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2012年4月 3日 (火)

少年と自転車/Le gamin au vélo

Photo_2 ベルギーのジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ兄弟が監督し、第64回カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞した作品。父親に捨てられ孤児院に入れられた少年が、里親の女性と出逢い少しずつ心の傷と癒し成長していく姿を描く。主人公シリルを演じるのはトマス・ドレ、里親の女性を『シスタースマイル ドミニクの歌』のセシル・ドゥ・フランスが演じている。
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絶対認めたくない少年だ

 あらすじ 

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最初に書いておくと、私はこの作品がどうしても好きになれない。というより主人公シリル(トマス・ドレ)のような子供が大嫌いだ。従ってこの作品が気に入っていて、シリル少年の成長する姿に感動された方は読まないで頂きたい。間違いなく不愉快になるだろうから。その主人公シリル少年は父親に捨てられる形で児童養護施設に預けられる。この父親役がジェレミー・レニエというのが少し意外だった。事情は良く解らないが、シリルに行き先も告げずにいなくなってしまったようである。子供にとって理由もわからずいきなり施設に入れられ、しかも何時までその状態が続くのか解らないのは不安で仕方ないだろうし、それ故にヒステリックで我儘になるのは仕方ないだろう。

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だから施設から何度も脱走しようとしたり、施設の先生に直ぐに逆らったり、人の癇に障るような態度を取ったりするのは私も止むを得ないと思う。そんな時偶然出会ったのがサマンサ(セシル・ドゥ・フランス)だった。彼女はシリルの事情を知り、彼が父親に買ってもらった宝物の自転車を見つけて買戻し、施設まで届けてくれる。正直言ってそれだけでもう私などは何と奇特な女性なのだと思ってしまうのだが、欧米ではその程度は当たり前なのだろうか?ともあれこのタイミングでシリルはサマンサに自分の里親になってくれるように直訴する。自転車を届けにいっていきなり「里親になってくれ」とは彼女もいたく驚いただろうが、週末だけという条件で彼女はそれを引き受けるのだった。

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ところで欧米の映画の中ではいとも簡単に里親になる姿が映画ではよくみかけるけれど、実際もそうなのだろうか?ハリウッドスターが養子をというニュースは良く聞くが、彼らはお金に困らないセレブである。しかしサマンサは小さな美容室を経営しているに過ぎない。しかも彼女はシリルの里親になるために付き合っていた彼氏を捨てたりまでする。一体何が彼女にそこまでさせるのか、物語では全く描かれなかった。従ってサマンサの感覚に私はどうしてもついていけない。シリルは自ら懇願して里親になってもらったにも関わらず、彼女の言うことに一々逆らうような行動を取る。自分だけが悲劇の主人公にでもなったつもりなのだろうが、骨の髄まで甘えているこの手の子供は本当に大嫌いだ。

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しかしサマンサは根気良く話しかけ、彼の良き里親足らんとするのだから尊敬する。尊敬するがしかし全く彼女の考えは解らないし解りたくない。そうして甘やかしているから付け上がり、彼女の腕をハサミで刺して怪我を負わせたりするのだ。本来今シリルの置かれた状況を考えれば彼は子供のままでいてはだめなのは明白。残念で哀しいことだけれど、親に捨てられたのは事実であり、そしてそんな子は世界中に腐るほどいる。もちろんそんな子供の気持ちなど私には全く解らない。そうした子供たちがするべきは少しでも早く大人になることだ。従って子ども扱いするのではなく、自分の行動に対して責任をもたせ、犯した罪にたいしては叱るべき報いを受けさせるべきである。

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物語的にはシリルは自分の行いを反省し、親を喪失した痛手から立ち直ったことになっているが、そのためある程度までなら周りに迷惑をかけることも赦されるとは思う。だが、バットで書店の店主とその息子の頭をぶん殴って金を奪い、先に書いた通り里親の腕をハサミで刺し逃げるようなことはもはや限度を越えている。強盗に関しては何やら不良の少年の指図で行ったことになっているが、あれはどう見ても自らの意志で行ったものだ。彼の役に立ちたいからとそう言っていたではないか。その根本原因がなんであれ、自ら判断し自ら取った行動なのだ。賠償金をサマンサが払うことになっているが、いずれは本人に弁済させるべきだろう。こんな作品を感動物語と呼んではいけない。

個人的おススメ度2.0
今日の一言:無理。
総合評価:52点

作品情報
キャスト:セシル・ドゥ・フランス、トマ・ドレ、ジェレミー・レニエ
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
脚本:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
原題:Le Gamin au velo
製作国:2011年ベルギー・フランス・イタリア合作映画
配給:ビターズ・エンド
上映時間:87分

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