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2012年3月 8日 (木)

SHAME -シェイム-/Shame

Shame セックス依存症の男の心の苦しみを赤裸々に描いた問題作。行きずりの女やコールガールとセックスし、家に帰ればアダルトチャットやオナニーばかりという極度のセックス依存症の男の家に、恋愛依存症の妹がやってきて…。主演は『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』のマイケル・ファスベンダーと『17歳の肖像』のキャリー・マリガン。監督はイギリスの新鋭スティーヴ・マックイーン。
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3月10日(土)公開

セックスの意味って何だろう

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最初に驚いたは「あのスティーヴ・マックイーンが監督した作品?」ということだ。これがとんだ間違いで、同姓同名のアフリカ系イギリス人監督。そもそも俳優の方は30年以上前に亡くなっているのだから当然だ。ニューヨークに住むブランドン(マイケル・ファスベンダー)は独身貴族。仕事も有能でスタイルも良くイケメンで女性が放っておくはずがないのだが、そんな彼が独身を通していたのは彼が極度のセックス依存症だったから。冒頭、ベッドから起きてきたマイケル・ファスベンダーはすっぽんぽん。当然前もブラブラ状態でボカシが入る。これは確かにR18+も仕方ないだろう。宣伝ではやたらセックスを前面に押し出していたが、全体を通してみると実はそう過激ではない。

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終盤コールガールとのシーンが少し激しいぐらいで、同行した友人は「自分でしてる方が多かったような…」というレベルだ。序盤はそんな彼の生活スタイルが描かれているが、これがセックス依存症かと言われると、そんなものなのかという感じでだった。娼婦を呼んだり、ナンパした女とやったり、暇さえあればオナニーしたり、電車の中で気に入った女性をガン見したり…、この程度はある程度若く健康な男性なら当たり前な気がするのだ。ただし、こうした一見表面的事柄は、実は彼の内面を表す上で重要な一点を意味している。それは女性をセックスの道具にしか見ていないということだ。例えば電車の中で気に入った女性をガン見するシーンでは、恐らくマイケルは心の中で彼女を脱がし犯している。

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マイケルの目つきや表情が実に嫌らしい。スマートでイケメンの顔が、男から見ても下種な野郎に変貌する芝居、彼はこの芝居のために自らの心の内にある醜さを曝け出しているのだろうか。つまり表面的にセックスに溺れることよりも、ブランドンがそうした心理状況に陥るメカニズムこそが病なのだろう。さて、そんな毎日を送っている彼の元に、ある日恋人に捨てられた妹・シシー(キャリー・マリガン)が転がり込んでくる。驚いたことに兄妹の再会シーンはバスルーム。ここで何とキャリー・マリガンがオールヌードを披露してくれた。それもアンダーヘアまで。全編通して他は全てボカシ入りなのにどうしてあそこだけナシなのか。キャリーファンとしては嬉しいような残念なような気持ちである。

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さて、たとえ妹と言えども他人は他人。一人暮らしで好きなように性生活を送れていたのが、当然ながらある程度の我慢をしなくてはならなくなる。この気持ち、一人暮らしをした男なら、アパートに家族が何日か泊めてくれなどと言ってきた時に感じたことがあるのではないか。私はある。しかもアダルトチャットやオナニーが妹にバレたりすれば、そりゃ恥ずかしさを通り越えて怒りにもなるというものだ。例えば男なら誰しも母親にエロ本が見つかった経験があるはずで、それの10倍酷いと思えばいい(苦笑)この2人の関係が面白いのは、兄が孤独を愛するのに対して妹は人との繋がりを、愛を渇望する点だった。例えばシシーは兄の上司デビッド(ジェームズ・バッジ・デール)を紹介される。

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女と見れば声を掛けまくるデイビッドと意気投合した彼女は、何と会ったその日にセックスしてしまうのだ。これは皮肉としか言いようが無い。妹のせいで家でセックスできないのに当の妹はよりによって自分の上司と自分の部屋でやっているのだから。ならばとばかりにブランドンは会社の同僚マリアンヌ(ニコール・バハーリー)をデートに誘うが、その日は微妙な形で別れる。ところが後日、欲求不満で遂に何かがはじけた彼は、マリアンヌをホテルに引っ張り込むのだった。だが彼は出来ない。要するに勃たなかった。別に不能になったわけではない。直後に呼んだコールガールとは出来ている。結局の所、彼にとってのセックスはオナニーと同じことなのだと思う。

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そこに人と人との心の繋がりが介在したら、逆に言えば繋がりのある人間の前では勃たないけれど、女性をセックスの道具としてしか見ていなければ勃つということだ。妄想でやろうが、アダルトチャットを見ながらしようが、娼婦を呼ぼうがそこに共通するのは性器への機械的な刺激しかないということ。肉体的な快楽だけを求めて来た彼は、心の繋がり、愛情を伴うセックスに対応できなくなっていた…。シシーの身に起こった衝撃的な出来事を経たラストシーンは冒頭と対になる電車の中だ。明らかに彼を誘っている女性、それに対する彼のなんとも微妙な目つき。私は彼は誘いに乗ったと思う。何故なら彼はセックス依存症だから。相手の女性がセックスの道具としてのみの存在ならば彼は迷うことなく応えるはずだ。その思考こそが「SHAME」なのだと思う。

3月10日(土)公開

個人的おススメ度3.0
今日の一言:キャリーの歌のシーンなげーよw
総合評価:66点

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