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2012年2月 9日 (木)

ハンター/The Hunter(2011)

Photo オーストラリアのタスマニア島を舞台にし、絶滅したといわれるタスマニアタイガーを探し求める孤高のハンターを描いた人間ドラマ。主演は『アンチクライスト』のウィレム・デフォー、共演に『A.I.』のフランシス・オコナー、『デイ・ブレイカー』のサム・ニールらベテランの実力派が揃う。監督はダニエル・ネットハイム。
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守るべきものを手にしたハンター

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タイトル通りハンターを職業とするある男の物語なのだが、ハンターと言ってもいわゆる狩人とは少し趣が異なる。この物語の主人公マーティン・デヴィッド(ウィレム・デフォー)はバイオ・テクノロジー企業“レッド・リーフ”社からの依頼で既に絶滅したといわれるタスマニアタイガーを見つけ出し、その生体サンプルを採取するのがその任務だった。ちなみに私はこれを聞いてプラントハンターの西畠清順氏を思い出した。新種・突然変異種といった希少植物を追って世界を飛び回るプラントハンターはもしそれらを発見できればその植物そのものであったり、その植物の持つ固有の遺伝子を利用することで莫大な富を生み出すことが出来る可能性がある。

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対象は動物だがタスマニアタイガーの場合は絶滅したと言われているわけで、しかもレッド・リーフ社が欲するタスマニアタイガーの毒のDNAを独占できたとすればこれは恐らくとんでもない額の金が動く話なワケだ。しかし生体サンプルだけでよいということは要するに動物園が保護するようにその動物そのものを捕獲するのが目的ではなく、DNAの解析が出来るサンプルが得られれば良いということで、例えそれが世界中で最後の1匹だったとしても躊躇無く殺すということを意味している。これでは彼の方はあまり表通りを胸を張って歩ける職業ではないことは確かだ。と言うワケで、どこか陰を背負ったようなマーティンはタスマニア島で活動を開始する。

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ベースとしたのはルーシー(フランシス・オコナー)と娘サス、弟バイクの一家の家だった。前半はタスマニア島の森林の中で自然を利用した罠を作ったり、鉄製の罠を仕掛けたりする彼の姿が映し出されるのだが、どちらかと言うとタスマニアタイガー探しよりも、彼とルーシー一家、特に子どもたちと交流が深まる部分にフォーカスがあてられていた。とはいえタスマニアデビルのような島ならではの動物が登場したり、どこか神秘的で幻想的でさえあるタスマニアの自然の風景はマーティンならずとも「ここならタスマニアタイガーはまだどこかにいるのでは?」と思わされてしまう何かがある。実は子どもたちとの交流には物語の進行2つの大きな伏線があった。

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1つは弟バイクがタスマニアタイガーを目撃した場所を知っていたこと。そしてもう一つは彼らの行方不明になった父親の存在だ。特に父親の存在は終盤に死んでいることが判明するが、要するに彼もまたレッド・リーフ社からの依頼でタスマニアタイガーを探していたのだった。結局本作ではマーティンが何か行動するたびに、タスマニアの自然に関わる人間の醜さだけが次々浮かび上がってくる。その醜さは“欲望”であったり“嫉妬”であったり“猜疑心”であったりという、凡そ普通の人なら誰でも持ち得るものであるところがミソだろう。それらの醜さと無縁だったのがサスとバイクの姉弟であり、タスマニアタイガーそのものだったように思う。

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この後マーティンはルーシーとサスを火事で失うのだが、それは詰らない人間の詰らない嫉妬心が原因だった。しかもレッド・リーフ社は自分の後任を送り込み、彼は襲ってきたその後任を返り討ちにする。タスマニアタイガーの存在が人間に争いを引き起こす、それはタイガーに責任がある訳ではないのは当然だ。しかし現実は大切な存在をマーティンから奪っていったのだ。最終的にマーティンはタスマニアタイガーを発見しそれをスコープに納める。引き金を引くのか引かないのか。引けば最後の一匹を自らが葬り去ることになるが、自分がやらねば誰かがまた送られてくるのは明白であり、また同じことが繰り返されることになる。デフォーの演技、この一瞬の躊躇と覚悟の絶妙の間合いに痺れた。

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電話でレッド・リーフ社にタスマニアタイガーはいなかった、自分を捜さないでくれと言い残す彼だが、無論敵が黙って言う通りにするわけはないだろう。バイクを連れたマーティンはこれからどうするのか。しかし、今度こそ彼にとって唯一無二の存在となったバイクを彼は守り通すことに全てを費やすのだろうと思う。

個人的おススメ度3.0
今日の一言:不思議な光景だったなぁ…
総合評価:67点

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