北の国から」や「ポケベルが鳴らなくて」で一世を風靡したものだが、伊勢谷監督は大学時代からの大ファンだそうだ。実は私もファンだった。相変わらずどこかトンだような演技なのだが、しかしこの作品の翔子という薄幸で憂いをたたえた人物には良く合っていたように思う。

08

09

淡々と過ぎてゆく、どちらかと言うとけだるく代わり映えしない日常が動き始めるのはある日“僕”がセイジの部屋で一本の古い8ミリを見つけたあたりからだ。映っていたのはセイジの妹だった。そこで彼はセイジが心に抱える深い闇の理由を知ることになる。りつ子への優しさは妹への想いを重ねたものであることは想像に難くない。ところがここからとんでもない事件が巻き起こる。従前からこのあたりを騒がせていた連続無差別殺人犯の手によってりつ子の両親が殺され、りつ子自身も左手とその心を失ってしまうのだ。常連客や“僕”がりつ子を心配して見舞う中、セイジは何の反応も示さない。まるでまた同じことを繰り返してしまったと自責の念に駆られているかのようにも見える。

10

11

無論その背景には彼の妹に起こった出来事が影響している。半ばハメられた形でりつ子を見舞うことになったセイジの取った行動は鳥肌モノだった。何故りつ子は片腕を失わなければならなかったのか、彼女に何の罪があったというのか。セイジの行動はまるで人々の罪を背負うキリストの如く、彼女の罪や痛みを自らも背負わんとしたかのようだ。或いは自らの肉体を悪魔に捧げることでりつ子の魂を取り戻そうとしたのだろうか…。いずれにしろ西島秀俊が溜め込んでいた狂気を解き放つが如き演技に魅せられてしまった。原作者の辻内智貴からも高く評価されたという伊勢谷友介の監督としての手腕は確かなものがあると思う。俳優としてもだが、監督としての次回作も楽しみにしたい。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:新井浩文がまたいいアクセントなんだよなぁ
総合評価:77点

にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへ
↑いつも応援して頂き感謝です!
今後ともポチッとご協力頂けると嬉しいです♪

|

« ピラミッド 5000年の嘘/La révélation des pyramides | トップページ | ディセンバー・ボーイズ/December Boys »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/197507/44211531

この記事へのトラックバック一覧です: セイジ -陸の魚-:

» 西島秀俊 最新情報 - Nowpie (なうぴー) 俳優・女優 [Nowpie (なうぴー) 俳優・女優]
西島秀俊 の最新情報が一目でわかる!ニュース、ブログ、オークション、人気ランキング、画像、動画、テレビ番組、Twitterなど [続きを読む]

受信: 2012年2月22日 (水) 08時38分

» セイジ 陸の魚 [とりあえず、コメントです]
辻内智貴著の同名小説を原作に、伊勢谷友介監督が創り上げた人間ドラマです。 西島秀俊さんと森山未來さんが伊勢谷監督とどんな世界を創り上げているのか気になっていました。 救いを求める人の心に呼応するように行動していく主人公の姿に、心を揺さぶられるような作品でした。 ... [続きを読む]

受信: 2012年2月22日 (水) 08時53分

» セイジ -陸の魚-/西島秀俊、森山未來 [カノンな日々]
たぶん『カクト』以来になるんでしょうか?俳優・伊勢谷友介さんが監督として久々にメガホンをとった作品は辻内智貴さんの同名ベストセラー小説の映画化です。監督としての伊勢谷 ... [続きを読む]

受信: 2012年2月22日 (水) 09時15分

» 「セイジ 陸の魚」:主人公が? but 撮影が見事 [大江戸時夫の東京温度]
映画『セイジ 陸の魚』は伊勢谷友介の第2回監督作品。前作『カクト』は暗く乱調な失 [続きを読む]

受信: 2012年2月25日 (土) 00時58分

» セイジ -陸の魚- [花ごよみ]
原作は辻内智貴の小説。 監督は伊勢谷友介。 主演は西島秀俊。 国道沿いのドライブインの 雇われ店主セイジを演じます。 大学最後の夏休みを利用して、 自転車で一人旅へ、 その途中に起きた自転車事故がきっかけで、 セイジのいるドライブインに、 住み込みで働くよ...... [続きを読む]

受信: 2012年2月26日 (日) 16時00分

» ■映画『セイジ 陸の魚』 [Viva La Vida! <ライターCheese の映画やもろもろ>]
「NHKドラマスペシャル 白洲次郎」での白洲次郎役、「龍馬伝」での高杉晋作役などで知られる俳優・伊勢谷友介の8年ぶり2作目となる監督作『セイジ 陸の魚』。 20年前の山間のドライブインを舞台に、人生の波間をたゆたっているような登場人物たち過ごす一夏の模様を描いていま... [続きを読む]

受信: 2012年2月27日 (月) 19時19分

» 『セイジ 陸の魚』 [ほし★とママのめたぼうな日々♪]
    西島秀俊さんに森山未來くん、そして伊勢谷監督。 このイケメンさん3人期待は膨らむ~~ (監督は出演されていません [続きを読む]

受信: 2012年2月29日 (水) 08時27分

» セイジ−陸の魚− [佐藤秀の徒然幻視録]
伊勢谷友介流再生の哲学 公式サイト。辻内智貴原作、伊勢谷友介監督。西島秀俊、森山未來、裕木奈江、新井浩文、渋川清彦、滝藤賢一、二階堂智、津川雅彦。俳優としての知名度の ... [続きを読む]

受信: 2012年3月 7日 (水) 22時04分

» セイジー陸の魚ー(2011) [銅版画制作の日々]
 破滅と救いが世界を変えていく。 評価(好き度):+5点=65点 久しぶりに邦画を鑑賞。西島秀俊君主演ということで気になっていた作品。 西島秀俊ってこういうキャラ、本当に似合うな。破滅的って感じが良く出ているよね。言葉少ないところは魅力的じゃあないです...... [続きを読む]

受信: 2012年3月12日 (月) 00時22分

» セイジ 陸の魚 [映画的・絵画的・音楽的]
『セイジ−陸の魚−』を新宿テアトルシネマで見ました。 (1)この映画は、西島秀俊と森山未來という旬の俳優が出演し、さらにTVドラマ『白洲次郎』の主役を圧倒的な演技力で演じた伊勢谷友介が監督だというので、見に行ってきました。  物語は、“僕” (二階堂智)が昔のあ...... [続きを読む]

受信: 2012年3月26日 (月) 21時39分

» 『セイジ 陸の魚』をテアトル新宿で観て………そう言えば観たなあふじき★★★ [ふじき78の死屍累々映画日記]
五つ星評価で【★★★ラストのアレはいいけど、そこに行きつくまではちょっとだれる】 裕木奈江ちゃんが出るからには観に行かないと、という事でGO。 うん、まあ、奈江ちゃん ... [続きを読む]

受信: 2012年4月 1日 (日) 01時48分

» セイジ −陸の魚− [迷宮映画館]
そんなにこの世界はきついのだろうか・・・。 [続きを読む]

受信: 2012年6月 4日 (月) 12時54分

« ピラミッド 5000年の嘘/La révélation des pyramides | トップページ | ディセンバー・ボーイズ/December Boys »