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2012年3月11日 (日)

311

311 東日本大震災から2週間後、映画監督の森達也・映画プロデューサーの安岡卓治・ジャーナリストの綿井健陽、松林要樹の4人が被災地現認のために現地入りし、カメラを回したものをドキュメンタリーとして構成した。大震災の記録の側面もあるが、メディアのあり方、日本人の心の在り方を考えさせられる。
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見つめ直すべきは彼らだけじゃない

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この作品をどう評価するかはとても難しい。はっきり言うと作品そのものとしてのクオリティはかなり低い。映っている映像そのものに、恐ろしいまでの力があるから何とか成立するが、こういっては何だが311関連の映像ならばYoutubeを観れば無数にあり、本作とどうレベル以上の映像を観ることが出来るだろう。それにドキュメンタリー映画としての狙いどころや取材姿勢も評価できるのは、震災から僅か2週間後に現地にとんだフットワークの良さだけだ。しかし、実はこの点に関しては作品を観る前に森達也監督が舞台挨拶で語ってくれていた。要するに4人とも“そもそも映画にするつもりなんてなかった”ということなのだ。つまりとにかくいてもたってもいられなくて現認に行っただけ。

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現地を見て見たいという純粋に好奇心といったら被災地の方々怒られるかもしれないが、その気持ちが彼らを突き動かしている。ただそれに関しては彼らを責めることは出来ない。我々だってあの当時は連日テレビにかじりついて、悲惨な津波の映像や福島第一原発の映像に見入っていたはずだ。まして彼らはジャーナリスト、人よりもその気持ちが強いのが当たり前である。森監督は自らも含めたそうした好奇心を“うしろめたさ”という言葉で表現していた。それを流すマスコミ、受け止める国民、あの時私たちは津波の映像をみて「これは果たして現実なのか?」と思ったが、被災地にとっては紛れもなく現実以外の何ものでもなく、それと乖離した我々の気持ちを振り返ってみるべきだと作品は問うている。

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したがって本作に登場する4人が福島第一原発に向かうときのはしゃぎぶり、へたれぶりは今観るとかなりのKYぶりだ。原発に近づくに連れて線量計の数値がドンドン上昇すると「東京の○十倍です!かなり高い線量です!」とエキセントリックに口にする一行。そのくせ車がパンクしたのをきっかけに、取材計画の甘さや準備不足を理由に原発に対する取材を回避。まあ最初から究極の物見遊山の現地入りなのだから当たり前なのだが。被災地に入った後の瓦礫の山、それも2週間後の様子は一行の反応はともかくとして画的にはやはり絶句するしかなかった。何しろ目線がマスコミ的ではなく、本当に観に行った人間の範囲なので余計に実感が湧く。隣の席の女性などはあからさまに泣いていた。

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被災地のシークエンスでは2つ強く印象に残ったシーンがある。1つは石巻市の大川小学校近辺で行方不明の子供を捜す母親へのインタビューシーンだ。色々話を聞くなかでお母さん方の「やり場のない怒りをどこにぶつけたらいいのか…」というつぶやきに対して、森監督は「私たちにぶつけてください。私たちはそれも仕事ですから。」と話す。よくもまあそんな歯の浮くようなことが言えたものだ。流石は自らの無様な姿をそのまま見せたと言うだけのことはある。「見つかって欲しくないという気持ちもあるんじゃないですか?」という質問にも著しく違和感を感じたのは私だけだろうか。もう1つ印象に残ったのが遺体発見現場を撮影している時のシーンだ。

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ブルーシートに横たわる子供の遺体、もちろんボカシはかかっているが、それを撮影している森監督に住民が怒りをぶつけて揉め事になる。「興味本位で撮影しているのではない」「何があったのかを伝えるのが僕らの仕事」そういう監督だが、そもそも上映前の舞台挨拶であなたは「とりあえず現認するために行っただけで、最初は映画にするつもりなんかなかった」「撮影したのはあくまでも自分の記録として」と言っていたではないか。それはそのまま「興味本位で撮影していた」わけだし「撮影した映像は広く国民に伝えるつもりはない」という意味ではないのか。結果的に映画になったからこそこの時の発言は意味を持ってはいる。しかしもしそうでなければ発言は嘘だったことになる。

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私もマスコミ人の端くれに籍を置くものとして、監督が現場に向かった考えそのものは否定しない。むしろそうあるべきだとすら思う。先の発言にしても、取材中に考え方が変わってきたのなら、そう示せばよいだけだ。それがないと自らの不様な姿をさらすだけでなく、マスコミが一方的に悪になりかねない。森監督は今でも映画として上映することが良いことなのかどうか解らないと語ってもいた。まさにその迷いがそのまま現れている作品だったと思う。本作はドキュメンタリー映画としての面白さではそこそこ程度だと思う。しかし観る価値はある。観てその上で文句があるならそう言えばよい。ただ、誰かを悪者にしてそれで済むような問題ではないと思う。反省すべき点は我々にも多いから。

個人的おススメ度3.0
今日の一言:森達也監督自身に興味が湧いた
総合評価:66点

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