« モンスターズクラブ | トップページ | ロボット/Endhiran »

2012年4月27日 (金)

センチメンタルヤスコ

Photo_3 ある日キャバクラ嬢のヤスコが殺され、その容疑者の男性7人が集められる。彼らの口から語られるヤスコの人物像、そこに彼女の真実があった…。ヤスコを演じるのはドラマ「ケータイ刑事 銭形命」の岡本あずさ。他に滝藤賢一、和田正人、山崎一、仁科貴ら個性的な面々が揃う。監督・原作・脚本は『ベロニカは死ぬことにした』の堀江慶。
>>公式サイト

観ている自分がセンチメンタルヤスコ

 あらすじ 

にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへみなさんの応援クリックに感謝デス

01_2

これは意外に掘り出し物の作品。堀江慶監督が、自ら主宰する劇団CORNFLAKESの舞台劇を映画化したものだが、舞台劇らしく基本は1シチュエーションながらも描かれる人間像に関してはとても広がりを感じさせる作品だ。ある日、黒澤東花(岡本あずさ)という女性が首を絞められ窒息状態で病院に搬送される。彼女はキャバクラ嬢で源氏名をハタヤスコといった。彼女の携帯電話に残されていた着信履歴から警察は7人の男を彼女の収容された病院へと呼び寄せ事情を聞き始める。面白いのはその7人の告白が回想されることでヤスコの人となりが描き出されていくことだ。それにしてもいきなり他人がいる前で事情聴取を始めてしまう刑事には思わず笑った。個人情報ダダ漏れだ(笑)

7人の容疑者たち

Yuminaga0_3弓永聡(和田正人)
IT関連企業社長
ヤスコにプロポーズするも断られる。

Tendo0_3天童純平(滝藤賢一)
元寿司屋
ヤスコに万引き癖を治して貰う。

Komagata0駒形和樹(高木万平)
キャバクラ店員
ヤスコの勤めるキャバクラの店員。

Yokoyama0横山晶(我妻三輪子)
盗聴魔
性同一性障害で引きこもり。

Akagi0赤城宗久(坂田聡)
元バブルの不動産王
ヤスコに六本木のマンションを仲介する。

Kobayashi0小林大吉(仁科貴)
エアコン設備工
ヤスコの部屋にエアコンを設置する。

Iijima0飯島圭介(山崎一)
塾講師
幼い頃のヤスコの友達の父親。

02_2

03_4

この7人の男たちはそれぞれが実に個性的で、それぞれがそれぞれの特性に合った形でヤスコとの関わりを持っている。それぞれがヤスコとどういう関係だったのかを回想するのだが、それを観ているだけでも結構面白いものだ。ただ全員が全員平等にフィーチャーされているかといえばそんなことはない。例えば店員の駒形はヤスコと寝ているシーンこそあるものの、殆どといって良いほど存在感がないし、不動産屋の赤城は彼女に六本木のマンションを仲介しただけ。エアコン設備工の小林は文字通り彼女の部屋にエアコンを取り付けただけだし、塾講師の飯島は倒れていたヤスコの第一発見者で過去に彼女を知っていたのだが、現在ではそれ以上でも以下でもない関係だ。

04_3

05_2

という訳で重要人物は3人、社長弓永と元寿司屋の天童、そして性同一性障害の横山である。もちろん普通に観ている段階ではこれは解らない。最後まで観た結果こうだったという話だ。特に天童とヤスコの関係は何故かこの物語では中核をなすぐらい厚めに描かれているのだが、それはヤスコの持つ心の闇を理解してあげられる人間だったからかもしれない。天童は万引き癖があり、ヤスコは彼のそんな癖を治してあげる。7人の内、生物学的に男である6人全員と彼女が寝たのかはわからない。しかしそういう意味での関係以外で、彼女が男に何かをしてあげるパターンなのは天童だけだった。ただ、だからと言ってこの2人が特別な恋愛関係にあるかというとそうではないところがまた風変わりで面白い。

06_2

07_2

徐々に明かされるヤスコの心の闇、それは彼女の両親の死に関することで、同時に彼女自身に降りかかった今回の窒息事件に密接にリンクしてくる。結論から言うとヤスコは死亡してしまうのだが、本作はヤスコ殺人事件の犯人探しをするミステリードラマではない。何故ヤスコが死なねばならなかったのかそこに着目したヒューマンドラマである。7人の口から語られるヤスコの言動、彼女の苦しみ、彼女の哀しみは私には理解や共感はできないが、世の中にはここまで孤独な人間がいるのかとしみじみと考えさせられてしまった。で、気がつく。なるほど、私を含め観ている人間までも「センチメンタルヤスコ」になっているではないかと。上手い。

個人的おススメ度3.5
今日の一言:地味だけど役者がいいなぁ…
総合評価:71点

作品情報
キャスト:岡本あずさ、池田成志、滝藤賢一、和田正人、高木万平、我妻三輪子、坂田聡、仁科貴、宮川一朗太、蜷川みほ、内田慈、森山栄治、北代高士、山崎一
監督:堀江慶
企画:吉田正大
製作:吉田正大
プロデューサー:平山英昭、中林千賀子、五十嵐理
原作:堀江慶
脚本:堀江慶
撮影:ふじもと光明
照明:松本憲人
編集:鈴木真一
美術:飯原広行、岩本一成
衣裳:馬場恭子
音楽:三枝伸太郎
主題歌:May J.
製作国:2012年日本映画
配給:る・ひまわり
上映時間:87分

にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへ
↑いつも応援して頂き感謝です!
今後ともポチッとご協力頂けると嬉しいです♪

|

« モンスターズクラブ | トップページ | ロボット/Endhiran »

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: センチメンタルヤスコ:

» センチメンタルヤスコ(2012-041) [単館系]
キャバクラで働くヤスコ(岡本あずさ)は 何者かにひものようなもので首を絞められ、 意識不明の重体で病院に搬送される。 現場の状況から殺人未遂事件だと判断した警察は、 ヤスコの携帯電話から関係者と...... [続きを読む]

受信: 2012年4月27日 (金) 22時07分

» 『センチメンタル・ヤスコ』をユーロスペース1で観て、ちょっと拾った感ありありふじき★★★ [ふじき78の死屍累々映画日記]
五つ星評価で【★★★話は終わっても納得感が充分じゃなかったのが惜しい】 舞台っぽい。 なるほど、舞台の映画化らしい。 ありえないような設定ながら、それぞれ役者が上手い ... [続きを読む]

受信: 2012年5月22日 (火) 00時08分

« モンスターズクラブ | トップページ | ロボット/Endhiran »