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2012年5月 3日 (木)

孤島の王/Kongen av Bastøy

Photo_3 1900年から1970年までノルウェーのバストイ島にあった少年矯正施設で実際に起こった暴動を映画化したサスペンスドラマだ。絶対に脱走不可能な孤島で理不尽な虐待を受ける子供たちの姿を描く。出演は『ドラゴン・タトゥーの女』のステラン・スカルスガルド、クリストッフェル・ヨーネル、ベンヤミン・ヘールスター、トロン・ニルセン他。監督はマリウス・ホルスト。
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またムチャな島があったもので…

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孤島に監獄がある物語は数多くあるが、本作はノルウェーのバストイ島にあった少年矯正施設で実際に起こった暴動を描いたサスペンスドラマだ。時は1915年。11歳から18歳の非行少年はキリスト教精神に基づき矯正されるべくこの島に送られてくる。そこにエーリング(ベンヤミン・ヘールスター)とアイヴァー(マグナス・ラングリーテ)が到着するところから物語は始まる。ただこの時点で船から見る風景はキラキラと輝く青い海で、何かしら変な希望すら感じさせてくれた。もっともそれこそが自由の象徴だったのかもしれない。じきに冬が来て雪に閉ざされると、北欧でイメージされる寂寥として陰鬱とした風景に支配されるようになってくる。まるで少年たちの心象風景を表しているようだ。

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反抗的なエーリングと、やや体の弱いアイヴァー、彼らには指導係として卒院間近なオーラヴ(トロン・ニルセン)が付くことになる。序盤ではこの施設が一体どんなところなのかが描かれるのだが、実は正直言うと「そんなにキツイ?」と思ってしまった。実話とフィクションを比べても仕方ないが、例えば『パピヨン』の舞台となった島などは遥に過酷だったし、だからこそ自由を渇望する主人公の姿に説得力があった。しかしこの施設では院長(ステラン・スカルスガルド)は厳しいけれど理不尽なことまでは言っていない(最初は)。エーリングはサクッと脱走を決めてみせるのだが、そこにあるのは少年らしい反抗心だけで、むしろこの時点では私は彼に同情できる要素はなかった。

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あっという間に捕まり再び施設に戻ってくるエーリング。この辺から物語の展開が変わってくる。実はエーリングが脱走する少し前、アイヴァー(クリストッフェル・ヨーネル)が寮長のブローテンに洗濯室の作業担当を命じられるシーンが映し出される。もう直感的に性的虐待だと予想がつくが、果たしてそれは当たっていた。結局思い悩んだ末にアイヴァーは自らの命を断ってしまう。これによってエーリングだけでなく、オーラヴの反抗心にまで火がついてしまうというのがミソだ。実はこの時点では院長の人格は清廉に描かれているため、ブローテンの悪行を院長の耳に入れさえすれば何とかなると彼らも我々も信じている。しかしすんなりそうはならないのが大人の世界の汚さだ。

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なんと院長はエーリングの死の理由を仲間からの虐めが原因だとし、真実をもみ消そうとするのだった。アイヴァーの死の真相、その秘密を共有することでエーリングとオーラヴの仲は急接近する。同時に我々観ている側と彼らとの距離感もグッと近付くことに。この辺になると、友の死の原因すら都合よく誤魔化される理不尽さに彼らの我慢も限界が近付いていることがヒシヒシと伝わってくる。ただ世の中は理不尽な事だらけで、その理不尽を諦めて受け入れることが大人への一歩でもある。これは一面の真実だ。オーラヴもそれは十分に理解できていたはずだが、そうは出来なかった…。彼は卒院のその日にブローテンに殴りかかり、加勢したエーリングたちもとらわれ懲罰房に入れられることになる。

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オーラヴの気持ちを青臭いということは簡単だが、人間誰しも譲れない一線はあるもので、それは己のアイデンティティに関わってくることだ。最初に「そんなにキツイ?」と書いたが、この時の懲罰房はこれはムチャすぎ。暖房設備も無くオリの中に監禁状態。放っておいたら間違いなく死ぬだろう。が、そんな彼らに同情した人物の手によりオリを抜け出した彼らは、様子を観に来たブローテンを襲い、彼に復讐しようとするのだった。そしてそれは暴動に発展する。いつの間にかすっかり少年たちの側に立っている我々は当然ながらそれにカタルシスを感じてしまう。が、我々は大人である。復讐を大義名分にしていてもブローテンを殺せばそれはただの殺人に他ならないことを知っている。

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エーリングが殺されかけたブローテンを救ったのは意外だった。彼のブローテンを見る目は明らかに蔑む目線であり、それは「お前など殺すに値しないのだ」と言っているかのようだ。そう、まるで王が下僕を見るかのようだった。そこには怒りに任せて噛み付いていた狂犬のような少年は既にいない。しかし王の在位期間は短かった…。暴動を鎮圧するためにやって来た軍に追われて次々と捕まる少年たち。エーリングとオーラヴだけはからくも逃げ切り、凍った海面を陸に向けて歩き続ける。だが、氷の薄い部分が割れてエーリングだけが落ちてしまう。自ら手を離しオーラヴに「行け」と言い残し沈むエーリング。最後の最後でオーラヴを襲った理不尽極まりない親友の死は彼をどう変えたのだろうか。

個人的おススメ度3.5
今日の一言:船上の院長は何を思ったのかな…
総合評価:75点

作品情報
キャスト:ステラン・スカルスガルド、クリストッフェル・ヨーネル、ベンヤミン・ヘールスター、トロン・ニルセン
監督:マリウス・ホルスト
音楽:ヨーハン・ソーデルクビスト
原題:Kongen av Bastoy
製作国:2010年ノルウェー・フランス・スウェーデン・ポーランド合作映画
配給:アルシネテラン
上映時間:117分
映倫区分:PG12

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『Dr.コトー収容所』という題も考えました・・・ 某まだ~むさんから時々お話を聞 [続きを読む]

受信: 2012年7月23日 (月) 11時17分

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