幸せの教室／Larry Crowne

名優トム・ハンクスが製作・監督・主演・脚本を務めるヒューマンドラマだ。大学を出ていないことを理由にリストラされた主人公が、遅まきながら通い始めた大学で運命を変えてくれる女性と出会う。しかしその女性は彼が選択した講義の教授だった…。女性教授に扮するのはジュリア・ロバーツ。共演にジョージ・タケイ、ブライアン・クランストン、タラジ・Ｐ・ヘンソンらが出演している。
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（男＋女）×スクーター＝ＬＯＶＥ

　あらすじ　

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何となく良い話だけれど、終わってみれば別に他愛もない話だった。別につまらないとは思わないのだが、トム・ハンクスとジュリア・ロバーツという大物の共演と考えるとちと食い足りない。主人公ラリー・クラウン（トム・ハンクス）は大卒じゃないという理由で勤めていたＵマートをクビになり、再就職しようにも昨今の不況では仕事も無く、それならと通い始めた短期大学で出会った女性教授が彼の運命を変えるというお話。ただこれが劇的に運命を変えたのかといえば別にそんなことはない。むしろ運命を変えたというよりも、離婚してフリーだったラリーと、旦那と不仲に陥った女性教授メルセデス（ジュリア・ロバーツ）が恋人同士になって良かったねというラブコメディに近い。

考えるに『幸せの教室』なんて邦題にミスリードされてしまったかもしれない。幸せになる、或いはなりたいということは元が不幸なワケで、確かに離婚して住宅ローンを抱え、仕事までクビになったラリーは不幸と言えば不幸。しかし描かれているラリーからは全く悲壮感が感じられない。むしろ遅まきながら通い始めた大学で学ぶ楽しみを見出し、若い友人たちとの新鮮な経験に刺激をうける姿はかなり充実しているようだ。要は人生山あり谷ありで谷の部分が不幸なのだが、本作は浅い谷底から始まって、あとは上がって行くのみなのだ。だから物語に高低差が生まれず平板に感じた。ただまあそれでもラリーが充実している姿を観ているのは悪い気はしないのがこの作品のポイントだろう。

彼の人生が緩やかなれども右肩上がりなのは歓迎することだが、せめて彼が関わるエピソードのそれぞれでの人間描写に深みを持たせることで、もう少しストーリーに抑揚を付けることは出来たのではないか。Ｕマートをクビになった、でもすんなりそれを受け入れてしまうのは不思議だし、せっかく登場した学校の友人たち、特にタリア（ググ・バサ＝ロー）はラリーとメルセデスの心持ちを変えるキッカケにしかなっていない。たった１０人しかいないクラスメイトに到っては殆ど授業シーンしか登場しないのが勿体無いと思う。ラスト付近では彼らとの友情が深まっているのが見てとれるのだが、僅か数回の場面ではちょっと苦しい。その割りには経済学の教授マツタニは大活躍だったが（笑）

流石にラリーとメルセデスに関しては他よりも時間を割いて距離が近付いて行く様を描いてはいるけれど、それでも客観的には足りないと思う。ただ、２人が急接近するのはメルセデスが夫と大喧嘩し一人ベンチに座っているところに、ラリーやタリアたちがスクーターで通りかかったところからだ。彼はメルセデスを“スクーター”で家まで送る。『ローマの休日』のグレゴリー・ペックとオードリー・ヘプバーン、『イエスマン　“YES”は人生のパスワード』のジム・キャリーとゾーイ・デシャネル、『世界の中心で、愛をさけぶ』の森山未來と長澤まさみ……。恋する運命の男女がスクーターで２人乗りをしたら、それはもうそれだけで全てを超越する。密着する体は心の距離感も縮めるのか？

正直言って個人的にはジュリア・ロバーツをそれほど好きではないのだが、このバイクシーンの彼女はとてもキュートだった。スピーチの授業の修了試験で見事にクラスメイトやメルセデスを引きこむ話を聞かせるラリー。彼女の顔からは既に序盤に観られたような険しさはない。返す返すも惜しいと思ったのは、もう少し深く描いてくれていたらここがもっと感動的だったのにということだ。クラスメイトとの薄い関わり合いでは「うん、良い話だねぇ」位にしか思えない。同様に、最後の最後でラリーとメルセデスが結ばれるシーンも、「うん、良かったねぇ」になってしまう。それが自然だという意見もあるだろうが、最初に書いたようにこのビッグ２の共演だと考えるとやはり後一歩足りないのだ。

個人的おススメ度3.0
今日の一言：ポイントポイントでは結構笑ったよ♪
総合評価：60点

作品情報
キャスト：トム・ハンクス、ジュリア・ロバーツ、ブライアン・クランストン、セドリック・ジ・エンターテイナー、タラジ・P・ヘンソン、ググ・バサ＝ロー、ウィルマー・バルデラマ、パム・グリア
監督：トム・ハンクス
製作：トム・ハンクス、ゲイリー・ゴーツマン
製作総指揮：フィリップ・ルースロ、スティーブ・シェアシアン、ジェブ・ブロディ、ファブリス・ジャンフェルミ、デビッド・コートスワース
脚本：トム・ハンクス、ニア・バルダロス
美術：ビクター・ケンプスター
編集：アラン・コディ
音楽：ジェームズ・ニュートン・ハワード
原題：Larry Crowne
製作国：2011年アメリカ映画
配給：ディズニー
上映時間：99分
映倫区分：G

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