ピナ・バウシュ 夢の教室/Tanzträume
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実はこれより先にヴィム・ヴェンダース監督の『Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』を観ていたが、そもそもピナ・バウシュという名前自体この映画の予告編で初めて知った私にはちと敷居が高過ぎた。素晴らしいダンスであることは感じられたのだが、そもそもコンテンポラリーはもとよりバレエやダンスに対する知識も見識もないので、素晴らしい以上の言葉が出てこないのだ。で、この作品。正直言うとこれでもまだ敷居は高い。だがピナ・バウシュと名前は入っているものの、主人公は彼女ではなく40人のティーンエイジャーたちだった。彼らはピナの『コンタクトホーフ』という作品を踊るために集められた子供たちで、全員がダンスの素人である。
おかげで私レベルの人間でも純粋にドキュメンタリー映画として楽しむことが出来た。本編は子供たちの稽古風景に密着しながら、合間合間にインタビュー映像が入ってくる。肝心のピナ本人は自らの仕事に忙しく、たまに稽古場にやってきて指導する程度で、物語の大半はベネディクトとジョーという2人の女性が教えていた。あとで調べてみるとこの2人、ピナが芸術監督を務めるヴッパタール舞踊団の元ダンサーなのだそうだ。集められた子供たちは実に様々で、身長もばらばらだし、白人も黒人もいるし、ガリガリに痩せている子も、ぽっちゃりな子もいる。面白かったのは、彼女たちは素人でありそれに対してプロが指導するのに割とアッサリ「出来ないわ。」などと言ってしまうこと。
私たちが聞いていると「黙って練習しろよ」とか「言い訳するな」とか思ってしまうような事を平気で口にするのだが、先生たちはそれに対して普通に答えているのだ。出来ないなら何故出来ないのか、どうしたら上手く行くのか一緒に考えましょう、このスタンスが素晴らしいと思う。ピナが稽古を観に来た時はベネディクトとジョーの2人とピナとの対比がユニークだ。2人は常日頃子供たちに接しているぶん、どうしても彼らに情が移る。上手く踊って欲しいと思う気持ちが思わずその態度に出て、一生懸命合図や身振りをしてしまうのだが、半面ピナは黙って厳しい目線で見つめ指導するのだ。もちろんその姿勢はちゃんと子供たちに伝わり、彼らは短いながらも有意義な時間を過ごしていた。
愛がテーマと言うだけあって子供たちらしい恥じらいを見せるのも面白い。恋の経験がない子、彼女がいるけど自分はピナの振り付けのように彼女には接しないと得意げな子、子供らしい感性は大人と違ってその広がりは無限大に思える。当然ながら男女で体を触れ合うパートもあるし、それどころか下着だけになるシーンもあるのだが、子供たちが相手でも妥協なく愛を表現させようとするあたりも、日本人の考え方とは大きく違うものだと感心した。そして本番。この手の練習シーンに密着して本番という構成はドキュメンタリーとしては珍しい手法ではないが、やはり過程の努力を知ってみるとコチラまで上手くいってくれと緊張してしまうし、上手くいったときのカタルシスは堪らないものがある。
舞台を見ていてハッと気付く。そうそうこれは『Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』でも観たじゃないかと。もちろんあちらは大人の演技だけれど、どういう風に作りこんだのかを知っているといないとでは受け止め方がまた違うものだ。盛大なスタンディングオベーションに包まれ、ピナからバラを受け取る子どもたち。これから先ダンスの世界に進むものもいればそうでないものもいるのだろうが、この1年間が彼らに与えた影響が人生を左右する程に大きいのは想像に難くない。この作品を観たらあらためて『Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』を観たくなった。少しだけピナを知った今、あの子が踊っていたあのシーンをピナはどう踊っていたのかもう一度確認してみたい。
個人的おススメ度4.0
今日の一言:欧米人の子供はませてますなぁ(笑)
総合評価:78点
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