センチメンタルヤスコ
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観ている自分がセンチメンタルヤスコ |
あらすじ
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これは意外に掘り出し物の作品。堀江慶監督が、自ら主宰する劇団CORNFLAKESの舞台劇を映画化したものだが、舞台劇らしく基本は1シチュエーションながらも描かれる人間像に関してはとても広がりを感じさせる作品だ。ある日、黒澤東花(岡本あずさ)という女性が首を絞められ窒息状態で病院に搬送される。彼女はキャバクラ嬢で源氏名をハタヤスコといった。彼女の携帯電話に残されていた着信履歴から警察は7人の男を彼女の収容された病院へと呼び寄せ事情を聞き始める。面白いのはその7人の告白が回想されることでヤスコの人となりが描き出されていくことだ。それにしてもいきなり他人がいる前で事情聴取を始めてしまう刑事には思わず笑った。個人情報ダダ漏れだ(笑)
7人の容疑者たち |
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この7人の男たちはそれぞれが実に個性的で、それぞれがそれぞれの特性に合った形でヤスコとの関わりを持っている。それぞれがヤスコとどういう関係だったのかを回想するのだが、それを観ているだけでも結構面白いものだ。ただ全員が全員平等にフィーチャーされているかといえばそんなことはない。例えば店員の駒形はヤスコと寝ているシーンこそあるものの、殆どといって良いほど存在感がないし、不動産屋の赤城は彼女に六本木のマンションを仲介しただけ。エアコン設備工の小林は文字通り彼女の部屋にエアコンを取り付けただけだし、塾講師の飯島は倒れていたヤスコの第一発見者で過去に彼女を知っていたのだが、現在ではそれ以上でも以下でもない関係だ。
という訳で重要人物は3人、社長弓永と元寿司屋の天童、そして性同一性障害の横山である。もちろん普通に観ている段階ではこれは解らない。最後まで観た結果こうだったという話だ。特に天童とヤスコの関係は何故かこの物語では中核をなすぐらい厚めに描かれているのだが、それはヤスコの持つ心の闇を理解してあげられる人間だったからかもしれない。天童は万引き癖があり、ヤスコは彼のそんな癖を治してあげる。7人の内、生物学的に男である6人全員と彼女が寝たのかはわからない。しかしそういう意味での関係以外で、彼女が男に何かをしてあげるパターンなのは天童だけだった。ただ、だからと言ってこの2人が特別な恋愛関係にあるかというとそうではないところがまた風変わりで面白い。
徐々に明かされるヤスコの心の闇、それは彼女の両親の死に関することで、同時に彼女自身に降りかかった今回の窒息事件に密接にリンクしてくる。結論から言うとヤスコは死亡してしまうのだが、本作はヤスコ殺人事件の犯人探しをするミステリードラマではない。何故ヤスコが死なねばならなかったのかそこに着目したヒューマンドラマである。7人の口から語られるヤスコの言動、彼女の苦しみ、彼女の哀しみは私には理解や共感はできないが、世の中にはここまで孤独な人間がいるのかとしみじみと考えさせられてしまった。で、気がつく。なるほど、私を含め観ている人間までも「センチメンタルヤスコ」になっているではないかと。上手い。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:地味だけど役者がいいなぁ…
総合評価:71点
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