第九軍団のワシ/The Eagle
ローズマリー・サトクリフの同名小説を映画化。ローマ帝国時代のブリテン島スコットランドを舞台に、ローマ人の青年とブリタニア人の奴隷が、青年の父の名誉を回復すべく第九軍団の象徴であるワシの紋章を探す旅にでる。主演は『G.I.ジョー』のチャニング・テイタムと『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』のジェイミー・ベル。監督は『消されたヘッドライン』のケヴィン・マクドナルド。 |
オーソドックスに楽しめる歴史物語 |
あらすじ
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至極単純明快な歴史作品として楽しめる。ローマ帝国の西の外れ、ブリテン島スコットランドを舞台にしているのだが、それにしても現代のイギリスがまだ僻地だった頃のお話というのが面白い。しかも主人公マーカス・アクイラ(チャニング・テイタム)の奴隷として物語の中心を担うブリタニア人のエスカ(ジェイミー・ベル)はこの物語の中では野蛮人扱いなのだ。にもかかわらず登場人物全員が英語で話しているのに思わず突っ込みを入れたくなってしまうのだが(笑)マーカスの父はローマ帝国第九軍団5000名の指揮官フラビウス・アクイラという。ある日北方の蛮族を討伐に出た第九軍団は全員が忽然と姿を消し、同時に彼らが掲げていた黄金のワシの紋章も行方知れずとなってしまうのだった。
観ているとローマ軍団における紋章は、日本の幕末における錦の御旗のような重要な存在で、第九軍団を失ったことそれ自体よりも紋章を失ったことが、アクイラ家にとってはずっと恥になるほどだった。そして20年後…マーカスは父の汚名をそそぐべく、自らも軍に入り僻地で活躍する。この戦闘シーンがまたいい。夜襲に対して、予め仕込んでおいた油に火を投げ入れて火攻めにしたり、訓練を重ねた兵士がマーカスの号令一下に陣形を変化させたり、盾を構えて防御を固めながら隙間から槍を突き刺したり剣を振るう姿は人間同士が闘う原点のようだ。人物に密着したカメラが伝えるその迫力は騎馬や銃火器によるものとは違う泥臭さ汗臭さが伝わってくる。
この辺は『ラストキング・オブ・スコットランド』、『アンチクライスト』、『127時間』などを手がけ『スラムドッグ$ミリオネア』でオスカーを獲得している撮影監督アンソニー・ドッド・マントルの腕が光る所だろう。戦闘はマーカスの活躍で勝利するものの、彼自身はこの戦いで負傷して名誉除隊となってしまう。さて、かなり長いのだが実は物語的にはここまでがプロローグともいえる。マーカスを演じるチャニング・テイタムはハンサムで体格も良いという外見を存分に活かしつつ、役柄上でも頭が良くて正義感に溢れているという、もうこれ以上ないぐらい模範的で優秀な男として描かれている。その彼が闘技場で命を救ったのがエスカだ。物語の本題はこの2人が紋章を探して旅に出るところから始まる。
そもそも何故そんな旅に出るのかと言えば、蛮族たちの神殿に、黄金のワシの紋章が隠されているという情報を得たからだ。エスカは蛮族の言葉もしゃべれるし、そもそも地理にも明るい。ただ実はエスカの父親は第九軍団によって殺されていた。ここがミソで、父の仇の息子が命の恩人なのだ。ただエスカの葛藤はそれほど強くは描かれていない。一応は旅に出てしばらくの間はマーカスが蛮族の言葉をしゃべれないのをいいことに、目的地にたどり着かないように誘導するも、彼にばれてケンカになるシーンはある。ただこれはマーカスへのささやかな抵抗とも取れるし、命の危険を冒す彼をこれ以上先に進ませたくないという優しさとも取れるような気がした。
それでも旅を続けるうちに、マーカスとエスカの絆は太くなってゆく。少し残念だったのは、その過程でもう少しエスカの心の葛藤と、マーカスとのぶつかり合いがあっても良いのではないかということ。清廉潔白にして真っ直ぐな正義感の持ち主であるマーカスは確かに魅力的だし、だからこそエスカに復讐の念を忘れさせたとも取れるが、何度かのぶつかり合いを経たほうが説得力がある。森の中で出会った第九軍団の生き残り、そしてアザラシ族に囚われ裏切ったと見せかけるエスカ、お話の流れは簡単に予想が付くのだが、いわゆる模範的な物語としてのカタルシスは感じられた。ラストで第九軍団の生き残りとマーカス、エスカがアザラシ族の戦士たちと戦うシーンは感動的ですらある。オーソドックスに楽しめる歴史映画だ。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:変な恋愛物語が絡まないのがいいな
総合評価:65点
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